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【完結】映画のようなワンシーンを。/美形(ヤンデレ系執着)×平凡(クズ系浮気性)  作者: ハタセ


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6/11

#2

 映画はよくある恋愛小説系の泣ける映画らしい。

 多分どっちかが死ぬのだろうことだけは分かったけど、未だにそういう映画が流行ってるのかとも思った。女子は好きなんだろうけど。でも出ているのが昔付き合っていた相手だし、寝ずに見る事はできるかもしれない。

 興味と言うか、秋良が今どういう世界に居るのかを見てみたかった。

 広い世界に飛び立った秋良がいる世界だ。応援しようかなって気持ちがその時の俺には少しだけあったのかもしれない。

 でも、見て後悔した。見なきゃ良かったと思ってしまった。

 だって…あんなの…俺だけにしか伝わらない事を秋良はその映画の中でやっていたのだから。


『好きだよ…今でもずっと…ずっと気持ちは変わらなかった』

『嘘つき。私の事なんて忘れてたくせに…!私が死ぬことを知って今更出てきて、どうなるって言うのよ…もう帰ってよ!顔も見たくない!』

『ごめん。本当に。あの時俺は…いや、もう言い訳はしない。だから、これだけは信じて欲しい。俺は…今でも君を愛してる。ずっとずっと、君だけを見てた。見てきたのは俺なんだ。他の誰にも渡したくない。どれだけ嫌われても構わない。もう俺を好きになってくれなくてもいい。でも、俺は…俺には、君だけなんだっ…』


 そう言って画面に映し出されている男は彼女の手を取って車椅子から引き上げて抱きしめた。

 抱きすくめられた彼女は動かせる上半身だけで抵抗をしていたけど、その内彼の腕の強さによって絆されて肩に顔を埋めて泣いていた。

 ずるずると床へと座り込む二人の顔がアップになり、そしてお互いに顔を近づけてキスをした。


 と、ここまでは良かったんだここまでは。

 俺だって相手が秋良だとすっかり忘れてそのシーンにのめり込んでいた。

 なのに…。

 そのキスシーンで我に返らざる負えなくなった。


 何度も何度も相手の耳元で愛を囁き、そして最初は右頬にキスを落としそして左頬をその手で撫でる癖。

 添えた手を首元に持っていき相手の顎を持ち上げて角度を付けさせるそのやり方。

 目を閉じた相手に触れるだけのキスをして、それからゆっくりと舌を侵入させて咥内を蹂躙する。

 唇を離しては息を一つ吐いてまた口付ける。最後に喉へとキスをしてまた二人は抱き締め合った。

 大画面越しに繰り広げられたそのキスの仕方を、俺は嫌と言うほど知っていた。


(嘘だろおい…)


 自分の頬が引き攣るのを感じる。

 あれは、秋良がよくするキスのやり方だ。何度となく俺もあのキスを秋良と交わしてきた。


 まるで秋良に画面越しから「思い出せ」と言われているようだった。

 癖…癖だったらそうであって欲しい。ただの癖なら。

 でも、きっとそうじゃない。

 台本だってあるはずなのに、俺が知っているやり方で秋良はその女優へとキスをしたのだ。


 一度秋良に聞いた事があった。


「なんで最後に喉にチューすんの?」

「ん?なんでって…えっと、喉にするキスに意味を持たせたいから…かな?」

「意味って?何かあんの?」

「今度調べて。俺から言うの恥ずいし」

「や、絶対忘れるわ。調べる事を忘れるわ」

「ハハッ大和らしい。でももし調べてその意味が分かったら覚えててほしい。俺は大和にしかしない。喉にキスするのは大和にだけだよ」


 その後、奇跡的に忘れずに覚えていたので片手間に喉へのキスを調べてみて俺は撃沈した。

 喉へのキスの意味は「自分のものにしたい」「離したくない」と相手を強く望んでいるとの意味が含まれていると書いてあった。


 それをここで思い出して気が狂うかと思った。

 今すぐこの映画館から出ていきたい衝動に駆られる。隣を見ると一緒に見に来た子は号泣しているし、周りを見てもすすり泣く声が聞こえてくる。

 違う意味で泣きたいのはこっちだった。

 もしかしたら、今でも秋良は…と過ったけれど頭を振ってその思いを搔き消した。

 画面越しに「好きだよ」と言う声が聞こえてくる度に、昔に秋良から与えられてきた快楽が引きずり出されるような気持ちだった。

 その声で、そのセリフを言うな。

 まるで俺に言ってるかのように聞こえてくる。何度も何度も聞かされてその度に身体を繋げてきたんだ。

 気持ちいい思い出を蘇らせてくるんじゃねーよ。

 秋良との身体の相性は今でも誰一人として超えない。誰としても秋良の方が気持ち良かったなと比べてしまう。

 恋愛的な意味で好きだと思った事はないのに、恋愛抜きにしてみたら秋良の存在は誰より俺の中で大きくて、他には越えられない壁として存在している。


 そんな奴に、俺にしかしないキスを、今目の前で見せ付けられている。


 いやいやいやいや、逆に考えろ俺。

 もう秋良は完全に吹っ切れたと言う事なんじゃないのか?このキスの仕方をするのは俺にだけと言っていたけれど、ちゃんと吹っ切れたから今別の人にやってるんじゃないか?

 それこそ大勢の人に見られてもいいくらいには俺の事を過去にしたと言う事なんじゃないのか?

 それなら、秋良は広い世界に出てちゃんと自分の正しい恋愛観を見つけたのかもしれない。そうなら納得出来る。

 今、目の前で起きているこのラブシーンも頷けると言うものだ。安心と、少しの寂しさを伴ってそして映画は終わった。

 まぁこんな良い男を振りまくった俺が寂しがるのはお門違いだろうとは思うけど。


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