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【完結】映画のようなワンシーンを。/美形(ヤンデレ系執着)×平凡(クズ系浮気性)  作者: ハタセ


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11/11

#3

「お前はそう言うけどさ、少なくとも俺の周りにはいなかった。大和だけだった。モデルになっても俳優になっても大和だけだった。じゃあもうそういう事じゃねーかって思ったよ。結局どこに行っても俺には大和しかいないんだって」


「広い世界に出ても同じだった。4年間待ったんだ。でも誰も大和のような奴はいなかった。だから今日会いに来た。4年なら充分だろ?俺はこれ以上大和以外の奴を待つつもりはない。そんな時間があるのなら、これからの時間を全部大和と過ごすことに使いたい」


「…大和?別れる時言ったよな?”もし大和以上に好きな相手を見つけられなかったその時は、ちゃんと責任取ってもらう”って。それでお前言ったよな?その時は責任取るって。忘れたなんて言わせねぇ…映画見たよな?さっきの番組見たよな?それで気付いたんだよな?俺が出した答えに。だから…大和、約束通り迎えに来たよ?もう逃がさないし、お前の残酷な優しさで俺を遠ざける事もさせない。大和は俺の所に帰ってくるしかないよ。だって俺がそう仕向けたんだから」


「なっ…そんなこと…従えるわけが」


 これは紛れもなく狂気だ。

 秋良は4年間でとんでもないバケモノに育ってしまったのかもしれない。俺だけを想うだけのバケモノに。

 全部、そう、全部これは俺がやってきた事への代償だ。

 俺だって秋良以外の奴を好きになる期間を与えられていたようなものだったのに。

 これで俺に、今本気で好きな相手がいるのであれば秋良だって諦めたかもしれない。俺の幸せを願ったかもしれない。

 でも現実の俺は、今でも4年前と変わらず誰も好きになれていないのだ。


 こんなの、秋良が見逃すはずがなかった。


「お願い、大和…頷いて。じゃないと今この状態の写真を来週にはバラまかれるよ?今ここで頷いてくれたら雇った記者に金渡して握り潰す。俺はさ、どっちだっていいんだ。大和が俺の所に戻ってきてくれるなら破滅の道に進もうが、今の敷かれたレールを進もうが、傍にお前が居てくれるのならもうどっちに進んだって構わない。これだけ心臓が痛くなるくらい好きな相手を見つける事なんてもう無理だ。お前しか居ねーんだもん。一生会えるわけがねーんだよ。だってその相手が大和なんだから。絶対に離すもんか。手放すもんか。この四肢を捥がれたって首に歯を立てて縋りついてやる。離れてなんかやんねーよ。俺はどれだけ惨めでも嘲笑われてもいい、大和が絡むなら汚い事でも何でもする覚悟なんだよ。何があっても俺は大和だけしか愛せない。愛さない。だからもう諦めて、…大和、お願いだからいい加減に…ちゃんと俺を見て」


 泣いていた。俺の心臓の上を一度その手でドンと叩いてから秋良は ”俺を愛してほしい” と泣いていた。


 なんだよそれ

 なんでそこまでするんだよ

 俺なんかに。


 どうしてくれるんだ?

 だって俺はかわいい子が好きで、イケメンには興味が無くて、下半身も脳みそもゆるゆるで、顔は平均で、身長も特に高いわけでもなくて…。

 こんなどこにでも転がっている石ころを、コイツは両手で大事に抱え込んでコレが欲しい欲しいと泣いている。誰にも渡したくないのだと叫んでいる。

 そんなに声を荒らげなくても誰も欲しがらねーよこんなもの。

 お前だけだよこんなの欲しがってるやつ。

 放っといても誰も手に取らねーよ。

 それでも必死に奪われまいと、その身に石ころを隠してしまうのだろう。


 人の価値観なんてその人だけのものだ。

 俺には自分の価値なんて計りようもない。

 人に査定されてやっと価値を見いだして貰えるものだから。

 そして俺の人生の中で最高値で買いたいと名乗り出たのが秋良だったのだろう。

 人生を投げ出してもいいとすら言うのだから。


 今後一生こんなにも俺なんかを求めてくる人間が他に現れるのだろうか?こんなにも欲しがられる事なんかあるのだろうか?


 あったとしたらそれはもうきっと…。


「…お前だけだよ、秋良」


 そう静かに答えを出した俺に、秋良は押し殺していた声を上げた。


 骨が痛むくらい抱き締められながら目の前に映る画面を見た。

 もう店は閉まったようで、さっきまでカラフルだった画面は今は黒だけを映している。

 でもそこに映るのは紛れもなく今人気絶頂中の俳優だった。

 さっきまで画面の中にいた俳優だった。

 まるで公開された映画のワンシーンを再現するかのようなキスを、その画面が映し出していた。


 映画と違うのは相手役。

 キャストが男に変わって、見た目もかなり悪くなっている。

 こんな映画売れるかよ。

 それなのに、俳優は演技よりももっと深い口付けをして、貪欲に相手を求めているように見えた。


 映画のように綺麗なもんじゃない。

 泣いてる姿はぐしゃぐしゃだし嗚咽さえ漏れている。

 呼吸をする度に言わないと死ぬのか?と思うくらい好きだ好きだと掠れた声が伝えてくる。

 映画の場合、相手は死んでしまったけれど、俺は死ねない。

 だってコイツは付いてきてしまうから。

 どこまでも、どこまでも、きっと追いかけて付いてきてしまうから。


 人の愛し方が分からない俺と、俺しか愛せないお前はもう一緒に居るしかないんでしょ?

 それがお前の出した答えだと言うんだろう?

 はいはい、分かりました。降参だよ。降参。


 じゃあ、もう愛してやろうじゃねーの。


 お前が生きるためにそんなに俺が必要だって言うのなら。


 END


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