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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
33/39

32.弔わぬ処刑人

 ローグとムーは薬を手に入れ、暗の拠点に帰ってきた。


「ただいまーっ!」


 そこにはセルヒ、翠、世紀、エンペラーしかいなかった。


「あれ? 結構遅くなったつもりだが、ルベリウスはまだ帰ってきてないのか? あいつ、苦戦してないといいが…」


───城望の丘にて、ハイネフスが凍った少し後。


「なんだこの氷…炎の出力をどれだけ高くしても溶けねぇし、この刀でも斬れねぇだと…」


 ルベリウスは氷に閉じ込められたハイネフスを救出しようと氷の破壊を試みていた。そこに、足音も無くある一人の女性が近づいてきた。黒いスーツに濃い紺色のコートを羽織った紺の短髪の女性だ。そのコートの片方の前端はハイネフスと同じように凍っている。その女性は喋ることなく氷を片手で持ち上げ、去ろうとする。


「待て待て!! あんた誰だ!?」


 その女性は振り返ることもせず、小声で囁くように早口で言った。


「声が大きい。私は音に敏感だ。私の前では小声で話せ。それと、私達と私達がしていることにはこれ以上一切関与するな。これは警告だ」


 周りで音がしなかったのでルベリウスはその声を聞き取れた。


「なんだったんだ…」


 ルベリウスがそう言うとその女性は即座にルベリウスに詰め寄り、コートから取り外した氷を刃としてルベリウスに突き付けた。


「その声は、私に対する宣戦布告か? それとも、貴様が学ばない故の愚行か?」


 その時、ルベリウスは初めて圧倒的な恐怖を覚えた。その女性の視線は氷のように冷たく、刃のように鋭い。ルベリウスは咄嗟に小声で言った。


「あ…こ、後者だ。オレが悪かった、すまない」


 そしてその女性は氷をコートに取り付け、無言でハイネフスを持って立ち去っていった。ルベリウスも震えながら、周りを警戒して帰っていった。




「か、かかか、帰ったぞ…」


「あ! ボス、やっと帰ってきた! 何してたの? スナイパー、そんなに強かった?」


「ん? ルベリウスにしては随分と気が弱えじゃねぇか? 何があったんだ?」


 ルベリウスはさっき起きたことを具体的に話した。


「ちょっと待ってくれ、この辺で氷を操る能力を持つ人を探してやる…」


 セルヒはさっき見た霊化の目の一覧表を取り出した。


「えっと…それっぽいのは…【廻氷】、【氷弄炎舞】…【永氷の乱陣】…わかんね」


 すると、ルベリウスが表を覗きながらセルヒに言った。


「いや、どれにも、対象を凍らせる、溶けない氷を生成する、とかの能力なんてねぇぞ?」


 すると世紀がそれに少し興味を持ったように近寄ってきた。


「ルベリウス、お前、その女性の姿は見たんだな? 少し、記憶を覗かせてもらうぞ…」


「え? ちょ」


「よし、バイナリを解析して…特定できた」


「はぁ??」


 世紀は一枚の紙を用意し、どこからかペンを取り出した。するとあっという間にマークのようなものを描き終えた。斜め上から見た立方体を背景とし、蛇と下矢印が『弔』の字のように交わっている。


「これが、奴らのマークだ。まあ、彼女の警告通り、これ以上は言わない。もし逆鱗に触れてしまえば、ここにいる全員が殺される」


「まじか…」


 すると世紀は紙を綺麗に折りたたみ、パーカーのポケットに入れた。


「(…やはりいた)」


「ひとまず、今はローグが持つ薬をクータスタに渡しに行こう。ルベリウス、【瞬閃】で行けるか?」


「もうオレのスキル名覚えたのかよ…まあ行けるが」


 するとルベリウスは薬を右手に握りしめ、【瞬閃】でザルトニアの家に向かった。途中、黒い傘が見えたような気がしたが、特に気にしなかった。


「おーい! クータスター! 薬持ってきたぞー!」


「そんなに叫ばなくても聞こえてるさ」


 ザルトニアが扉を開け、クータスタを読んだ。


「えっと、凄腕の情報屋によると、『両目にそれぞれ4〜5滴垂らして目を閉じ、30分待つ』だそうだ。『生命の星』のある人の能力を活用した代物らしいぞ」


「げっ、目薬…」


 クータスタは明らかな目薬感(?)に恐怖を抱き、少し引いていた。もし色を見ていたら、さらに怖がっていただろう。


「仕方ないですね…うっ、目がぁ! 目がぁぁぁ!」


「そのセリフは多分ちょっとまずいですよ」


 するとクータスタの目が少し虹色に発光し始めた。ザルトニアが金色の懐中時計で時間を測り、30分待つことになった。ルベリウスは少し挨拶を済ませ、すぐに戻っていった。


「そういえば、クータスタさんとザルトニアさんって、元はどう言う関係だったんですか?」


「それはつまり、『仕えていた』って言葉だけじゃ足りないってことかい?」


「まあ、好奇心が満たされないというか…」


 ザルトニアは懐中時計の蓋を閉め、ポケットに仕舞った。


「実はね…」


───影穿ち(ファントムパレード)の拠点、『陰影の集い』にて。


「作戦は失敗だ。『穿』は弱まってなどいなかった。寧ろ、戦争の方はアネモス教団に任せっきりらしい。私達がこの時に攻めるのも想定されていた」


「矢張り二人では足りん。次戦は某も赴こう」


「あたしも行きたい!」


「じゃあ、僕は行かなくていい?」


「私の不注意が原因だ。すまなかった」


「いや、ルレイヴは何も悪くない。あの女(ザルトニア)が執行を妨害したせいだ」

謎の女性について

 ハイネフスの回収にやってきた、黒いスーツに濃い紺色のコートを羽織った紺の短髪の女性。『弔(仮)』に所属する。音に敏感で、常に小声で話す。

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