第16話『風の待つ檻』
ルミノヴァを発った馬車が北門を抜けたのは、まだ朝靄の残る早い時刻だった。
ケイムが手配したのは、連邦軍の紋章が小さく刻まれた幌馬車である。軍用とはいっても、兵士や武器を運ぶための大型車両ではなく、四人ほどが向かい合って座れば、それだけで窮屈に感じられる程度のものだった。
狭い荷台には寒冷地用の毛布と数日分の食料が積み込まれ、御者台では寒冷地仕様の厚い外套をまとった兵士が黙々と手綱を握っている。
ケイム本人は同行しなかった。帝国が持ち去った遺物の調査に加え、ファランディアで起きた戦闘についても、まだまとめるべき報告が残っているらしい。
出発前、ケイムは地図と紹介状をマナへ手渡すと、いつもの軽い調子で言った。
「道に迷ったら、雪の深いほうへ進めばいい」
「……それで、本当に着くんですか?」
「たいていは北へ出るよ」
「たいてい?」
「まあ、心配なら御者に聞くのが確実だね」
「最初からそう言ってください」
そのやり取りを最後に、三人を乗せた馬車はルミノヴァを後にする。
街を囲む白い外壁は少しずつ遠ざかり、高い塔の先端も朝靄の中へ沈んでいく。やがて屋根も城壁も見えなくなると、残されたのは、整備された石造りの街道を進む車輪の規則正しい音だけだった。
道の左右には、緩やかな丘と農地がどこまでも広がっている。春を待つ麦畑、低い石垣に囲まれた牧草地、荷車を引きながらルミノヴァへ向かう商人たち。どれも見慣れたセリオス領の風景だった。
だが、馬車の揺れが身体へ伝わるたび、ルミノヴァから少しずつ遠ざかっていることを否応なく意識させられる。
この旅の先で待つのは、神風の刻印者ハルヴァ・エルデン。
百年以上を刻印とともに生き、今ではその力なしに呼吸さえできない。それでも、刻印の制御において彼の右に出る者はいないという。
アレンは、膝の上に置いた右手へ目を落とした。
黒い手袋に覆われた指先には、馬車の揺れが伝わっているはずだった。だが、薬指と小指だけは、まるで自分のものではないかのように感覚が薄い。
他の二人が外を見ていることを確かめると、アレンはゆっくりと指を曲げる。
人差し指と中指は、順に曲がった。
薬指は半ばで止まり、最後の小指は細かく震えただけだった。
動け。
頭の中でそう命じる。昨日より少しでも動けば、回復している。そう思いたかった。
祈るような気持ちでもう一度力を込めたが、小指は動かない。
代わりに、手の甲の奥を細い針で刺されたような痛みが走り、アレンは反射的に拳を開いた。
「……まだ、動かねえか」
不意に正面から声が飛んできた。
顔を上げると、ドレイヴが腕を組んだまま、こちらを見ている。
「見てたのか?」
「見えるところでやってりゃ、嫌でも目に入る」
「それを見てたって言うんだろ」
「そういうことにしとけ」
ドレイヴは眉を寄せたが、問いを重ねなかった。
「……言いたくねえなら、今は聞かねえよ」
そう言って、幌の隙間から外を見る。
何も言われないことが、かえってアレンには居心地が悪かった。
「朝よりは動く」
沈黙に耐えきれず、アレンから口を開いた。
「薬指は?」
「半分くらいなら」
「……小指は」
「まだ駄目だ」
そこで一度、ドレイヴの目が右手へ落ちる。
「痛むのか?」
「少しだけだ」
「そうか」
ドレイヴは再び外へ目を向けた。
「なら、無理に動かすなよ」
素っ気ない言い方だったが、心配していないわけではないことくらい、アレンにも分かっている。
無理に励ましもせず、答えを急かしもしない。
その気遣いに気づいた瞬間、アレンの胸の奥がかすかに痛んだ。
