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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
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29.光と影の交差

 暗の拠点にて、一行と暗は友好関係を築き、これからについて計画することになった。


「あんたら、『調停者』なんだろ?」


「へ? あー、あぁ」


 セルヒはザルトニアが出発直前に放った言葉を思い出した。


“ワタシを含んで、君らはこの戦争における『調停者』になる。もし仲間になった人らがいれば、遠慮なく『調停者』に誘って。『調停者』の最終的な目標は和解だから、できるだけ戦闘は避けるようにね”


「だったら、暗も『調停者』に参加させてくれ!」


 暗は『赤霧の星』の組織のはず。ならばなぜ『調停者』になるんだと思い、セルヒが訊く。


「えっとだな…まあ、『赤霧の星』の住人だからっつって『紅』を敬ってるわけじゃねぇんだ。なんなら、ほとんどの人に嫌われてる。罪の無い人を傀儡とし、天守の座を守る為だけに夢追い人を殺し、さらには他の執政とも仲が悪くて、喧嘩売ってこの始末さ」


「『紅』ってクズなんだな!」


 そうして、暗の『調停者』への加入があっさりと決まった。




───外は黄昏時、『闇影の星』の都市より遠く離れた無名戦士の墓前にて。


「…退け。私には私の目的がある」


「それはできないね。『調停者』として、争いを無くすことを誓ったから」


「それが御前の目的か。ならば、私は力尽くで御前という名の壁を穿とう」


「やっぱり、言葉だけで解決はできないか…」


 ザルトニアの前には、黒いロングコートにマフラーを首に巻き、眼帯を着けた黒髪の者がいた。


影穿ち(ファントムパレード)、【深影の執行人(エグゼキューター)】の名の下に宣告する───


執行を受け入れよ」


 その者は影の中から黒と紫のレイピアを取り出し、ザルトニアに飛び掛った。


「ふんっ!」


 ザルトニアも咄嗟に反応し、黒い大鎌でその者を弾き飛ばす。


「【淵眸】」


 その者は紫の眼光を残して暗い影に消え、ザルトニアに背後から囁いた。


「私を止めたいのならば、『穿』を殺せ」


 ザルトニアはその言葉を聞きもせず、大鎌を振るい、その者を退けた。


「本気は出さないのかい? 【()()()()()()()()()?」


「私の霊化の目はもう…【影の真理】ではない」


 ルゼレネは再びレイピアでザルトニアに襲い掛かり、激しい金属音が数十回にわたって鳴り響いた。そうしているうちに太陽は沈み、残光も消えた。


「…日没だ」


 ルゼレネは辺り一帯を暗闇で包み込み、ゆっくりと影に消えていった。


「(心象世界か…)」


 ザルトニアは辺りを見回したが、どこにもルゼレネの姿は無く、ただ深い暗闇だけが蔓延していた。


「…【光導結晶(クルールクリスタル)・無彩】」


 ザルトニアの手から光る結晶が数個現れ、屈折しながらある一点へ向かっていった。ルゼレネだ。


「(見つけた!)」


 ザルトニアはルゼレネに向かって鎌を振ったが、それは霧のように消えてしまった。


「後ろだ」


 ルゼレネはどこからかリボルバーを取り出し、ザルトニアの頭に突き付けた。


「ふっ…君からそんな慈悲の時間が貰えるなんてね」


 ルゼレネは発砲したが、ザルトニアは既に光になって心象世界と現実の境界を鎌で破壊した。


「パリーン!」


 空間が罅割れ、ルゼレネの心象世界は破られた。外では、時が止まっているのにも関わらず雨が降っていた。


「御前なら、銃を突き付けられる前に避けられただろう?」


「まあね」


 ルゼレネはリボルバーを影の中に投げ捨て、目を瞑って立ち尽くした。


「終わりかい?」


「………」


 ルゼレネは黙ったまま腕を組み、ザルトニアの警戒心を読みながら機会を伺った。そしてルゼレネは左手を掲げ、指を鳴らした。


「(…上か!?)」


 ザルトニアは咄嗟に空を見上げ、その上にいる太刀を携えた和服の女性を見つけた。


「【理絶空】」


 刹那、雨音と共に時が止まる。この女性の心象世界が展開されたようだ。いつの間にかルゼレネは消えていた。


「憐れだ…光の真理ともあろう者がこの程度の小細工に掛るとは…」


 その女性は華麗に着地し、太刀を引きずりながら動きが止まったザルトニアにゆっくり歩み寄り、肩を叩く。その瞬間、


「あ゛ぁ゛っ!」


 ザルトニアは非常に強い力で地面に叩きつけられ、その女性は去っていった。女性が去り、雨は止んだ。雨は、彼女の到来を告げるものらしい。


「(反応…できなかった…)」


 しばらくしてザルトニアは立ち上がり、光になって戦線に戻っていった。


「(ルゼレネはこの戦争で衰弱した『穿』を殺しに行ったんだろう…でも彼はこの世の全ての影と陰と存在を共有している…影と陰が存在する限り、彼が死ぬことはない…無茶なことを)」




───暗の拠点、部屋の隅にて。


「ああいった馴れ馴れしいやつは嫌いなんだよなぁ…お前もだろ、世紀?」


「…世紀?」


 翠が話しかけたその場所に、世紀はいなかった。部屋全体を見回してもいない。


「(どこに行ったんだ…?)」


 翠は目立たないように『運命の基盤』を取り出し、世紀の位置を確認した。しかし、彼女は()()()()()どこにもいなかった。


「(…まずい!)」


 翠はすぐにセルヒ達に駆け寄り、叫ぶ。


「世紀が消えた!」

ルゼレネについて

 マフラーと眼帯を着けた黒いロングコートの黒髪の者。『影穿ち(ファントムパレード)』の【深影の執行人(エグゼキューター)】及びリーダーを務めており、執行と銘打ってそのレイピアで『穿』を殺そうとしている。【影の真理】の能力を持っているが、使用する霊化の目の名前は【淵眸】。


謎の女性について

 ルゼレネの合図と降雨と共に現れた謎の女性。太刀を携えている。ルゼレネに味方していることから、『影穿ち(ファントムパレード)』の一員であることがわかる。


『調停者』…第二次赤影星間大戦争において、どちらの勢力にも属さず、調停で戦争を終結させることを目的とする者達。

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