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私を庇うようにカーラとシェフィールドが前に出た。
制服を着た人達は硬い目付きでこちらを見ている。
どうしてかコンラッドの表情が気になって見上げると、目を逸らされた。
「聖女は神殿には余る人物だ」
嫌に声が響く。
「大地を潤し、神と会話し、世界の行く末を、まるで未来視のように感じ取っている」
神殿の者達が集まってきた。
「今から聖女は聖女でなくなり、預言者として城に連れ帰る」
ザザッと大勢の足音がした。
制服を着た人達が近付いてくる。
「お言葉ですが──」
「我は発言を許していない」
シェフィールドが話そうとしたけれど、叶わなかった。
「臣下と共に決定した」
やっと目が合った。
冷徹な目と。
「預言者は国のモノとする」
制服を着た人達が得物に手を重ね、魔力を練った。
「退け」
シェフィールドとカーラに伝えた言葉は酷く冷たかった。
「「聞けません」」
コンラッドは顎を動かした。
「これを退かせろ」
一歩、制服を着た人が近付いた。
もう一歩、近付いた。
そして、シェフィールドの腕を掴もうとした。
パシッ。
「なにをしようとしているの」
その腕を掴んでシェフィールドに触らないように前に出た。
「約束が違う、この人達は近付けさせないようにしたはず」
「状況が変わった」
「シェフィールドを傷付けない約束をした」
「神の件ではな、お前を引き渡さないとしている行動での約束はしていない」
約束を反故にされた。
そして気付く。
コンラッドの言う事は信用していたのだと。
コンラッドが約束してくれたなら安心だとも思っていた。
「嘘つきは一体どちらなのか」
「…」
嘘をつかれた。
そのことが想像以上に心に響く。
「伝えたはず、私の居場所は神殿だと」
「了承していない」
「この子たちの気持ちを無駄にするの?」
「気持ちなど今は重要ではない」
なにも信じられない。
目を離した隙にシェフィールドが傷付いてしまうかもしれない。
「シェフィールド」
「…はい」
「屈んで」
「はい」
おでこにおでこを当てて、言の葉を届ける。
「守護たる力を授けよう、悪意ある者決して近付くことなかれ。何人たりとも傷付けること叶わず」
加護を授けてしまおう。
あの子の加護だけでは不安だ。
もっと強力な加護を。
パアァァァ………!
加護を授けた瞬間、神殿中に、ううん、世界中に眩い光を放った。
「っっ、な、これ、加護じゃっ、」
「シェフィールド、利用しないなどとは言っていられない。なにかあればすぐにあの子を呼びなさい」
「あんた一体………」
「返事は」
「は、はい!」
シェフィールドを守るように立ち、コンラッドを見つめた。
「今のはなんだ………?」
呆然としているのはコンラッドだけじゃない。
ここにいる人間全てが唖然としている。
「今一度言う、私の居場所はこの子たちが作ってくれた。私はその気持ちを大切にしたい。………それでも尚、私の居場所を奪うつもり?」
「…」
悲しげな表情を落とした。
でもすぐに冷淡な目を私に向けた。
「我も今一度伝えよう。お前は聖女ではなくなり、預言者となった今、お前の居場所とやらは城になった。これは決定事項だ」
騙された気分になる。
信じてしまっていたからこそ、胸が………
「心が痛いね」
「っ………」
痛む。
「シェフィールドには手を出さないで」
一歩前に進んだ。
そして自分の足で神殿から出るように、歩みを進めた。
「聖女様!」
私の後ろを着いてくるのは口煩い二人じゃない。
制服を着た人達、そしてコンラッド。
最後にチラリと私の部屋がある方へ視線を向ける。
大丈夫だよ。
絶対に戻るからね。
私の為に誂えてくれたあの部屋に。
「…手を貸そう」
「いらない」
「…そうだろうな」
籠の前でコンラッドから差し出された手を見なかったことにした。
中に入るとすぐに出発した。
シェフィールドなら大丈夫。
今考えることはコンラッドの裏切りでもない。
世界の消滅について考えよう。
それが今の私にできること。
私は今日から城に住むらしい。
それくらい分かる。
降りた先は前も来た大きな両扉の前。
前回と違うのは、シェフィールドもカーラも居ないこと。
少しだけ胸の奥が落ち着かなかった。
いつも隣に居た二人が居ないだけで、こんなにも静かなのか。
この先では皇帝陛下と呼ばれているコンラッドが待っていると言われた。
さっきも会ったのにね。
扉が開いた。
その先には椅子に座っているコンラッドが居た。
コツ…
歩き出した道の左右にはたくさんの人が居る。
痛い程に視線を感じるけれど、構わず足を動かした。
「此度は神殿から我が城へと参った感謝を伝えよう」
嘘は悪いことじゃない。
「これからは預言者として力を貸してくれるな?」
嘘をつかれるのも大したことではないはず。
だって嘘をつくということは、そこに必ずしも理由があるから。
その気持ちを汲み取ってあげたい。
そう…子どもたちには思っていた。ううん、今でも思っている。
「私は助ける為にここへきた」
でも………どうしてかな?
コンラッドにはそう思えないんだ。
「することは変わらない」
胸がズキズキする。
「それで構わぬ」
どうしてか目を逸らしたくない。
見て欲しい。
私の真実を見て、知って欲しい。
「お前の為に色々と誂えた、ゆっくりと過ごしてくれ」
でも、コンラッドは信じない。
背を向けた。
これ以上、見たくなくて。
私が歩き出した先を歩くのは見知らぬ人間。
煩い声も、心配する声も、
ない。
あるのは煩わしい視線だけ。




