↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/11

炎上系探索者を地獄の帳簿(データベース)で分からせろ!

「……す、すごいのじゃ……! スパチャ(お供え)が止まらん……!」

 ミノタウロスを炭塵に変えた直後。

 エンマはタブレットにへばりつき、赤や黄色の通知が鳴り響く画面を見て、涎を垂らさんばかりに目を輝かせていた。

『同接1万5000人達成!』

『今の業火エフェクトどうやってんだよww』

『CGなのかガチなのか分からんけど神回』

『ケーキ何個分だよこれwww』

「ふははは! 見たかレン! 人間どもが我の威光にひれ伏し、貢ぎ物を捧げておるぞ! 今夜は高級寿司じゃ! ガチャも回し放題じゃー!」

「調子に乗るなエンマ。まだ1話目がバズっただけだ。継続して同接を維持しなきゃ、一発屋で終わるぞ」

 俺がクールに指摘すると、エンマは「ぬぬ……」と悔しそうに口を尖らせた。

 だが、その平和な空気は唐突に破られる。

『ドォン!!』

 隠し部屋の入口が吹き飛び、煙の中から二人の男が姿を現した。

ギラギラした金ピカの装備を身にまとった男と、カメラドローンを従えた配信者だ。

「ハッ、見つけたぞ! 第五十層の隠し部屋!……って、なんだぁ? 先客か?」

 男の顔に見覚えがあった。

大手配信ギルドに所属するPKプレイヤーキラー紛いの炎上系配信者、**『剛腕のゴウ’』**だ。

「おいおい、過疎配信者が何やってんだ? 邪魔だから失せろ。この隠し部屋のボス討伐実績と宝は、俺たち『ゴウちゃんねる(同接5万)』がいただく」

 ゴウは俺の胸元を乱暴に突き飛ばすと、玉座のエンマを品定めするように見下ろした。

「なんだそのガキ。コスプレV系配信者か? 雰囲気に合わないから消えろよ」

「……なっ! 我を『ガキ』とな……!? 無礼者め、地獄の釜に叩き落としてくれるわ!」

 ブチ切れるエンマ。だが、コメント欄は荒れ始めていた。

『うわ、ゴウが入ってきた……』

『横取り配信者じゃん、最悪』

『レン逃げろ! こいつガチで暴力振るってくるぞ』

 ゴウはカメラに向かってニヤニヤと笑う。

「リスナーのみんな〜! 横取りじゃなくて『ダンジョンのルール』だろ? 弱い奴が悪いんだよなぁ!」

(……なるほど。絶好の『ネタ(企画)』が向こうから飛び込んできたな)

 俺はエンマの耳元にスッと顔を近づけ、ニヤリと囁いた。

「エンマ。『閻魔帳(地獄のデータベース)』は使えるか?」

「ぬ? 閻魔帳か? 生前の罪から現世の悪行まで、すべて記録されておるが……」

「よし。ゴウの『罪の履歴』を全部読み上げろ。リスナーにスパチャを誘発させる『暴露配信』だ」

「おお……! 悪人を晒し上げてスパチャを得る! なんという悪趣味……いや、地獄的なナイスアイデアじゃ!」

 エンマは瞬時に理解し、空中に半透明の黒い書物を呼び出した。

そして、勝ち誇るゴウに向かって指を突きつける。

「者共! この『ゴウ』とかいう不届き者の悪行を暴いてやるぞ! 投げスパチャを投げれば投げるほど、こやつの痛い過去が白日の下に晒されるのじゃ!」

「はぁ? 過去だぁ? 何言って――」

 ゴウが嘲笑おうとした瞬間、エンマが粛々と読み上げ始めた。

「――『剛腕のゴウ』、本名:佐藤タカシ! 3年前、初心者パーティーの報酬を横領! さらに2年前、裏垢で『うちのギルドの姫、マジで顔がブスww』と投稿!」

「なっ……!? なぜそれを――!?」

『wwwwwwwwww』

『本名特定キターーー!!』

『裏垢バレ草』

『【1,000円】もっと暴露しろwww』

 スパチャが跳ね上がる!

「さらに1年前! ダンジョンで拾ったレア装備を『盗まれた』と偽り保険金を不正受給! 昨日の夜は『実は高所恐怖症で観覧車に乗れない』と彼女に泣きつく!!」

「やめろぉぉぉぉ!! どこでそれを調べたぁぁぁ!?」

『【10,000円】保険金不正受給は犯罪で草』

『【30,000円】観覧車で泣くゴウちゃんかわよww』

『通報しましたwww』

 同接数が一気に3万人を突破!

 ゴウの配信画面は炎上コメントで埋め尽くされ、顔を真っ赤にしたゴウが狂ったように大剣を振り上げた。

「ぶっ殺してやる! お前ら全員、ここで殺せば証拠は消えるんだよぉぉ!」

「レン! スパチャ(お供え)が溜まったぞ!」

「よし、ぶっ放せエンマ! 『地獄の業火・スパチャエフェクト』だ!」

 溜まりに溜まった赤スパの群れが、黄金の雷光となって天井から降り注ぐ!

『ドドドドドンッ!!』

「ぎゃあああぁぁぁぁっ!?」

威力を自由に調整した雷がゴウを直撃。装備を黒コゲにされ、白目を剥いてその場に倒れ伏した。

カメラドローンだけがぷかぷかと浮き、情けない姿のゴウを映し続けている。

『同接5万人突破!!』

『神回すぎるwwww』

『悪党成敗(物理&社会的)スカッとした!』

『これが地獄の裁きか……』

「ふははは! 見たか悪党め! 我を『ガキ』と呼んだ報いじゃ!」

エンマは玉座の上で高笑いし、俺は画面に向かってマイクをとった。

「ご視聴ありがとうございました。リスナーの皆さん、悪人の情報があればコメント欄へ。閻魔大王様がリアルタイムで裁きます。……チャンネル登録とスパチャ、よろしくな」

こうして、俺たちの『地獄の暴露&スカッと成敗配信』は、初日で伝説となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。