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世界様の運命の相手は皇帝陛下でした  作者: ユミグ


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8


「どうせならここで茶にしよう」


大木がある庭のガゼボを指差された。

ガゼボに座ると、誰かが茶器を触り出した。


「まだ新しい茶葉は摘んでないんでしょ?」

「ああ、くれるか」

「なにが好き?」

「緑茶はあるか?」

「あるよ」


茶葉を出してポットに入れていく。

私の手元をじっと見つめているコンラッドは楽しそうだ。


「はい」

「頂こう」


涼やかな風が吹いているこの場所では緑茶が尚、美味しく思える。


「他世界はこんなにも美味いのか」

「寿命によるけど」


私が魔力を大地に広げなければ徐々にマズくなる。

でも、天界と淫魔世界と悪魔世界は消滅しない。

ん?どうして消滅しないんだろう?

いつだってあの世界達は艶やかで寿命を感じたことはない。

ここを天界にすればいいの?

でも…あの世界たちは私が生まれた時には存在していた。

その後、神々が生まれ人間世界が生まれた。

だから私は天界の創り方を知らない。


「お前を国預かりとする」

「ん?」

「このような力があるのだ、神殿ではなく国で抱えることになるだろうよ」

「居場所のこと?」

「ああ」


私の居場所は我が子が作り上げてくれた。


「どうしてそんなことをするの?」

「なにか不都合でもあるのか」

「私の為にとあの子が居場所を作ったんだよ、シェフィールドだって協力してくれた。それなのにどうしてそんなことを言うの?」

「あの子とは誰だ」

「神でしょ?」

「神と話したとでも?」

「話したよ」


あの子とは最近、話をしてなかった。

助けを求めてくるまでは。

もしかしたら翻弄してたのかもしれないね。

世界の消滅をなくそうと、頑張ってたのかも。


「本音だな」

「嘘なんてついてないもん」


目付きが変わった。

ドロドロとした目に。


「国ではなく我に囲われてくれぬか」

「どうして?」

「傍にいて欲しい」

「遊びにきたらいいじゃん」

「……ふっ、あくまで神殿に身を落とすか」


探りの目に戻ったコンラッドは美味しそうに緑茶を飲み干した。

次を注ぐと目を細めた。


「他の物が味気なく感じてしまいそうだ」

「大丈夫だよ、今の大地を頂けば美味しい物になるから」

「楽しみだ」


味気ないと言われて私まで味気なさを感じてしまった。

大木は美しいけれど、足元にも花が欲しい。

この場所はそうした方が美しいだろう。


ちょっとだけ成長させちゃおうかな。


「…」


靴を脱いで地面にペタっと座る。

周辺の草だけに魔力を与えると、花が咲いた。

緑ばかりだった景色に彩りが追加された。


「こんなものかな?」

「…」


ガゼボの周りだけ花を咲かせた。

早くに芽吹いてしまったから花が驚いている。


「ごめんね」

「…」


でも、どうしてもこの場所は花が咲き乱れる場所にしたかった。


靴を履き、ガゼボに座ると厳しい目をしたコンラッドが目に入った。


「なぜ咲かせた」

「ここは花があった方がいいなって思っちゃった」

「…」

「コンラッドの言う通り、味気ない場所にしたくなかったの」

「そうか」


緑茶を飲むと花の香りが鼻につく。

決して喧嘩しないような、控えめな匂いが。


「いつその力に気付いた」

「どうだろ?」


度々、神々に頼まれて色々なことをしてきた。

その中で出来ること、出来ないことを理解していったからいつ気付いたかは分からない。


「神殿に身を寄せるのは訳があるのか」


コンラッドは分かっていない。

私をまだ嘘つきだとも思ってる。

だからなにを言っても通じないんだろう。

だってもう言ったもん。

神殿は私の居場所だと。

それなのに他の理由が必要みたいに聞いてくる。


「嘘つきでいいよ」

「…」

「信じられないんでしょう?私は嘘つきだと思われても構わないよ」

「…」


嘘をつくことが悪いとも思わない。

でも、ここに居る人達は違う。

嘘を許さないというような視線を送る。


「お前を信じたい」


意思の強い目だと思った。


「だが我は、その言葉を素直に受け取れるような立場ではない」


目を伏せ、どこか我慢しているような表情をする。


「信じさせてくれ」

「真実しか話していないよ?それを嘘だと思うのはコンラッドの問題だよ」

「…そうかもしれぬな」


背もたれに寄りかかったコンラッドは少し疲れているようだった。


「我の気持ちだけで動いていいのならお前を囲い、城から出さぬようにしたい」


想像以上に甘い声だった。


「だが今はここまでにしておこう、運命に嫌われたくはないからな」


まだ勘違いしているのかと驚いた。


「ああ、最後に種族を教えてくれぬか」

「ないよ」

「ない?」


人間には魔人、鬼人、獣人、竜人の種族がいる。

コンラッドは竜人。

竜人なら体の一部にウロコがある。

そのウロコは隠されているけれど、魂を見れば種族は分かる。

私の魂はそのどれもに当てはまらない。

神々とも異なる。


「ウロコもないのか?」

「あるよ?はい」

「…」


ウロコを取り出したら驚かれた。


「ならば竜人だろうよ。どうウロコを取ったのかは謎だがな」

「竜人じゃないよ、コンラッドとは違う」

「他の種族の心体的特徴が見当たらん」


ああ、そっか。

私は人間だと思われているのか。

鬼人なら頭の上にツノが、魔人ならツノか翼が、獣人なら頭の上に獣の耳と尻尾がある。

見えない特徴を持つのは竜人くらいだ。


「人間じゃ──」

「まぁよい」


コンラッドは立ち上がり、大木を眺め、花々を眺めている。


「必ずお前の出生を暴いてみせる」


そう言って立ち去った。


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