#2
「秋良、やめろ。離せ。あと俺の質問に答えろ」
「嫌だ。離さない。質問?ああ、どうして俺がここにいるかって事か?金が入れば色々と出来る事って多くなるからな。学生の頃みたいに俺一人だけで大和を監視する事は出来ないからさ。大和の事はずっと報告してもらってたよ」
いま、何て言った?
は?
つまりあれか?
俺の居場所や諸々は4年間もの間、逐一大和に誰かが報告していたって事になる。
「は?何だよそれ…そんなストーカー染みた事してたのかよ!つーか何?今さっき外見ですぐ気付いたとか嘘じゃん。報告受けてたなら俺の外見だって最初から知ってたんだろうが。お前の言う好きだのなんだのなんて信じられるわけが…」
「外見の事なんて報告受けてねーよ。俺が知りたかったのは大和の交友関係。誰と付き合ったとか、誰と寝たとか、そういうの」
「は?なんで?」
「好きだからってだけじゃ理由にならない?知りたいじゃん?好きな相手の好きな奴のこと。そしたら俺はどんな相手だって演じてやるつもりだった。俺じゃダメなら大和が好きな相手を演じれば好きになってもらえるんじゃないかって思って」
何言ってんのコイツ。
役者になったのはそういう事なのか?
俺を落とすためだけに演技を覚えたのか?
そんなのファンにとったら酷い裏切り行為だろう。
広い世界に出て一体何を学んできてんだよ。
「…そんなの信じられるわけがっ…って、いや、もういーやそんな事どうでも。…なぁ、離せよ、俺らもうとっくに別れたじゃん。秋良と俺はもう何の繋がりもねーんだし。ほらお前有名人なんだからバレる前にさっさと離せ。いくらグラサンとマスクしてたとしてもバレる時は…」
「なぁ大和?俺さっき金で色々してるって言ったばっかじゃん。この状態で俺が何も手を打ってないとでも思った?」
「…は?」
「呼んでんだよ匿名で、週刊誌の記者。今日ここに結城 秋良が恋人と密会するって事を伝えてある。つまり今まさにどっかで撮られてる真っ最中だって事。スクープだよなこれ?だって男同士だもんな?この写真が発表されたらすげー売れるんだろうな」
「なっ…何してんだよ!んな事したらお前が芸能活動できなくなるぞ!」
「俺がねぇ?…ほら、やっぱり大和は優しい。自分の心配しないんだもんな。それが本音だろ?結局俺の事考えてくれてる」
秋良はそう言いながら俺の肩に顔を埋めてまた一段と距離を近付けてきた。
恍惚としたような声で「本当、そういうとこが好きだよ」と呟きながら。
「俺がどうなろうが俺はどうだっていいんだよ。たとえ今回の件で芸能活動が終わったとしても。大和以外誰も俺の事なんて見てくれなかった。外見だけ好きになられてそれだけだった。最初に俺と大和が会った時のこと覚えてるか?お前の第一声さ”うわっイケメンだ”って、露骨に嫌な顔してさ。褒められてんのか貶されてんのか分かんなくて、それから大和に興味持ったんだよ。で、一緒に居ればいる程、大和が俺から距離取ろうとするから楽しくなった。まぁ大和以外にも俺の顔見て嫌な顔する奴はいるけど、そいつらって俺に彼女取られただとか好きな人が俺の事好きだったとかそんなんばっかで、結局逆恨みされてるだけだった。でも大和はそうじゃない。知れば知る程、大和の不器用な優しい所に気付いていったんだ。ずっとお前の傍にいたくなった。離したくなくなった。別れたくなんてなかった。」
「そんなの俺がイケメンに興味ねーだけの話だろ。俺以外にだってごろごろ居るぞそんな奴」
ただのタイミングの問題だ
今まで散々モテてきた奴が、突然目の前に自分のことに興味を持たない相手が出てきてちょっと気になっただけの話だ。
その相手がたまたま俺だっただけのこと。
こんなに執着されるようなことを俺は秋良にした覚えはない。
ヒヨコの刷り込みのように、たまたま初めて出会った現象を親だと、それが恋だと思い込んでしまったような状態だろう。
遅かれ早かれ、秋良にだって俺以外の奴で同じような状況になる事もあったかもしれないのに。
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