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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
赤霧の星・第一節 もしも世界が染ったら
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28.明るい暗がり

「今のは誰だったんですか…?」


 世紀が喋りながらドアを開け、周りを見渡して外に出る。


「【闇隠れの処刑人】ハイネフス・リクート、『闇影の星』では都市伝説程度に知られている凄腕の殺し屋だ。弾丸の軌道を操る能力を持っている…安全が確認できた。行くぞ」


「ほ、本当に行くのか…」


 一行は道なりに進み、地図に記された暗の拠点に向かっていった。しかしその道中、ある看板が立てられていた。


“赤霧注意”


 少し先を見ると、そこには地面から翠の腰辺りまでの高さの赤い霧が充満していた。


「これが『赤霧』だ。五代執政の『紅』が作り出している。触れるだけなら無害だが、吸うと奴の操り人形になるから気を付けろ」


「なんでこの星にはこんな危険なのがあるんですか…執政ならちゃんと政治してくださいよ…」


 リズは背伸びしてもギリギリ赤霧を吸ってしまうほどの身長だったので、息を止めながらそのまま突き進んだが、その途中でクータスタが突然硬直した。


「え…? 赤…い…?」


 クータスタは瞳を震わせ、何かに恐怖している。


「ん? どうした?」


 セルヒは振り返ってクータスタに声を掛けた。その瞬間、翠がクータスタに駆け寄り、肩を揺さぶる。


「おい、聞こえるか!?」


「あ…はい、聞こえています。ただ…」


 世紀が歩いてきた。


()()()()()()()()、だろう? それはいつからだ?」


「えっと…この星に来てから…? いや、『変数』の力を使った時?」


「まあいい、今は赤霧を抜けよう。リズの肺活量が限界だ」


 一行は赤霧を抜け、クータスタは道端に座り込んだ。リズは大きく息を吸い、大きく吐いた。


「はぁ…やっぱり赤霧は避けたいですね…」


 クータスタは依然として戦慄しており、無彩色の地面を眺めていた。


「恐らく、体に『変数』を封印する力が衰え、その症状が出始めたんだろう。これ以上『変数』の力は使わない方がいい。もし封印が解け、体の外に逃げ出されてしまえば、『影喰い』以上の大災害が起きるかもしれない」


 その時、クータスタの脳内では1:6F(エットペール)が囁いていた。


■色が消えたのは小僧が見る世界のみか。小僧。『穿』を探し、殺せ。さすれば我の力は戻る。但し、此の事は連れには伝えぬ様にな■


「分かりまし…た…」


 世紀はその弱い声を聞き逃さず、質問した。


「何が分かったんだ?」


「あー、いや! 何でもないです!」


 世紀は何かを察した様子で、クータスタへの尋問をやめた。そうして一行は再び出発した。そしてもう少しで到着という頃…


「えっと…こっち…?」


地図には道が記されているが、目の前はどう見ても岩壁だ。その時、翠が率先して進んだ。


「簡単な仕掛けだ。こうして進」


 翠は壁をすり抜けていった。セルヒ、リズは驚愕し、恐る恐る人差し指を岩壁に付けてみる。すると翠と同じようにすり抜け、体重をかけ過ぎたのか、そのまま転んだ。それに続き全員が中に入っていった。


「翠さん、まだ途中までしか言葉が聞けてませんが…」


「え? あぁ、こうして進めば、すり抜けられる…まあ、言葉が途中でプツッと途切れるほどに防音もできるってことだ」


 中は薄暗く、線に繋がれたLED電球が道を照らしながら点滅している。


「暗って名前にぴったりな場所だな…」


 そしてまたしばらく進み、地図に記された印の場所に着いた。そこには木製の扉があり、奥からは楽しそうな喋り声が聞こえる。セルヒはゆっくりと扉を開け、中を覗いた。その瞬間、


「【瞬閃】」


見覚えのある、牙のマスクをつけた女性が赤黒い刀を持ってスキルでセルヒに詰め寄り、首に刀を突き付けた。


「あんた、『闇影の星』の輩か? どっかで見た顔だが…」


「いや、お、俺は…」


 すると、扉の後ろにいた翠が中に入ってきた。


「俺達はオルワの友達だ。彼の紹介でここに来ることになった。お前がルベリウスか?」


 するとルベリウスは刀を鞘に納め、すごい明るい笑顔でセルヒの肩を叩いた。


「なんだ、あいつのダチだったのかよ〜! だったら早く言ってくれよな!」


「(急にキャラ変わるな!?)」


 ルベリウスは奥の方にいるリズとクータスタ、世紀に手招きをし、


「あんたらも来いよ、オレらの暗を案内してやる」


と言った。リズとクータスタはホッとした様子で部屋の中に入っていった。そこには暗のメンバーと思われる、『煌航の星』で見たゴツい男性、青紫色の髪に大きい帽子を被った少女、指揮官服の白髪の青年がいた。


「あんたら味方だったのかよー! あん時は襲ってごめんな! オレはローグ、よろしくな!」


「ムー・ヘヴンだよ! ムーって呼んでね!」


「朽ちた国の王、【アルウゥスト(最高権限)】のエンペラー・アウグストゥスだ。エンペラーと呼び給え」


 どうやら暗は意外と明るい組織らしい。これは大丈夫そうだと翠と世紀が安心した時、セルヒ、リズ、クータスタはもう馴染んでいた。


「お前、ローグって言うのか! まあ和解ってことで、これからよろしくな!」


「おう!」


 セルヒとローグは肩を組み合った。


「ムーさんは僕と同じくらいの身長なんですね」


「うん! ムーは一番機動力が高いってこと!」


 リズとムーは子供のようだった。


「エンペラーさんの国はどこにあったんですか?」


「僕の国、ギルウィスト(不落の砦)は『輪廻の星』にあった。あの星は複数の王国と『輪廻』の要塞で成っている。その中でも大きな力を持ち、独自の言語があったのがギルウィストだ…興味があるのならば、もっと話してやっても…」


 エンペラーの口調がだんだん弱くなっていくのを見て、クータスタはこれ以上聞くのをやめた。


「はぁ…ほんとに初対面かよ…」


 部屋の隅で、翠と世紀はため息をついた。

ハイネフス・リクートについて

 『闇影の星』勢力のスナイパー。弾丸の軌道を操る能力を持つ。


ルベリウスについて

 『赤霧の星』勢力の刀使い。暗のリーダーであり、瞬間移動能力を持つ。


ローグについて

 『赤霧の星』勢力のゴツい男性。『煌航の星』で会った人。


ムー・ヘヴンについて

 『赤霧の星』勢力の青紫色の髪の少女。大きい帽子を被っており、リズと同じくらいの身長。


エンペラー・アウグストゥスについて

 『赤霧の星』勢力の白髪の青年。かつて『輪廻の星』でギルウィストのアルウゥストとして生き、帝国の滅亡を見届けた。


暗…ルベリウス、ローグ、ムー、エンペラー、??が所属する『赤霧の星』の組織。大切な人または物などを失い、新しく生を受けたい者ならば誰でも所属できる。知名度がないからかまだ四人?しかいないが。


ギルウィスト…かつて『輪廻の星』で猛威を振るった王国。ギルウィスト語で『不落の砦』を意味し、エンペラーが治めていた。既に滅亡している。

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