◇
二日目の午後になると、街道沿いの畑は次第に姿を減らし、代わって背の高い針葉樹が目立つようになった。その向こうには、白く霞んだ山並みも見え始めている。
空の色も、進むにつれて変わっていった。ルミノヴァを発ったときには淡い青を残していたが、北へ向かうほど灰色へと沈み、やがて冷たい雨が幌を叩き始める。
馬車の隙間からは、湿り気を帯びた風が絶えず吹き込んでくる。
三日目の朝、御者が「ここからノルダリア領です」と告げた頃、雨は細かな雪へ変わっていた。
初めは水滴に混じる程度だった白い粒も、昼を過ぎる頃には街道の両端を薄く覆うようになり、それに合わせるように、すれ違う人々の服装も変わっていく。
人々は毛皮を縫い込んだ外套をまとい、耳まで覆う厚い帽子と、滑り止めの金具を取りつけた長靴で身を固めていた。中には、杖や荷物へ風除けの術式を刻んでいる旅人の姿もある。
南へ向かう荷車には、乾燥させた薬草や、青白く発光する氷晶鉱物が積まれており、すれ違うたびに独特の苦い香りが馬車の中へ流れ込んできた。
「なあ、あれ全部が薬草か?」
遠ざかっていく荷車を目で追いながら、ドレイヴが尋ねた。
「たぶんね」
マナは幌の隙間から少し身を乗り出し、積み荷へ目を凝らす。
「寒いところでしか育たないのがあるんだって。熱を下げたり、魔力酔いを和らげたりするやつ」
「へえ。見た目じゃ、ただの枯れ草だけどな」
「薬草なんて、だいたいそんなものだよ」
「で、それ食えるのか?」
「薬草の話をしてるんだけど」
「薬になるなら、口には入れるんだろ?」
「煎じるの。あとは魔法薬に混ぜたり」
「じゃあ、煮れば食えるってことか」
「食べ物から離れて」
二人のやり取りを聞き流しながら、アレンは右手の指をそっと動かした。
寒さのせいなのか、昨日よりも動きが鈍い。黒い手袋の内側で、感覚の薄い指先が強張っている。
昼前には、右耳の奥で短く高い耳鳴りが響いた。数秒ほどで消えたものの、隠さずマナへ伝えると、彼女はすぐに帳面へ書き留めた。
午後には刻印がわずかに熱を帯びた。放電は起きなかったが、そのことも報告する。
異変を告げるたび、マナの顔に不安が浮かぶ。黙っていればその表情を見ずに済む。
だが、倒れてからでは遅い。分かっているのに、報告するたび自分の重荷を二人へ分け渡しているように感じられた。
「何考えてるの?」
不意に、マナがそう尋ねた。
「……顔に出てたか?」
「右手を見ながら黙り込むときは、だいたいろくなこと考えてないから」
「決めつけるなよ」
「じゃあ、違う?」
すぐには言い返せなかった。
アレンは目を伏せ、小さく息を吐く。
「……何か言うたびに、マナを不安にさせてる気がしてた」
マナは意外そうに目を瞬かせた。
「心配はするよ」
「ほらな」
「でも、黙られる方が嫌」
マナは膝の上の帳面を閉じる。
「何も知らないまま倒れられるのも、急に刻印が暴れるのも……そっちの方がずっと怖い」
「分かってる」
「その顔で言われても、信用できない」
「どんな顔だよ」
「一人で勝手に納得して、次も黙る顔」
向かいで聞いていたドレイヴが、鼻で笑った。
「いつもの顔だな」
「お前まで乗るなよ」
「なら、次はちゃんと言え」
アレンは二人の顔を交互に見た。
どうやら逃げ道は残されていないらしい。
「……分かった。言うよ」
「約束だからね」
「それ、前にも聞いた」
「何度でも言うよ」
マナはそう言って帳面を開き直すと、別の頁へ何かを書き始めた。
「今のも記録するのか?」
「これは症状じゃないよ」
「じゃあ、何だ?」
「約束」
