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「どうせならここで茶にしよう」
大木がある庭のガゼボを指差された。
ガゼボに座ると、誰かが茶器を触り出した。
「まだ新しい茶葉は摘んでないんでしょ?」
「ああ、くれるか」
「なにが好き?」
「緑茶はあるか?」
「あるよ」
茶葉を出してポットに入れていく。
私の手元をじっと見つめているコンラッドは楽しそうだ。
「はい」
「頂こう」
涼やかな風が吹いているこの場所では緑茶が尚、美味しく思える。
「他世界はこんなにも美味いのか」
「寿命によるけど」
私が魔力を大地に広げなければ徐々にマズくなる。
でも、天界と淫魔世界と悪魔世界は消滅しない。
ん?どうして消滅しないんだろう?
いつだってあの世界達は艶やかで寿命を感じたことはない。
ここを天界にすればいいの?
でも…あの世界たちは私が生まれた時には存在していた。
その後、神々が生まれ人間世界が生まれた。
だから私は天界の創り方を知らない。
「お前を国預かりとする」
「ん?」
「このような力があるのだ、神殿ではなく国で抱えることになるだろうよ」
「居場所のこと?」
「ああ」
私の居場所は我が子が作り上げてくれた。
「どうしてそんなことをするの?」
「なにか不都合でもあるのか」
「私の為にとあの子が居場所を作ったんだよ、シェフィールドだって協力してくれた。それなのにどうしてそんなことを言うの?」
「あの子とは誰だ」
「神でしょ?」
「神と話したとでも?」
「話したよ」
あの子とは最近、話をしてなかった。
助けを求めてくるまでは。
もしかしたら翻弄してたのかもしれないね。
世界の消滅をなくそうと、頑張ってたのかも。
「本音だな」
「嘘なんてついてないもん」
目付きが変わった。
ドロドロとした目に。
「国ではなく我に囲われてくれぬか」
「どうして?」
「傍にいて欲しい」
「遊びにきたらいいじゃん」
「……ふっ、あくまで神殿に身を落とすか」
探りの目に戻ったコンラッドは美味しそうに緑茶を飲み干した。
次を注ぐと目を細めた。
「他の物が味気なく感じてしまいそうだ」
「大丈夫だよ、今の大地を頂けば美味しい物になるから」
「楽しみだ」
味気ないと言われて私まで味気なさを感じてしまった。
大木は美しいけれど、足元にも花が欲しい。
この場所はそうした方が美しいだろう。
ちょっとだけ成長させちゃおうかな。
「…」
靴を脱いで地面にペタっと座る。
周辺の草だけに魔力を与えると、花が咲いた。
緑ばかりだった景色に彩りが追加された。
「こんなものかな?」
「…」
ガゼボの周りだけ花を咲かせた。
早くに芽吹いてしまったから花が驚いている。
「ごめんね」
「…」
でも、どうしてもこの場所は花が咲き乱れる場所にしたかった。
靴を履き、ガゼボに座ると厳しい目をしたコンラッドが目に入った。
「なぜ咲かせた」
「ここは花があった方がいいなって思っちゃった」
「…」
「コンラッドの言う通り、味気ない場所にしたくなかったの」
「そうか」
緑茶を飲むと花の香りが鼻につく。
決して喧嘩しないような、控えめな匂いが。
「いつその力に気付いた」
「どうだろ?」
度々、神々に頼まれて色々なことをしてきた。
その中で出来ること、出来ないことを理解していったからいつ気付いたかは分からない。
「神殿に身を寄せるのは訳があるのか」
コンラッドは分かっていない。
私をまだ嘘つきだとも思ってる。
だからなにを言っても通じないんだろう。
だってもう言ったもん。
神殿は私の居場所だと。
それなのに他の理由が必要みたいに聞いてくる。
「嘘つきでいいよ」
「…」
「信じられないんでしょう?私は嘘つきだと思われても構わないよ」
「…」
嘘をつくことが悪いとも思わない。
でも、ここに居る人達は違う。
嘘を許さないというような視線を送る。
「お前を信じたい」
意思の強い目だと思った。
「だが我は、その言葉を素直に受け取れるような立場ではない」
目を伏せ、どこか我慢しているような表情をする。
「信じさせてくれ」
「真実しか話していないよ?それを嘘だと思うのはコンラッドの問題だよ」
「…そうかもしれぬな」
背もたれに寄りかかったコンラッドは少し疲れているようだった。
「我の気持ちだけで動いていいのならお前を囲い、城から出さぬようにしたい」
想像以上に甘い声だった。
「だが今はここまでにしておこう、運命に嫌われたくはないからな」
まだ勘違いしているのかと驚いた。
「ああ、最後に種族を教えてくれぬか」
「ないよ」
「ない?」
人間には魔人、鬼人、獣人、竜人の種族がいる。
コンラッドは竜人。
竜人なら体の一部にウロコがある。
そのウロコは隠されているけれど、魂を見れば種族は分かる。
私の魂はそのどれもに当てはまらない。
神々とも異なる。
「ウロコもないのか?」
「あるよ?はい」
「…」
ウロコを取り出したら驚かれた。
「ならば竜人だろうよ。どうウロコを取ったのかは謎だがな」
「竜人じゃないよ、コンラッドとは違う」
「他の種族の心体的特徴が見当たらん」
ああ、そっか。
私は人間だと思われているのか。
鬼人なら頭の上にツノが、魔人ならツノか翼が、獣人なら頭の上に獣の耳と尻尾がある。
見えない特徴を持つのは竜人くらいだ。
「人間じゃ──」
「まぁよい」
コンラッドは立ち上がり、大木を眺め、花々を眺めている。
「必ずお前の出生を暴いてみせる」
そう言って立ち去った。




