表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
36/38

35.堕天の蛇

■裁きを…■


 1:6F(エットペール)がクータスタに手を伸ばしていく。その時、


「あ、またなんかやってる」


『闇影の星』で『穿』が指を鳴らした。すると1:6F(エットペール)は動きをピタッと止め、力尽きたようにクータスタの身体に戻っていった。


■おのれ…せ…『穿』め……■


「…え? なんで…?」


 そこにいた三人はとりあえず安堵し、ザルトニアは鎌を光にして仕舞った。


「何が起きた?」


 もちろん全員、『穿』がしたことについては分からない。少し心配しながらもザルトニアが玄関に向かうと、彼女は何か違和感を感じた。そして彼女が振り返ると、クータスタの前に、彼を見下す紺色のコートの女性がいた。ルベリウスが城望の丘で会った女性だ。


「………」


 彼女はただクータスタを凝視している。危ないと判断したザルトニアは鎌を取り出し、その女性に迫る。しかしザルトニアは動きを止めた。


「(ダメだ! オーラからして彼女は強すぎる!)」


 その女性は右耳に人差し指と中指を当て、イヤホンの通信を聞いているようだった。すると、彼女が早口かつ小声で言った。


「…どうやら来る場所を間違えたようだ。失礼する」


 彼女は音も無く一瞬で消え去った。ザルトニアとクータスタは恐怖で身体から視線まで固まっていた。リズは怖くて棚の裏に隠れていた。


「(ルベリウスさんから「彼女がいるところでは声も音も出すな」と言われておいて正解でした…)」


 しばらくして三人は脱力し、クータスタは1:6F(エットペール)の状態を確認した。


「大分力が弱まってる…? これくらいなら僕の力だけで制御できます」


「じゃ、もう行って大丈夫かな。第三者が入ってこられないように、光の帳を張っておくから安心して」


 ザルトニアはそう言うと辺りを警戒しながら去っていった。


「(あの女、本当に場所を間違えたのか? あの圧、あの冷酷さ…絶対に場所を間違えるような人じゃない。その上、あの耳を押さえる仕草は…仲間との魔力通信か)」


 そう思いながら彼女は『闇影の星』の戦場に到着した。


「や、やめろぉ! 近づくなぁ!!」


 怯える兵士の前に立っていたのは、肌、長髪、服、全てが白い少女、ルナソノーレ・レッドクロウだった。そこにザルトニアが駆け寄り、間に入った。


「ちょ、『調停者』か…? た、助けてくれ! 今こいつに殺されそうに…!」


 ザルトニアはルナソノーレの無表情の顔を見つめ、こう言った。


「君、『調停者』だよね?」


「そうだよ。でも、これは『調停者』としてじゃなくえあたし個人の行為。この人がお兄ちゃんの悪口言ってたから…」


 その時、赤黒い大剣を肩に乗せた赤髪の男性がやって来た。


「おー? なんか賑やかだな」


───ザルトニアが去った少し後、彼女の家前にて。


「…(クータスタ)を庇う為に貴様は嘘を吐いている。違うか?」


「違う。1:6F(エットペール)は彼の中にいない」


「…貴様もか」


「待て!」


「黙れ」


 氷のような女性は通信を切り、光の帳を無視してザルトニアの家に入っていった。


「…ぇ」


 二階にいたリズはその静かな訪問に気付かなかったが、クータスタは女性の顔を見て固まることしかできなかった。


「…1:6F(エットペール)、死ね」


 女性がコートを翻し、氷の刃でクータスタに斬り掛かる。その時、


「…【雪隠れ桜】」


 白い桜吹雪が女性を覆い、彼女を消した。やがて桜吹雪も、何事もなかったかのように消え去った。


「…ぇえ??」


───桜吹雪の先、盈月の下の華の川にて。白い長髪に簪を刺した、白い和服に白い太刀を携えた女性がいた。


「汝、『堕天の蛇』の主、()()()()()()()()()()と申すか」


「…貴様も名乗れ」


 そのレイデロアと呼ばれた女性は氷の刃を構築し、両手に持った。


「妾は雪途(ゆきみち) 夜咲(よざき)。人呼んで、釁り雪。好きに呼ぶが良い」


「雪途…『残旧』の『五家』か。私をここに呼んだのは、何が目的だ」


 夜咲は目を閉じ、静かに刀を少し抜いた。


「…無論、躊躇わぬ殺しと弔わぬ冷酷さを裁く為よ。然れど、司令も汝一人に五家等言う貴き者共を遣わすとは。中々の強者と見える」


「成る程、私を殺すのか…殺れるのなら殺ってみろ」


「後からの逃避は出来ぬぞ」


 彼女は表情一つ変えず、ただ刀を握ったまま佇んでいる。


「構わない」


「…であらば、斬り伏せるまで」


 夜咲は刀を抜き、レイデロアに複数の剣圧を放った。彼女は腕を組んだまま身を捻り、全ての剣圧を華麗に躱した。


「私を殺すのなら、本気を出せ」


「何、只の調べだ」


 次に攻めたのはレイデロア。細かい氷の結晶を夜咲の四方から飛ばし、包囲網を築いた。


「ほう? 妾を甘く見ているのか?」


 夜咲は刀を鞘に納めたまま、足を一つ踏み込んだ衝撃で全ての氷の結晶を砕いた。


「見たところ、貴様も氷を司るのだろう。ならば、これはどうだ?」


 レイデロアの声は遠くなり、徐々に離れていく。


「妾の前にて小細工など無用」


 夜咲はゆっくりと振り返り、鞘を構えた。


「チッ」


 すると夜咲に向かっていたレイデロアは鞘を蹴った。


「汝の為す事は粗方悟った。次こそ、本気の剣戟を始めようぞ」


「…上等だ」

レイデロア・リダイスについて

 堕天の蛇のリーダーにして、或る存在とそれらを知った者を殺す使命を背負う女性。氷を扱う。


雪途 夜咲について

 五家の一。刀と氷を扱い、故郷では釁り雪と呼ばれていた。


堕天の蛇…レイデロアがリーダーを務める組織。


残旧…万■の■■原■(■■ル■-ゼ■)の住民の総称。圧倒的な実力を誇る。


五家…残旧の内の或る五つの家。■、■、神■■、■■針、雪途が当てはまる。万■の■■原■(■■ル■-ゼ■)の最高戦力達と呼べる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