第24話
「結構……遠かったな、ここまで来るのに」
「リュウジしっかりしろー、だらしねえぞ」
「お前、ハァ……みたいに、強化スキルを……ハァ、持ってねぇんだよ!」
「だったら佐藤みたいに魔力で肉体強化すりゃあいいだろ?」
「簡単に言うな……」
司が言うのも最もな話だが魔力による肉体強化はハッキリ言って結構疲れる。体内に宿るマナを決まった部位や武器に流す。それだけでもかなりの集中力や精神力が必要だ。
一応魔力を操作して肉体を強化してるので、常人なら日を跨ぐ距離を俺たちは日没ギリギリに到着することが出来た。
だがさっきも言った通り、集中力と精神力をかなり摩耗させたのでハッキリ言って体の疲労より精神的な疲労の方が大きい。
佐藤はほぼ無意識に魔力を操作してるので、おそらく訓練でそう言ったモノはどうにかできる部類なのだろうが、俺は今までそんなことは全くして無いので、今はもうどうにも出来ない。
まあ兎に角、取り敢えず目的地に着いたので良しとしよう。
長い道のりを経てようやく目的の神殿が見えてくる。
神殿は街から見える山、『霊峰アドュス』と言う山の頂上付近に建てられており、天気が良ければ街からでも神殿の姿を拝むことも出来る。
街から外壁越しに見ても見上げるほどの大きさで、俺たちが転移してきた時は神殿から城まで魔術を使って一瞬で移動してたから分からなかったが、まさかこれほど時間が掛かるとは思ってなかった。
正直に言って、遠過ぎるにも程がある。
念の為、作戦を思いついた日は一度屋敷に戻ってからじっくり休んで朝一番に行動を開始ししたが、本当に良かった。
あのまま出発してたら100%野宿する事になってた。
「久々に見るけど結構でかいな~」
「確かに。あの時は神殿を出た時の景色とか雰囲気に流されて神殿自体をよく見てなかったからな。それより司、どうだ? 流石にこの高さから行けば、あの空中警戒網にも引っかからないだろ」
眼下には俺たちが長い事歩いた道と、それに繋がる壁に囲われた広大な街、そしてその中央に位置する現代建築学では到底敵わない巨大な城。
俺はその頂上を見据えてから早速準備に取り掛かる。すると司が何やら心配そうな顔をして俺に話しかけてくる。
「ていうかリュウジ、俺たちの無断外出は本当にバレないのか?」
俺たち転移者の暮らす屋敷は基本どこをいつほっつき歩いても問題は無い。庭園や訓練場は見放題、使いたい放題だ。
しかし日が落ちてから屋敷の敷地内から出るのは、何か特別な理由でも無い限り原則禁止されている。
先日起きた城への無断立ち入り、及び立ち入り禁止区域への侵入事件もあり、そこら辺の規制が今まで以上に厳しくなっている。
「心配すんな、ちゃんと対策はしてるって」
「ホントかよ」
「ホントだよ」
作戦の内容は単純。
俺の召喚したスケルトンに俺たちの代わりをしてもらう。これだけだ。
朝早くの外出が許可されるギリギリの時間に街へ出る。その時ついでに顔が大半が隠れるくらいの深めのフードを被る。そして人目の付かない所で俺たちが身に付けてる衣服などを全てスケルトンに着せて、夜遅くの門限ギリギリに屋敷に帰らせる。
城への出入りは夕方までと厳しくなったが、街からの出入りは多少見る目が厳しいが時間までは制限されなかった。
街灯も無い暗がりで深くフードを被れば顔を確認するのはかなり難しいだろう。まあ声を掛けられる恐れもあるが時間ギリギリに帰るので走って屋敷に向かえばそこら辺は誤魔化せるだろう。多分……
だけどふと思ったけど少し過剰な気もするんだよな~、別にヤバい所って感じでも無かったしなぁ。まあ今は良いか。
俺は背負っている素朴なバックの中から丁度いい太さの紐を取り出す。
「よし司、これで俺とお前を縛れ」
「え!?」
・・・
「おいグラつくぞ! もっとしっかり縛れ!」
「もういいだろ、これくらいで! よしじゃあ早速……」
「待て待て! ちゃんと俺が落ちないように」
「だから大丈夫だっての! よしじゃあ行くぞ!!」
「いやちょっ待!?」
司の両肩に体を預け俺の片足を司が掴んで、いわゆるファイヤーマンズキャリーで俺を抱えて司は宙を駆け出した。
地面がどんどん遠ざかり、遠ざかるたびに俺の心臓もキュウッと締め付けられ体全体から血の気が引く。
大丈夫だと思いたいが目を瞑り必死になって司の体を空いている手で掴む。
「うわスッゲェ……おいリュウジも見ろよ! スゲェ景色だぞ!!」
「見る暇なんて無えよ!!!」
空を飛ぶのでは無く、空を走っているので体に伝わってくる振動が恐怖を助長する。
「下を見るからだって、前を見ればどうって事無いよ。ほら!」
司にしつこく促され仕方なく視線を前に向け目を開くと、ぼやけた視界が徐々に晴れていく。
「どう?」
「ッ!……まあ……多少は」
「だろ」
この前見た景色と同じくらい壮大な絶景が再び目の前に現れしばらくその景色に見惚れてしまった。
だが、ふとある事に気づく。司が前に進むたびに徐々に高度が上がっている。
「……なあ、司……ちょっとい」
「よっしゃあ! ここからは一気に加速するぞ!!」
それを合図に司が走るのを止め、その場から少し飛び上がる。そして再び空中に着地すると城の頂上目掛け空中を滑り降り始めた。
「イヤッフー!!!」
「バカバカバカバカ!!!」
重力に引っ張られグングン加速して行き、あっという間に城の頂上にあるバルコニー付近まで到達した。
司は滑る傾斜を徐々に緩やかにして減速して、何事も無くバルコニーに到達した。
「ハア、ハア……死ぬ。絶対死ぬ」
「死んで無えだろ」
まだ足がガクガクしてる。バルコニーに着くと同時に四つん這いになり呼吸を整える。
すると俺たちを待っていたと言わんばかりにバルコニーの扉がタイミングよく開かれる。
「あ……えっと…」
幸薄そうな黒髪の美少年が俺らの前に姿を現した。




