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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
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34.昔日の無彩は今も尚(後編)

「レジェルデは、君の前世だよ。彼はある『変数』(徘徊者)に取り憑かれ、その瞬間に殺された。あの禍々しいペストマスクが、徘徊者(セ゚イサー)の証」


「僕の…前世…」


 アズディリアは空気を読み、笑顔でそっと立ち去った。


「(元々あの子(ザルトニア)は人助けするような性格じゃないけど、レジェルデ君は例外になるほど仲が良かったのね♪…あ、ココが泣いてる! 綾さないと…)」


 ザルトニアはアズディリアが二階に行ったのを確認してから椋を連れ、自分の部屋に入れた。


「これが二年前の写真。左にいるのが私で、右がレジェルデ。ほら、君に似てるでしょ」


「ほんとだ…」


 するとザルトニアは分厚い辞書のような物を棚から取り出し、ページをパラパラとめくった。


「…あった。『輪廻』が定めた『命輪環』によると、生命は死ぬと身体は『死の世界』へ、魂は『生の世界』に残り、別の身体へ転生する。でも『変数』に取り憑かれて殺られた場合は別。身体も『生の世界』に残り、魂が身体に残ろうとする力と転生しようとする力が反発してそれに身体が巻き込まれ身体が複製、そしてそれに転生する。君がレジェルデに似てるのは、そう言うこと」


 ザルトニアはそこの一箇所だけを読んで本を棚に戻しても、あまりの情報量にクータスタはまだ目を回している。


「えっとつまり…『変数』に殺されると、前世の体のまま転生するってことですか…?」


「まあ簡単に言うとそう。ちなみに、人が死ぬ時、記憶のほとんどは魂の中に保存されて転生プロセスの時に削除される。でも身体に少し記憶が残ることもある。だから、身体を引き継いだ君は前世の記憶、レジェルデの名前を知ってた」


 あまりに博識なザルトニアにクータスタが訊く。


「あなたは、なんでそんなに博識なんですか? 見たところ、あなたはまだ僕と同じくらいの年齢のはずですけど…」


「はぁ…それが、α化だよ」


 α化。ザルトニアの身体能力も戦闘能力も叡智も、ほぼ全てはこれにより得ているらしい。


「今HELLIN(ヘリン)研究所が行ってるプロジェクトで、カプセルの媒体に具現化した記憶や知識、能力などを詰め込む。それを摂取することで、運に恵まれない子供でも、その辺の学者に匹敵する知識や多大な運動神経を得られる。ヒトへの副作用は未知数だから、試験段階の今は選び抜かれた屈強な希望者だけが行うことになってる。私は生まれた時から霊化の目が覚醒してて、一世紀に一度の逸材って言われてたから、α化を受けることになった」


 クータスタが『変数』やα化について大体理解できたところで、さっきの話題を持ってきた。


「どうして、僕に仕えたいんですか?」


「…レジェルデ、彼への未練が残ってるから。私は彼が友達って言ったけど、実際はもう少し距離が遠い、たまに会える人って感じだった。でも仲は本当に良かったんだ。彼は、君と同じような敬語で私に喋りかけた。それが、いきなりあんな姿(徘徊者)に…」


 クータスタはそれを聞き、ザルトニアの声のトーンが段々と低くなっていくのを感じた。明らかに落ち込んでいく彼女に、


「も、もういいです! 分かりました、分かりましたから!」


と言った。ザルトニアは少し黙り、ふっと微笑んだ。


「ありがとう」


───現在に至る。


「…と、言う訳なんだ」


「なるほど…いや、端折りすぎじゃないですか!? もっとこう…1:6F(エットペール)との絡みとか、椋って名乗ってた意味とか、『穿』との関係とかは…」


 リズがそう言うと、ザルトニアは懐中時計を取り出した。


「まあまあ…おっと、もう30分経ったね。クータスタ様、調子はどう?」


 クータスタは押さえていたティッシュを外し、目をパチパチと開いた。


「ん…あれ…? 見えてる…? 見え…てる! わーい!!」


 クータスタは久しぶりに見た色にとても喜んだ。


「それは良かった。でも、いくら何でも『変数』の力に打ち勝てる薬なんて、一体どれだけすごいものなんだろうね…」


 そう言うとザルトニアは薬に付属していた小さな紙を見た。


“両目にそれぞれ4〜5滴ずつ垂らし、目を閉じて30分ほど待つ”


「…うん、しっかり合ってるね」


 するとリズがそこに歩み寄り、紙の裏に何かが書いてあるのを見つけた。


「あれ? 何か書いてありますよ?」


「ん? あ、ほんとだ」


“すごくいたかった!”


 幼稚園児のような筆跡。もちろんクータスタは漢字の書き方を知っている為、これを書いた人ではない。


「…なにこれ」


 ここでの用を粗方済ませた後、ザルトニアは再び『調停』に向かうと言って家を出ようとした。その時、


■小僧…我に何をした?■


ザルトニアにもその声が聞こえた。クータスタは恐怖で言葉が発せず、震えながら俯いていた。


「まずいっ…!」


 ザルトニアは咄嗟に鎌を左手に持ち、光となってクータスタの元に戻った。彼からは白と黒のぼんやりとした煙のような影が空中に浮かんでいた。ザルトニアはすぐにそれを鎌で振り払おうとした。しかしそれは相変わらず宙に浮かんでいた。


■『色彩』の気配…【虹の叙事詩を綴る真眼(イーリス・オプス)】か? 何れにせよ、契りを破った裁きを受けよ■


「いやあぁぁぁ!!!」


───その頃、『闇影の星』の闇影管轄ビルの40階にて。


「…あ、またなんかやってる」


 『穿』は何かを感じ、指を鳴らした。

命輪環…『輪廻』が定めた輪廻転生のプロセス。生命は死ぬと身体と魂に分かれ、身体は『死の世界』に行き、魂は『生の世界』に残り、また別の身体へと転生を遂げる。『変数』に殺された場合を除いて。


α化…HELLIN研究所が行ったプロジェクト。カプセルに概念を込め、それを摂取すると能力を得られる。

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