「書かなくても覚えてる」
「アレンが忘れたときに見せるため」
「最初から信用されてないな」
「今までの行動を振り返ってみて」
アレンは何も言い返せなかった。
◇
四日目の昼過ぎ、馬車は深い森を抜け、緩やかな斜面を上り始めた。
雪は前日よりも厚く積もっており、車輪が深く沈むたびに馬車全体が大きく揺れる。
しばらく進むと、木々の隙間から雪を載せた尖った屋根と、白い湯気を吐く煙突が覗き始めた。
「見えてきました」
御者が荷台の三人へ声をかけた。
「あれがブランネリアです」
その言葉に、三人は揃って幌の外を見る。
雪に覆われた盆地の中には、灰白色の街が広がっていた。
周囲に高い城壁はなく、その代わり、街の外周には風雪を防ぐための低い石壁と、規則正しく並ぶ結界柱が設けられている。柱の先端では淡い緑色の魔法石が光を放ち、街へ吹き込む風を上空へと逸らしていた。
建物の多くは雪が自然に滑り落ちるよう、急な傾斜の屋根を備えている。屋根の排気口や煙突からは、暖房設備が吐き出す白い湯気が絶えず立ち上っていた。
街へ近づくにつれ、薬草の香りも次第に濃くなっていく。苦く青臭い匂いに、甘い花の香りや、鼻の奥を刺すような刺激臭が重なり、冷たい空気の中で複雑に混ざり合っている。
「……街中が薬臭えな」
ドレイヴが顔をしかめ、鼻を押さえた。
「苦手?」
「飯の匂いなら歓迎なんだけどな」
「薬の街で何を期待してるの」
そんなやり取りをしているうちに、馬車は街の入口へ辿り着き、剣や槍ではなく長い杖を携えた衛兵たちの検査を受けた。
衛兵は車輪や積み荷をひととおり確認すると、御者から差し出された紹介状を受け取り、静かに目を通していく。
やがて、アレンの名が記された箇所で、その目がぴたりと止まる。
「雷鳴の刻印者」
声は小さかったが、アレンの耳にははっきりと届いた。
衛兵は一度だけアレンの右手を見たものの、それ以上は何も尋ねず、紹介状を御者へ返した。
「北部療養区画への訪問許可は出ています。中央通りを進み、第三水路を越えた先です」
馬車が街へ入ると、中央通りには治療院と魔法薬工房が並び、店先から吊るされた薬草が冷たい風に揺れていた。
雪の中に設けられた温室は透明な結界膜に覆われ、その内側だけが春のような緑に満ちている。白い外套の治療師たちは、薬瓶や木箱を抱え、患者の間を絶えず行き来していた。
医療都市の名のとおり、街には病人や負傷者の姿が多く見られる。
腕に包帯を巻いた旅人や、杖をつきながら歩く老人。治療師に身体を支えられ、ゆっくりと足を運ぶ若い兵士の姿もあった。中には魔力障害を患っているのか、腕の皮膚が結晶のように変質した女性もいる。
それでも、街の中心部では人の声が絶えることはなかった。薬を売る商人の呼び声が響き、温室の間を子供たちが駆け抜け、屋根の雪を落とす作業員たちの笑い声が通りへこぼれている。
ルミノヴァほどの賑わいはない。それでも、ここには確かな暮らしが息づいていた。
馬車が北へ進むにつれ、そんな街の音も少しずつ遠ざかっていく。
工房は次第に数を減らし、やがて商店も姿を消した。さらに先へ進むと、民家さえほとんど見当たらなくなる。
代わって現れたのは、高い石壁と鉄柵に囲まれた大きな建物だった。窓はどれも小さく、魔力を遮断するための銀色の格子が隙間なくはめ込まれている。
門の両脇には武装した連邦兵が立ち、外壁には治療院を示す水の紋章が刻まれていた。その上には、まるで紋章そのものを封じ込めるかのように、黒い円環が重ねられている。
「ここが療養施設なのか?」
ドレイヴが低い声で尋ねる。
