地獄の公開裁判(レスバ)と、赤スパの爆炎
「アポロン公式アカウント様、コメントありがとうございます!」
俺の声が、同接20万人を超えた配信画面に響き渡る。
画面上のチャット欄は、もはや目視不可能なスピードで流れていた。
『公式が自爆してて草』
『刺客送るって配信で言っちゃったよww』
『完全に自白で詰み』
『【10,000円】幹部の裏金口座早く見せて!!』
エンマが玉座の上でニヤニヤと『閻魔帳』を撫でまわす。
「ふはは! 人間ども、お供え(スパチャ)の勢いが素晴らしいぞ! では約束通り、アポロン幹部――『裏金の神』こと副ギルド長・マルクス殿の罪状を読み上げてやろう!」
エンマがページを指でパラリとめくった。
「――一昨年、初心者探索者のダンジョン保険金『3000万円』を横領し、愛人の高級マンション購入に充当! さらに裏口座【スイス・中央銀行・アカウント番号9901】に、不正な売買利益『2億円』を隠蔽中!」
「おい待て!! なぜ口座番号まで知っている!?」
配信画面のコメント欄に、マルクス本人の個人アカウントから悲鳴のような書き込みが入る。
「さらに! 現ギルド長を失脚させるため、来週のダンジョン攻略で『毒蜘蛛の魔石』を仕込もうと計画中!」
『えぇぇぇぇえええ!?』
『口座番号特定されててワロタ』
『内部抗争まで暴露されて草』
『アポロン完全に崩壊で草www』
『【50,000円】悪党を物理的にも分からせろ!!』
「な、捏造だ! 全部ウソだ! 誰か、今すぐこの配信者の首を跳ねろ!!」
『ズガンッ!!』
隠し部屋の天井が、激しい爆音とともに崩れ落ちた。
煙の中から飛び出してきたのは、アポロンが誇る最高戦力――Sランク暗殺者パーティー『影の三刃』だ。
「口の減らない過疎配信者め……。ギルド長の命により、ここで処理する」
黒装束の三人が、漆黒の短剣を構えて音もなく肉薄してくる。
Sランクのスピード。普通の探索者なら瞬殺されているレベルだ。
だが、俺とエンマは一歩も動かない。
「エンマ、配信の同接とスパチャメーター見ろ」
「ぬ……? 同接『35万人』……獲得スパチャ『1200万円』オーバー……!?」
エンマの目が、金色の光を放つ。
「おいおい暗殺者さんよ。あんたら、一番やっちゃいけないタイミングで乱入してきたな」
「なに……?」
「今の閻魔大王様はな……今世紀最高レベルで『地獄の権能』がチャージされてるんだよ!」
俺が指をパチンと鳴らす。
「エンマ! 投げ銭してくれた35万人のリスナーに、最高の演出を見せてやれ!」
「応ともさ! 我が崇高なるお供え物を邪魔する無礼者どもに、地獄の最深部『阿鼻地獄』の裁きを下す!!」
エンマが両手を掲げた瞬間。
画面を埋め尽くしていた数千件の「赤スパ」が、実体化した黄金の炎となって部屋全体を包み込んだ。
『地獄の超必殺技・【極彩赤スパ大炎上】!!』
「ギ、ギヤアアアアアアアアアッ!?」
Sランク暗殺者たちの防具や耐性魔法が、文字通り「物理的に消失」していく。
投げ銭の総額に比例した絶対的な威力が、彼らの攻撃を粉砕し、そのまま壁の果てまで吹き飛ばした。
『ドガアァァァァン!!』
壁にめり込み、黒コゲになって白目を剥くSランク探索者たち。
カメラドローンが、その情けない全滅シーンと、画面端で呆然としているマルクス副ギルド長の顔を鮮明に捉える。
『wwwwwwwwwwwwww』
『Sランク瞬殺で草』
『赤スパの暴力凄すぎる』
『アポロン、物理的にも社会的にも全滅ww』
『同接40万人行ったぞおい!!』
静まり返った部屋で、エンマは満足そうに高級焼き肉の肉をパクリと食べた。
「ふぅ、運動した後の肉は美味いのう! マルクスとやら、次はお前の屋敷に直接この炎を叩き込んでやろうか?」
『【アポロン公式】:申し訳ありませんでした!!!! 謝罪します!! 破産申請します!!』
コメント欄に上がった降伏宣言に、リスナーたちが大爆笑の渦に包まれる。
俺はカメラに向かって不敵に笑い、言い放った。
「というわけで、アポロンとのレスバは俺たちの完全勝利です。……さて、次はどの悪徳ギルドを裁いてほしい? コメント欄でリクエスト待ってるぜ」
こうして、俺と閻魔大王の『地獄のスカッと配信』は、たった4回目にして世界の勢力図を塗り替え始めていた。




