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7/11

崩壊するメガ企業と、地獄の【株式(スパチャ)】買収

「ひ、引き上げろ! 売り注文を全て引き上げるんだぁぁぁ!!」

 オリオン・コーポレーション本社。

 CEOのゴルドーが、血走った目でモニターの株価チャートにへばりついていた。

 ゲリラジャック配信による裏金暴露から、わずか1時間。

 オリオン社の株価はストップ安を更新し続け、文字通り「暴落の垂直落下」を記録していた。SNSのトレンドは上位1位から20位まで『#オリオン崩壊』『#地獄配信』『#500億の裏金』で埋め尽くされている。

『社長! 投資家からの解約電話が殺到しています!』

『メインバンクからの融資が全てストップしました!』

『株価が紙くず同然まで下がっています!!』

「バカな……! 我が社は業界シェア1位のメガ企業だぞ!? たかが二人の配信者に潰されてたまるかぁぁ!」

 頭を抱えるゴルドーの耳に、役員室の大型モニターから再びあの男の声が聞こえてきた。

『――あー、オリオン社の皆さん、聞こえますか?』

 ゲリラジャック中の画面に映るのは、相変わらず優雅に煎餅をかじるエンマと、タブレットを操作する俺。

「レン、この『株』とやらは何じゃ? 画面でグラフがどんどん下に向かって突き刺さっておるぞ?」

「企業の価値を示す数字だよ。エンマ、暴落して紙くず同然になったオリオン社の株、いま投げスパチャのプール金で買ったらどうなると思う?」

「ぬ……? 安くなったお菓子を投げ売りで買い占めるようなものか?」

「正解。……というわけで、リスナーの皆さん」

 俺はカメラに向かって、不敵な笑みを浮かべた。

「たった今、俺たちがこれまでの配信で獲得したスパチャ総額『約35億円』を全て投入し、暴落したオリオン・コーポレーションの株式**『51%』**を取得しました」

『?????????????』

『は?????????』

『スパチャでメガ企業を買収したwwwwww』

『筆頭株主キターーーーー!!』

『配信の投げ銭で会社乗っ取るV系プロデューサーとか聞いたことないwww』

「な……なにぃぃぃぃぃっ!?」

 役員室でゴルドーが吐血せんばかりに叫んだ。

『というわけで、CEOのゴルドーさん。筆頭株主の権限により、貴方を【解任】します。今日からオリオン・コーポレーションは、俺たちの配信の「子会社(現地スタジオ)」です』

「ふ、戯言をー! 物理的に本社を押さえられでもしない限り、私はCEOの座を降りんぞ! 警備隊! 奴らの隠し部屋へ突入しろ!」

 ゴルドーが狂ったように卓上マイクへ叫ぶ。

 だが、モニターの中のエンマが、飽き飽きしたように溜息を吐いた。

「やれやれ……見苦しい奴じゃ。おい、オリオン社の警備隊員ども。今すぐゴルドーを拘束して地獄の裁判所に突き出せば、お主たちの『生前の罪』をひとつ免除してやるぞ?」

『【警備隊員A】:了解いたしました!!!!』

『【警備隊員B】:ゴルドーCEO、拘束完了です!!』

「なっ……お前たち、私の給料で雇われている身だぞ!? 裏切るのか!?」

「申し訳ありません社長! 地獄の閻魔大王様と筆頭株主様の方がお給料(と来世の保障)が良いので!」

『wwwwwwwwwwwwww』

『警備隊の寝返り速すぎて草』

『地獄の権能(と資金力)の前には勝てんかったww』

『【100,000円】新CEO着任おめでとうございますwww』

 画面越しに、ゴルドーが自身の警備隊に羽交い締めにされ、引きずられていく情けない姿が全国に放送された。

「さて、エンマ。メガ企業も手に入ったし、専用の超高性能スタジオと『日本一高級なショートケーキ』が毎日届く環境が整ったぞ」

「おおお! 素晴らしいぞレン! これぞ地獄のプロデュースじゃ!」

 エンマは玉座の上で跳ね回り、俺は画面に向かって静かにマイクをとった。

「視聴者の皆さん、アポロンに続きオリオン・コーポレーションの買収も完了しました。新生オリオン社は今後、ダンジョン探索者の環境改善と『地獄配信』の公式サポートを行います。……あ、チャンネル登録とスパチャも引き続きよろしくな」

 こうして、ただの追放探索者と過疎配信者のコンビは、たった数回の配信で『現代ダンジョン社会の頂点』へと上り詰めてしまったのだった。

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