御者は前を向いたまま答えた。
「ブランネリア北部魔力障害療養院です」
療養院――その言葉から思い描いていたものと、目の前の建物はあまりにもかけ離れている。
ここは治療を受けるための場所というより、何かを外へ逃がさないための施設に見えた。
やがて重い門が開き、馬車はゆっくりと鉄柵の内側へ進んでいく。
◇
療養院の玄関で三人を迎えたのは、白髪交じりの女性治療師だった。
エルザと名乗った彼女は、五十を越えているように見えたが、背筋は真っ直ぐに伸び、穏やかな眼差しの奥には油断のない鋭さがある。
「ケイム・ホグナーから話は聞いています」
紹介状を確認しながら、エルザは言った。
「アレン・ライオネットさんですね」
「はい」
「こちらが、マナ・ナックドールさん。ドレイヴ・グレバーさん」
二人もそれぞれ頷くと、エルザはあらためて三人の装備へ目を巡らせた。
「中では、魔法を使わないでください」
エルザは三人を順に見る。
「攻撃魔法はもちろん、治癒魔法もです」
「治癒も?」
マナが眉を上げる。
「魔力に過敏な患者がいます。助けるつもりでも、かえって悪くすることがあるんです」
「……分かりました」
「それから、武器はこちらで預かります。杖など、魔法の補助具もです」
その言葉に、ドレイヴは反射的に背負った大剣を見やった。
「そこまで必要か?」
「決まりです」
「見舞いに来ただけだぞ」
「見舞いであっても、規則は変わりません」
エルザの声に揺らぎはなかった。
「気持ちが乱れただけで、周りの魔力まで引きずる患者もいます。武器や魔法具まで患者の魔力に反応すれば、こちらでは止めきれません」
ドレイヴの表情が険しくなる中、アレンは腰に下げた双剣を見下ろした。
ハルヴァは風の刻印者であり、離れた場所にある物さえ動かせると聞いている。ならば、ここでは剣を預けた方がいいのだろう。
そう考えて鞘ごと腰から外そうとしたところで、エルザが静かに手を上げて制した。
「アレンさんの双剣は、そのままで結構です」
アレンは腰帯へかけた手を止める。
「俺だけ?」
「ハルヴァさんが、そうしろと」
三人は思わず顔を見合わせた。
「俺たちが来るって、知ってたのか?」
「ええ。数日前から」
「ケイムが知らせたんじゃないのか?」
「ケイムさんの連絡が届いたのは、そのあとです」
ドレイヴが眉をひそめる。
「じゃあ、どうして――」
「近いうちに、双剣を携えた少年が来る。その少年だけは、武器を持たせたまま部屋まで通せ――そう言っていました」
エルザはそれだけを告げ、説明を加えなかった。
ドレイヴは不満そうな表情を崩さないまま大剣を預け、マナもそれに続いて杖を係員へ手渡した。
そうして三人は、アレンだけが双剣を腰に下げたまま、施設の奥へと案内される。
廊下は、外の寒さが嘘のように暖かかった。壁の内部には温められた水が流れており、その熱を床や部屋へ伝える仕組みになっているらしい。
だが、暖かな空気の中には、薬品と金属の匂いがかすかに漂っている。
廊下にはいくつもの扉が並んでいたが、扉に患者の名前はなく、数字と属性を示す記号だけが記されている。
火、水、風、光――中には、アレンの知らない紋様も混じっていた。
三人がその前を通り過ぎようとしたとき、不意に一つの扉の向こうから激しい物音が響いた。
金属が大きく歪む音に続き、獣の唸り声にも似た低い叫びが廊下へ漏れ出す。
マナが思わず足を止めた。
「今のは……」
「進んでください」
エルザは振り返らずに先を促した。
