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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
32/38

31.怪雨、来るよ、もうすぐ、キミたちに

「ジュヴィアはすごいぞ? 任務に合わせて性別と名前までまるっと変え、確実に獲物を仕留めて誰もその犯人には気付かない…いつの間にか任務を終わらせて帰ってくる」


 ジュヴィアという名前を聞いて世紀は違和感を覚えた。なぜならそんな名前、暗の名簿に載っていないからだ。


「ジュヴィアは本当に暗所属なのか?」


「ああ、そうだぞ? まあ、ここに泥棒でも入って『ジュヴィア』って名前を見られたらまずいから、名簿には載っていないけどな」


 名前を変えるなら別にいいだろ、まず泥棒を入れるなと世紀は思ったが、結局はまあどうでもいいだろうとなった。


「それじゃ、次はオレらがすることについて話そうか。ザルトニアはもうすぐ帰るだろうから…えっと、クータスタとリズって言ったか? あんたらは無理せず、ザルトニアの家で休んでてくれ。特にクータスタは、調子が悪いらしいからな」


「わ、分かりました!(やった〜!)」


 するとルベリウスは『赤霧の星』の地図を広げ、いくつかの場所に印をつけた。


「えっと…ここと…ここだな、よし。オレは、この『城望の丘』にいるスナイパーのとこに行く。もちろん、戦闘はできるだけ避けるつもりだ。次に、ローグとムーは『染川』の沿いのこの辺りに黒傘の情報屋がいるだろうから、彼女から1:6F(エットペール)の『無彩症』の治し方を聞いてきてくれ。二人とも離れないようにな。他は、ここで待機ってことでいいか?」


 するとセルヒが声を上げた。


「エンペラーは行かないのか?」


「僕が自ら戦地に赴くことは少ない。見ての通り、僕は指揮にあたるつもりだ。それに今は、まだ戦闘は激化していない。この中では僕が直々に赴く必要もない上に、今のうちにクータスタの無彩症を治し、戦力を増やしておくべきだろう?」


 そうして各々は準備を済ませた。すると、


「クータスタ様達、いる?」


 入り口の方からザルトニアの声がした。一同は安心し、扉を開けた。そこには、動かなくなった右腕を抱えながら微笑む彼女がいた。


「いや〜、まんまとやられたね…あそこ(ファントムパレード)には、ルゼレネ以上の化け物がいるかもしれない」


 クータスタはすぐにザルトニアに駆け寄り、


「だ、大丈夫ですか!?」


「ちょっと…いや、かなりまずいね。影穿ち(ファントムパレード)の…淵途かルレイヴかな。一瞬だったから姿は見逃したけど、刀を持ってることは分かった。でも淵途の能力に時を止めるなんて無かったはずだから、多分情報が無いルレイヴの方かな」


 ザルトニアはさっき『闇影の星』で起きたことをざっくりと話した。


「なるほど…で、なんで右腕が動かせないんだ?」


 時が止まった世界では、魔力によって魂が無理矢理身体を動かしているが、身体の一部を動かせなくするということはできないはず。ルベリウスはそう思い、ザルトニアにその原因を訊く。


「多分、右腕の()()()()()()()んだと思う。さっきから何回も右腕に魔力を流し込もうとしてるけど、なぜか拒絶されてるからね」


 それを聞くとルベリウスは影穿ち(ファントムパレード)メンバー能力一覧のルレイヴの欄に


“魔力の奪取”


と書き込んだ。


「ところでザルトニア、戦闘は…できるか?」


「まあ左手で鎌を扱うことはできるけど、今まで通りのパフォーマンスは発揮できないね。まあ、その辺の雑兵を相手するくらいなら、霊化の目だけで何とかなるさ」


「なら、クータスタとリズをあんたの家まで送ってやってくれ。この戦争の間、彼らはそこで休養することになった」


 ザルトニアは無言で微笑み、左手でサムズアップした。


「じゃあ、各自出発だ!」


───ザルトニアの家にて。


「じゃあ、目を開けてみて」


「わあ、本当に着いてる!」


 初めて光になったリズは興奮していた。クータスタは過去にザルトニアに光にさせてもらった経験があるのか、慣れているようだった。


「じゃあここで、薬か何かが到着するまで待とうか…」


───城望の丘にて。


「あんたが、ハイネフス・リクートか?」


 ルベリウスは既に妖刀を鞘から抜き、スナイパーを持つ迷彩服の処刑人を前にしていた。


「お前は…暗のルベリウスだな? 悪いが、俺の正体は明かせない。組織の…」


「カチッ」


 ハイネフスは『組織』と言う言葉を口にした瞬間、凍ってしまった。


「は?」


───染川沿いにて。


 ローグとムーは赤く染った川を延々と眺めながら歩いていた。


「ねぇーねぇーローグ兄さん、『黒傘の情報屋』ってまだいないのー?」


「この辺りのはずなんだがな…ほら、地図にもこうやって書いて…」


 ローグがムーに地図を見せようと屈んだ時、地面に傘のような大きい影が映った。


「ん? あ、もしかして『黒傘の情報屋』さん?」


 ムーはいきなり現れた傘持ちの女性を指差し、大きい声で言った。


「あ、おい! 任務のことは他人には…」


 ローグは小声でムーに囁くが、


「ワタシ、黒傘の情報屋、合ってる、だよ」


突然その女性が喋りだした。黒傘の情報屋は長い黒髪で、黒いレインコートを羽織り、黒い瞳をしていた。彼女は無表情で二人を見下し、雨が降っていないのにも関わらず傘をさしていた。


「無彩症、治し方、知る?」


 黒傘の情報屋は立ち上がるローグに視線を合わせ、少しニヤリと笑った。


「これ、薬、()()()()()3()0()()()()()()()、無彩症、治る、変数、弱まる。でも、副作用、分からない、だから、報酬、ワタシ、いらない」


 黒傘の情報屋は虹色のインクのようなものが入った小さいボトルを取り出し、ローグに差し出した。


「ありがと! 黒い傘の姉さん!」


「ど、どういたし、まして、こちらこそ」


 ぎこちない言葉を並べている黒傘の情報屋は後ろを向いて去ろうとしていた。しかしその去り際、


「それから、ワタシから、天気予報。()()()()()()()()()()()()()()()()()


と言った。ローグとムーはその言葉の意味が分からないまま帰っていった。

ジュヴィアについて

 任務の度に名前と姿を丸々変える彼?彼女?は冷たいペテン師と呼ばれ、アネモス教団に幹部として潜入している。


ルレイヴについて

 太刀を携え、和服を着た影穿ち(ファントムパレード)の女性。ザルトニアからは『ルゼレネ以上の化け物』と恐れられている。


黒傘の情報屋について

 ワタシ、情報、秘密。


無彩症…1:6F(エットペール)の侵食により現れる症状。色を認識できなくなり、やがて患者は1:6F(エットペール)の肉体と化す。


『組織』…ハイネフスがこの言葉を口にしたことで凍らされた。彼は禁句を口にしてしまったのだろうか?

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