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神殿に戻った私はシェフィールドがどこにいるか魂を探り、そこまで転移した。
「うおっ!?」
「大丈夫?怪我はしてない?」
無理やり屈ませておでこにおでこを当てて体内を探ってみるけど、怪我はないようで安心した。
「いや、こっちの台詞!」
「うん?」
「大丈夫だったか?」
「うん、花を咲かせてきたよ」
心配そうな目を見て、くすりと笑みが零れた。
「大丈夫」
「それならいいんだ…」
手を伸ばすと屈んでくれたから頭を撫でる。
可愛い我が子に心配させちゃったみたい。
「シェフィールドには傷一つつけさせない」
「そんなにヤワじゃねぇよ」
人間は簡単に死ぬ。
私から見たら“ヤワ”に見えるけど、あの子の加護があるから大事にはならないだろう。
「そうだ、寿命が最初からないモノを作るにはどうしたらいいと思う?」
「難しいな…物だっていつかは劣化する」
そうだよねぇ。
魔法陣だって使い終わると消える。
紙だって空間収納に入れておかなければ風化する。
でも、出来るはずだ。
だって私が存在している。
神々が存在している。
寿命がない者がいるのは確か。
「ああ…!こんなところで飲みださない!」
「ん、戻る」
「そうしてください」
廊下でいつものように座り考え込んでいるとお叱りが届いた。
部屋に戻り、定位置になっているソファに座ろうとしたけどやめた。
ラグにあぐらをかいて座り、酒を煽る。
精霊の魂のようなカケラ、きっとあれが問題だ。
魂じゃないから移動ができないと思ってみよう。
魂を与えることは無理。
それならば今の姿で新しい世界に運び出さなければならない。
実験がしてみたいけど、世界から離れた瞬間消滅するのだから軽々しく実験もできない。
カケラを保護する?
世界の魔力を纏わせたカケラなら移動できる…ううん、それは駄目。
あちらに着いた時、世界の魔力は消える。
そうしたら精霊までも消えてしまうだろう。
消滅まで数十年しかない。
世界の移動か、寿命のない世界を創る。
それとも全く異なるやり方で回避はできるのだろうか。
「もう!聖女様!」
「せめて散歩くらいしましょう」
「ん?」
カーラとシェフィールドが部屋に入ってきた。
最近はカーラだけが部屋に入ってきたのに珍しいなと思っていたら叱られた。
「飲んでない時はありませんの!?」
「体壊しますって」
あれから何日経ったか分からないけど、痺れを切らした二人に手を引っ張られ強制的に立ち上がった。
「お酒はしばらく禁止ですわ!」
「綺麗な花畑になってるんですよ?せめて歩きたいとか思わないんですか」
適度な食事と適度な飲酒量、適度な運動について懇々とお説教されてます。
「私は大丈夫だよ?」
「その言葉だけは信用なりませんわ」
「俺、毎日歩いてるんですよ。いい気分転換になりますよ」
背中を押されて庭に出る。
二人が後ろを着いて回るらしく、1時間は歩けと言われた。
色々考えたけど、この世界の寿命をなくす方がいい気がする。
思い付いた実験をする時、精霊を使うのではなく世界を使った実験の方が害は少ない。
「もう!」
「聖女様!」
「ん?」
「「座らない!!」」
どうやら座ってはいけないらしい。
仕方ないから腰を上げてまた歩き出すけど、考え事をしていると足が止まる。
「そうだわ、街歩きでもしませんか?」
「どうして?」
「俺もその方がいいと思う、聖女様部屋に閉じこもってばかりだし」
街歩きかぁ…。
いつも我が子たちを連れて人間世界に降り立ったりするけど、神聖なオーラが邪魔してまともに物を買えなかったりするんだよね。
人間に案内してもらえばそんなことはなさそう。
「やめとく」
でもそれは今じゃない。
今するべきことは世界を考えることだ。
「我の誘いも受けぬか」
後ろを振り向くとコンラッドが居た。
「今はいいや」
「そう言うな、我に付き合ってくれ」
カーラとシェフィールドがしゃがんでる。
どうしたんだろう?
「なに、神殿とあまり縁がない人生でな。この際だ、案内してくれ」
「神殿内のことなら詳しくないよ?部屋に居るだけだし」
「この美しい庭なら案内できるだろう?」
満開の花が咲き乱れるここなら私でも案内できるのかな?
「このように美しいとは思わなんだ」
辺り一面の花畑を眺めて目を細めてる。
私の横に来たコンラッドはゆっくりと歩みを進めるので、私も自然と歩き出す。
「初めて葉のあるサラダを食べた」
「美味しかった?」
「ああ、実りとは素晴らしいものだな」
いつもそんな顔をしてればいいのに。
「部屋にばかりいて息が詰まらぬか」
「そんな気持ちになったことはないかな」
居場所はいつだってキラキラと輝いている。
「ここに神が来たのか」
ここじゃないかな?もう少し手前の方だったよ。
「どのようなお姿だ」
「んー、宴会にいると端の方にいつも座るよ。たまに私の元に来ては世界を生み出した感謝を伝えてくれるの。最近はあまり見かけなかったけど、友達と遊んでるのは楽しそう」
「なにを言うておる」
「あの子のことだよ?」
「はぐらかしておるのか」
そんなことはしてない。
ただ事実を伝えただけ。
「なにを隠し立てしたいのかは分からぬが、偽りはいつか崩れるぞ」
「なにも隠してないよ。偽りを持つ人がいるならば、偽りを貫き通せばそれが現実になる」
「…」
偽ることも悪い事じゃない。
どう偽るかが大切だと私は思うよ。
「その現実に巻き込まれる方の身にもなれ」
「それは偽りだと気付いている人の言い方だね」
「偽りでないと言うのか」
「なんのことだろ?私は嘘ついてないよ」
制服を着た人達が随分と多い気がする。
「我も嘘だとは思えない」
見上げると凛々しい表情が見えた。
「だがそれは我の気持ちだ」
まるで真意を探っているような目。
「お前が嘘をつく人間に思えなくてな」
コンラッドは全て勘違いしている。
私が人間という勘違いも、運命だということも、私の目的も。
どう伝えたら分かってくれるんだろう。
どう行動したら理解してもらえるんだろう。
果たして私は信じてもらいたいのかな。
「どうやら庭はここまでらしい」
私でも案内ができたみたい。
「お前の顔を見に来ただけ」
風が止んだ。
「そう、言えたら良かったがな」
静寂が訪れ、花の匂いがやけに感じ取れる。
「聖女は国預かりとした」
コンラッドがそう言うと、私の周りを制服を着た人達が囲った。