その直後、廊下の奥から複数の職員が駆けつけてくる。全員が同じ白い外套をまとっていたが、その下には防護具を身につけ、手には封止符と魔力遮断用の鎖を携えていた。
やがて扉が開き、青白い光が一瞬だけ廊下へ漏れ出した。だが、中の様子を窺う間もなく、扉はすぐに閉ざされる。
それでもエルザは足を止めず、まるで何事もなかったかのように歩き続けた。
「ここにいるのは……患者なんですよね?」
アレンが、閉ざされた扉を見ながら尋ねた。
「ええ」
「それなら、どうして鎖まで?」
「病人だからといって、危険がないとは限りません」
エルザは歩みを緩めない。
「ここでは患者を守ります。同時に、患者から外の人々を守ります」
「ハルヴァも?」
エルザの歩みがわずかに遅くなった。
「ハルヴァさんは、この施設で最も長く暮らしている患者です」
「危険なのか?」
「刻印者を前にして、絶対に安全だと言い切れる人がいるでしょうか」
そう問い返され、アレンは言葉を失う。
だが、エルザの声に責めるような響きはない。ただ、目の前にある事実を静かに口にしただけだった。
「ハルヴァさんは、これまで一度も職員を傷つけていません。暴走した患者を止め、何人もの命を救ったこともあります」
「だったら、どうして――」
エルザはすぐには答えなかった。
「一度も傷つけていないことが、明日も傷つけない証明にはなりません」
エルザは足を止め、アレンを振り返る。
「それは、あなたも同じでしょう」
アレンの右手が、無意識のうちに強張った。
反論はできない。一か月前、彼は自らの意思とは関係なく、仲間へ向けて雷を放った。たとえ本人にそのつもりがなかったとしても、起きてしまったことまで消えるわけではない。
その表情から何かを察したのか、エルザはわずかに声を和らげた。
「私たちは、刻印者を恐れて備えているのではありません」
彼女は言った。
「恐れないことと、備えないことは違います」
その言葉は、どこかリヴァの教えに似ていた。
一行はさらに施設の奥へ進んでいく。
やがて廊下の窓は途切れ、天井に並ぶ魔法灯だけが長い通路を白々と照らすようになった。
その突き当たりには、他の部屋とは明らかに異なる大きな扉が設けられていた。分厚い鉄板で補強された表面には、外側から三重の封止術式が刻まれている。
扉の前には二人が立っていた。一人は白い外套をまとった治療師で、もう一人は剣を携えた連邦兵だった。
エルザが近づくと、二人は揃って深く頭を下げる。
「ハルヴァさんの様子は?」
「落ち着いています」
治療師は扉へ目を向けた。
「朝から呼吸も乱れていません。魔力の流れも、今のところ問題ありません」
「訪問者については?」
「お通しするように、と」
治療師はアレンたちを見た。態度は丁寧だったが、一定の距離から先へ近づこうとはしなかった。
「一つだけ、必ず守ってください」
エルザが低い声で言った。
「室内で何が起きても、抵抗せず、魔力も集めないことです」
ドレイヴが眉をひそめる。
「何かあっても、か?」
「命に関わると判断したら、こちらで止めます」
「……止められるのか?」
「止めます。そのために、複数人で対応しています」
エルザを含む三人の監視に、分厚い鉄扉と三重の封印。どれも、一人の病人と面会するための備えとは思えなかった。
エルザが封止術式へ手を当てると、重なっていた三つの光が、一つずつ静かに消えていく。
やがて最後の封印が解かれ、重い錠が外れた。
鉄の扉が、低い軋みとともにゆっくりと開いていく。
その隙間から、窓のない廊下へ細い風が流れ込んだ。
風がアレンの脇をすり抜ける。
腰の双剣が、応えるように小さく鳴った。




