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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
34/38

33.昔日の無彩は今も尚(前編)

 ザルトニアはリズに昔話をしていた。


「実はね…」


───世歴200年、『焔光の星』のとある森にて。


「はぁ、はぁ、もっと速く…逃げないと」


 月明かりが木々の間から差し込み、ある少年は何者かから逃げるように走っていた。


■………!■


「うわぁっ!?」


 少年はペストマスクを着けた『変数』に片足を掴まれた。もう走馬灯を見ることになるのかと思ったその時、目の前に小さい猫耳を生やした白髪の少女がいた。その少女は『変数』を睨みつけ、少年を引っ張った。


「ま、待ってください! 相手は『変数』です! 僕のことは見捨てて、早く逃げて!」


 すると少女は表情を変えることなく少年を逃がした。


「安心して。私は()α()()()()()()だから」


「…よく分からないけど、健闘を祈ります!」


■………■


───アズディリア・アブソリュートの家にて。


「あら? こんな時間に誰かしら?」


 アズディリアは玄関のドアを開けた。そこには雨に濡れたレインコートを着た黒髪の少年、椋がいた。


「…お宅の娘さんにお助け頂いた、黒門(くろかど) 椋です。本日は改めて感謝をお伝えしたく、伺いました」


「あら、そう。ザルトニアが人助け、ね…まあ入って、びしょ濡れになっちゃう」


 彼女は椋のレインコートを脱がせ、大きなタオルを被せた。


「それで…助けてもらったって、何があったの?」


「いじめっ子に追いかけられてあの森に行ってしまい、『徘徊者(セ゚イサー)』に追われ足を掴まれた時に、ザルトニアさんに逃がしてもらったんです」


 椋は常に俯き、何か落ち込んでいるようだった。なぜならば、彼はザルトニアの生死の行方を知らず、あの『変数』(徘徊者)に殺されてしまったかもしれないからだ。


「いや、あの子ならきっと大丈夫よ。α化の対象だし、常人とは比べものにならない戦闘能力を持ってるからね。霊化の目は未覚醒だけど、徘徊者(セ゚イサー)くらいなら十分に相手できるはずよ(あの子、勝手にあの森に立ち入ったの?!)」


───椋が逃げた少し後、徘徊者(セ゚イサー)の森にて。


「そろそろ、決着をつけないとね。レジェルデ」


■………?■


 徘徊者(セ゚イサー)は骨をボキボキと鳴らしながら首を90度傾け、血を散らした。


「…死者に耳なし、か」


■………■


 彼は大鋏を取り出し、ザルトニアの首を切ろうとする。


「シャキン!」


 しかし大鋏が切ったのはザルトニアの首ではなく空気だった。彼女は既に徘徊者(セ゚イサー)の背後に周り、ペストマスクを外そうとしていた。


■………!!■


「レジェルデ、目を覚ませ! 君は『患者』なんかじゃない! 『変数』の囁きなんか無視しろ!」


■!!!!!■


 そしてザルトニアは徘徊者(セ゚イサー)のペストマスクを外すことに成功した。するとマスクは大鋏と共に一瞬で霧散し、中にいた少年が姿を現した。その少年は倒れ、死亡したように見える。ザルトニアは一滴ほどの涙を落とし少し安堵した。その少年はレジェルデと呼ばれ、椋によく似ていた。


「もう二度と、こんなところ来ないでくれよ」


───アズディリアの家にて。


「母さん、帰ったよ」


「あら、ザルトニアが帰ってきたわ。椋君、ちょっと待っててちょうだい」


 アズディリアは小走りで玄関に向かい、雨で濡れたザルトニアの服を拭いた。


「あなた、勝手にあの森に行ったの!? どうして!?」


「母さん、そこに男の子がいるでしょ。彼が、私の友達に似てたから。友達は、徘徊者(セ゚イサー)から解放してあげた」


 決して表情を変えないザルトニアだが、内心はまだ悔いで埋まっていた。今にでも涙を流したい、そう思っていたのだ。


「あ、ザルトニアさん!」


 椋はザルトニアに歩み寄り、深々と頭を下げた。


「あの時はすみませんでした! 僕のせいであなたまで巻き込んでしまって…」


 ザルトニアはコートをポールハンガーに掛け、ドライヤーで髪と耳を乾かしながら言った。


「礼はいらない。私が自己満足の為にやっただけだから。でも…」


「いきなりで悪いけど、仕えさせてもらっていい?」


 本当にいきなりの言葉に椋は少し引いた。


「え…? 僕が仕えるんじゃなく? あなたが?」


「うん、そう…君、椋って言った?」


「あ、はい、黒門 椋って言います」


 ザルトニアはドライヤーを置き、首を傾げながら椋を睨んだ。


「それ、嘘でしょ? この星で、漢字の名前の人はいない。他の星から旅行か観光に来たとしても、異様にこの辺りに詳しいいじめっ子がついてきてることになる。君、本当の名前は?」


「あ…ぼ、僕は…」


 するとアズディリアがしゃがみ、椋の肩に手を置いた。笑顔で椋を見つめ、


「クータスタ君、でしょ?」


と言った。


「な、なんで知って…?」


「君、レジェルデって男の子、知らない?」


 クータスタがザルトニアの問を聞いた時、目を見開いた。その名前は記憶の奥底に捨てられていたのだ。


「聞いたことあります、誰だっけ…?」


 そしてザルトニアは目を閉じて息を整え、覚悟を決めて言った。


「それは、()()()()()()

ザルトニア・アブソリュートについて

 世歴200年頃からいた女性。その頃にはアズディリアという母がおり、椋の命の恩人となった。


徘徊者(セ゚イサー)について

 『焔光の星』のある森にて椋を襲った『変数』。不気味なペストマスクと血に染まった大鋏が特徴。


黒門 椋について

 いじめによりある森に迷い込み、徘徊者(セ゚イサー)に追われていた少年。


アズディリア・アブソリュートについて

 ザルトニアの母。優しくて人付き合いが良く、子のことを何より気にかけている。


『焔光の星』…『闇影の星』の過去の姿。『影喰い』により『闇影の星』に変貌した。


患者…『変数』に取り憑かれた人の総称。『変数』はどうも、人に取り憑くことが多い…

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