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世界様の運命の相手は皇帝陛下でした  作者: ユミグ


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5


静寂を破ったのは金の色味を纏う男だった。


「神殿に調査を入れる」


そう言い、椅子に戻っていった。


「だが聞け」


男は周囲を見渡した。


「聖女は間違いなく我の運命。傷付けることは許さん」


どうしてまだ勘違いしたままなんだろう?と首を傾げていると、「はっ!」という大勢の声が聞こえた。


「参りましょう」


カーラに言われてその場を後にする。


背中を向けているのに、あのドロドロとした視線を感じた。


籠に乗り込むと、はぁー…と息を吐いたのはシェフィールド。

なんだかぐったりしてる。


「な、なんですか!?」


座っているシェフィールドに乗り上げて頬を掴んだ。

そのままおでこにおでこを当てて体調の不具合を治した。


パァ…と籠内が光った。


「……あ、ありがとう」

「ううん、あんまり無理しないでね」


席に戻るとシェフィールドが頬をかきながら話し出した。


「治癒も出来るんだな」

「体がおかしかったら言ってね、シェフィールドは大切な子なんだから」

「?あ、ああ」


子どもの健康は大切にしなくちゃね。


「なぜ花を咲かせなかったのですか?」


カーラは心底不思議そう。


「だってこれ以上咲いたら苦しくなっちゃうじゃん」

「花が?」

「うん」

「そうなのですね…」

「人がたくさんいたら息苦しいでしょ?」

「ふふっ、そうですわね」


なんだか果実水が飲みたくなって、空間収納から取り出した。

水瓶から3つのグラスに注いで二人に渡した。


「まぁ……」

「うわっ!うまっ!」


そうだった。

この世界ってなにもかもがマズイんだよね。


「とても美味しいですわ」

「なら良かった」

「ほんとにうめぇ!」


すぐに飲み干した二人にもう一度、注いだ。


「そうだわ、食事がまだでした」

「わりぃ!忘れてた!」

「ん?」

「お腹が空いたでしょう?すぐに用意しますわ」

「んー…今はいいや」


食べたい気分じゃない。


「ですがなにも食べておりませんよ?」

「いらない、それよりお風呂に浸かりたい」

「かしこまりました、でしたら朝食は多めに作りますね」


お風呂に浸かって洗い流したい気分だ。

一度頭をリセットして考えたい。

精霊が世界に囚われている理由を。


神殿に着くと、すぐに部屋へ向かった。


「そうだ…」

「どうされました?」


服を脱ぐのも側仕えの仕事らしくカーラに脱がせてもらっている。


「あの絵、欲しい」

「難しいかと」

「どうして?あれ以外ないの?」

「いえ、あの画家は皇帝陛下の気に入りなのですわ。お抱えになっているかと思います」

「お抱え?」

「皇帝陛下以外にはお渡ししていないかと」

「それは残念」


いつか画家に会ったら言ってみよう。

私を渦で表して欲しいと。


「ん?」

「なにか違いましたか?」


お風呂に入ると想像より小さくて驚いた。

いつも天界にある露天風呂に入ってたからかな?


「んーん」

「お体を磨きますわ」

「ありがとう」


体を磨いた後、お風呂に浸かった私の体を揉もうとしたからそれは断り、一人で浸かってた。


世界に囚われている精霊。

まずは精霊の基礎から思い出そう。

私や神々、人間とは異なり精霊は世界から魔力を吸い取っている。

無尽蔵に思える力は神にさえ敵う。

そして唯一、魂がない存在。

魂がある心臓の部分には鉱石のような輝きを放つ欠片がある。

そう、そうか。

召喚魔法は魂ある者を運ぶ。

魂がない精霊は移動ができない。

例え神が天界に招こうとも。


「ヘックシュン!」


さ、寒い…!

お風呂って冷めていくんだ………


上がろ。


そういえば寝室はどんなのだろう?

髪を魔法で乾かした後、続き部屋になってる扉を開けた。


「ふふっ」


真っ白なシーツに、真っ白なブランケット。

そして色鮮やかなクッションがたくさんあった。


本当に我が子は可愛い。


たくさん私のことを考えてくれたんだね。


いつか眠る時のことを考えて扉を閉めた。

今はまだ眠れない。


消滅を回避できるまでは。


部屋のソファに座り、紅茶を淹れて一息つく。


コツン…


「?」


窓が叩かれた音がして振り向くとカーテンの隙間から金色が見えた。

近付いてカーテンを開けると、


金の色味を持つ男が居た。


窓を開けると優しげな表情に変わる。


「聞き忘れたことがあってな」

「なあに?」

「名を教えてくれ」


名前を聞きに来たのかな?


「セラフィーナ」


嬉しそうに目を細めた。


「セラフィーナ……黒の髪に黒の瞳を持つお前に相応しい名だ」


手を伸ばされたから警戒していると、その手は触れず、頬ギリギリのところで止まった。


「我はコンラッド・リンスコット」

「コンラッド?」

「ふっ、ああ」


笑うと手を下ろし、空間収納から一枚の紙を取り出した。

魔法陣のようで、読み解いてみると転移魔法だった。


「おやすみ」


手元ばかり見てた私に投げかけられた言葉が気になって上を向くと、目の前から消えた。


「………おやすみ?」


不思議だ。


聞き馴染みある言葉なのに、なぜか少しだけ気になった。


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