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メガ企業の圧力と、伝説の【BAN解除】配信

「大変じゃレン! 我の画面が真っ黒になっておるぞ!?」

 隠し部屋に、エンマの悲鳴が響き渡った。

 端末の画面には、冷酷な赤い文字が表示されている。

『このアカウントは利用規約違反(不正な情報露見および脅迫行為)により、永久凍結(BAN)されました』

「む、無念……! これではお菓子も買えぬ! ガチャも引けぬ! 我の地獄の小遣い稼ぎがぁぁぁ!!」

 エンマが玉座の上で身をよじらせ、ジタバタと暴れる。

 オリオン・コーポレーションのサクラバが言っていた予告通りの攻撃だ。プラットフォームの親会社に圧力をかけ、俺たちのチャンネルを根こそぎ潰してきたらしい。

「落ち着けエンマ。予定通りの動きだ」

 俺は冷静に自前のノートPCを開き、画面を操作した。

「向こうは『公式の配信サイト』を抑えれば、俺たちの口を塞げると思っている。……だが、現代のインターネットを舐めすぎだ」

「ぬ……? 配信サイトが使えんのだぞ? どうするのじゃ?」

「プラットフォームが使えないなら――ダンジョン全域の『探索者用通信回線インフラ』を直接ジャックする」

 俺はダンジョンの隠し部屋にある古の魔導回路に、自分の端末を接続した。

ダンジョン内に張り巡らされた魔導電波は、国や巨大企業でも遮断できない独自のネットワークだ。

「エンマ、お前の『地獄の権能』で、この通信波に『強制割り込み(ジャック)』のノイズを乗せられるか?」

「ふむ……? 亡者の叫び声を全土に響かせるようなものか? それなら朝飯前じゃが」

「よし。今から日本中の探索者端末、および街頭の大型街頭ビジョンに**【地獄の緊急特別報道】**を直接ゲリラジャックで流す!」

 その頃。

 オリオン・コーポレーション本社・役員室。

「ハッハッハ! 見ろサクラバ君、あの生意気な地獄配信者め、アカウントを潰されて息の根が止まったようだぞ!」

 高笑いするのは、オリオン社の最高経営責任者(CEO)・ゴルドーだった。

隣に立つサクラバも、満足げにワイングラスを傾ける。

「所詮は野良の探索者と過疎Vtuberの悪あがきです。我が社の圧力の前に、個人などゴミ同然――」

『――あー、マイクテスト、マイクテスト。地獄の王、閻魔大王であるぞ!』

「「……は!?」」

 突如、役員室の巨大モニター、さらに自社ビル外壁の大型ビジョンが激しいノイズとともに切り替わった。

画面には、豪華な玉座に座るエンマと、不敵な笑みを浮かべる俺の姿。

それだけではない。

日本中のスマホ、街頭ビジョン、さらにはダンジョン内の全探索者の端末に、強制的に俺たちの顔が映し出されていた。

『なになに!? 画面が勝手に切り替わった!?』

『これ、昨日の地獄配信者じゃねえか!?』

『BANされたはずなのに、街頭ビジョン全部ジャックしてて草www』

『同接表示が出てないけど、実質日本人が全員見てるだろこれwww』

 サクラバがワイングラスを叩き割り、叫んだ。

「バ、バカな!? 我が社のセキュリティを破って全画面をジャックしただと!? 今すぐ回線を切れ!!」

『無駄ですよ、サクラバさん』

 画面の中の俺が、冷徹な視線でカメラを見つめる。

『俺たちの配信をBANした理由は「規約違反」ではなく、そちらの「裏金捏造」を暴かれたくなかったからですよね?……というわけで、本日の企画はこちら』

画面上にドカンと巨大なテロップが出現した。

【メガ企業『オリオン・コーポレーション』の全裏口座&粉飾決済、100年分まとめて一括暴露(返金)スペシャル!!】

『ひ、ヒィィィィッ!?』

 エンマがパラリと『閻魔帳』を開く。

「者共! 画面越しでも『お供えスパチャ』の代わりに、SNSでこの配信の拡散ボタンを押せ! 拡散されればされるほど、この企業の黒い歴史が全世界に暴かれるのじゃ!!」

『【拡散数:10万件突破!】➔『オリオン社、去年ダンジョン事故の遺族手当を8割カットして役員賞与に回していた件』を暴露!』

『【拡散数:100万件突破!】➔『オリオンCEOゴルドー、スイス銀行に隠し財産500億円保有』を暴露!』

『wwwwwwwwwwww』

『拡散がスパチャ代わりになってて草』

『メガ企業の闇が深すぎる』

『全画面ジャックからの暴露は伝説www』

『トレンド1位〜10位まで全部地獄配信で埋まってて草www』

「や、やめろぉぉぉぉ! 我が社の株価が暴落しているぅぅぅ!」

画面の中で、エンマが高らかに高笑いする。

「ふははは! 我をBANしようなどと100年早いわ! 人間どもの拡散の力(熱意)、しかと受け取ったぞ!」

俺はカメラに向かって、静かに指を突きつけた。

「オリオン・コーポレーション。俺たちをBANした代償は、貴社すべての社会的信用と500億円の資産だ。……次は何を消されたい?」

世界中を巻き込んだゲリラジャック配信により、俺たちの『地獄の小遣い稼ぎ』は、もはや国家すら揺るがす絶対的な力へと変貌を遂げていた。

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