第二十九話「布団から出られない夜、あるいは思春期における不可抗力について」
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第二十九話「布団から出られない夜、あるいは思春期における不可抗力について」
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不可抗力、という法律用語がある。
人間の努力や注意ではどうにもできない、外部からの力によって引き起こされた事態のことを指す。台風、地震、戦争——それらは不可抗力として法的に扱われる。責任は問われない。なぜなら、どうしようもなかったからだ。
思春期の男子の身体に起きることの一部も、不可抗力として定義されるべきだ。
断じて自分の意思ではない。
望んで起きたことでもない(完全に嘘ではないが、少なくとも時と場所を選んで発動させる制御装置がついていない)。
これは進化の産物であり、ホルモンの産物であり、ヒト科の宿命だ。
陰キャに帰責事由はない。
そう主張したい。
以上が、この話の冒頭に書かれなければならない免責条項だ。
*
二十二時を過ぎた夜。
谷瀬荘の女子大部屋。
「ねえ、ちょっとだけ正直な話していい?」
その一言が発せられた後、空気の種類が変わった。
「正直な話」という言葉は、それまでの話が正直ではなかったことを前提にしている。あるいは、これからの話が今まで言えなかった本音であることを示している。どちらの意味でも、場の空気は変化した。
一年生の女子たちが少し身を乗り出した。
二年生の女子たちのうち何人かが、口元に笑みを浮かべた。
「なに? 何の話?」とのんが言った。のんの好奇心のアンテナは、「正直な話」という言葉に反応して最大出力に達していた。
話し出したのは、二年生の女子だった。
「気になる人、いる?」
あ、と思った。
この方向性だ、と思った。
「いるいる! あたし言う!」とのんが即座に反応した。陽キャの反射速度は話題の種類に関係なく一定だ。
「のんは?」
「えーとね——」
のんがある男子の名前を言った。同じ中学の同級生で、今は別の高校に進んだ人間の名前だった。
僕はその名前を知らない。しかし名前の響きから察するに、おそらく陽キャだ。陽キャは陽キャを好む。これは嗜好の問題ではなく、生活圏が重なっているから自然に発生する確率論の帰結だ。
話がリレーされていった。
一人が言うと、次の人が言う。
その話題の輪の中に、男子は三人いた。
村田先輩は、しばらくして「俺は先に寝る」と言って立ち上がった。三年生の余裕だった。三年間で既に経験済みの催しを、わざわざ三回目にやる必要はない、という判断だろう。
林先輩は、黙って端の方に座っていた。黙って座っているのが、林先輩なりの存在証明だった。林先輩は消えない。黙っているが、存在する。
僕は——布団に入っていた。
いつの間に布団を持ってきたのか定かではないが、誰かが布団をしっかり敷いて、気づいたら僕は横になっていた。
話が続いていた。
主に二年生の女子たちを中心に。話の内容は、最初の「気になる人いる?」から始まって、徐々に具体性を帯びていった。具体性を帯びる、というのは婉曲表現で、要するに話題がより率直な方向に進んでいった。
好みのタイプの話。
芸能人の話。
最終的には——
話が続いていた。
「——でさ、◯◯くんってさ、話すとき目線が変なんだよね。こっちの……その……なんていうか、気になる場所を見てるっていうか」
「え、それって脈あるんじゃない? 意識してる証拠だよ」
「ないない。あたしの場合は△△先輩。あの人の腕、やばくない? 細いけど筋肉ついてて」
「あー、わかる。ああいうのにぎゅってされたらもうダメだわ」
「ちょっとそれ想像しただけで顔赤くなってるよ」
「赤くなってないし! ……でも、たまに夢に見るんだよね。そういうの」
「どんな夢?」
「言えない!」
女子たちの笑い声が上がった。
布団の中で、僕の心臓が変なリズムを刻み始めた。
「ねえ、みんなはさ——」と別の女子が切り出した。「朝、起きたときってさ。なんていうか……その……自分で触ったりする?」
「ちょっとはっきり言いなよ」
「だから、その……『すること』って意味」
「あー……」
「言えないならいいけど、あたしはたまにある。なんか、そういう気分の日ってあるでしょ」
「わかる。でも頻度は人によるんじゃない? あたしは週に——」
「そこは言わなくていいから!」
「だって正直な話していいって言ったのそっちじゃん」
また笑い声が上がった。
僕は布団の中で、自分の耳が燃えているのを感じた。
同時に、別の場所でも「燃える」とは違う現象が起きていることに気づいた。
不可抗力だ。
奈央はつまらなさそうにしながら、「ねぇ、音無。二人で違う部屋にうつろっか。」
絶賛燃えている最中の耳もとに口を近づけて、こそっとそう言った。
問題は、この状態で布団から出ることが、物理的に非推奨になっていることだ。
僕は奈央の魅力的な提案をどうにか表情で曖昧な返事として伝えながら、布団を引っ張って、できる限り深く潜った。
その時だった。
隣で一緒に布団に入っていた奈央の着ていたTシャツの襟元が、引っ張った勢いで大きく広がった。そこまで明るい部屋ではなかったが、目の端に自分の鎖骨から——その先の、見えてはいけないラインが一瞬視界に入った。
いや、見てない。
見てはいないが、見えた。
その「見えてはいけないライン」を自分で視認した瞬間、頭の中の血液が一気に二つの方向に別れた。一つは顔に上昇し、もう一つは——とにかく、偏った。
しかも、その衝撃で体勢を崩した。
自分の硬くなった部分が、隣にいた奈央のふとももにぶつかった。軽く。しかし確かに接触した。
「……っ」
奈央の小さな息が聞こえた。
僕はすぐに体を離した。離したが、その一瞬の接触で、奈央のふとももの温もりが——いや、考えるな。考えるな考えるな考えるな。
問題は、その接触の前にすでに僕は「ある状態」になっていたということだ。
そして、接触した衝撃で布団の位置が少しずれた。
ずれた布団の下で、その「状態」は隠しきれていない可能性が生じた。
奈央の目線が、一瞬だけ——本当に一瞬だけ——布団の中央付近に落ちた。
そして、奈央の顔が赤くなった。
部屋はうす暗かった。しかし、限られた光源の中でさえわかるほど、奈央の頬の色が変わった。普段は絶対に動揺しない奈央が、はっきりとわかるレベルで表情を変えた。
奈央はすぐに視線をそらした。
正面ではなく、床の、何もない一点を見つめた。
何も言わなかった。
何も聞かなかった。
しかし、その沈黙がすべてを物語っていた。
気づかれた。
絶対に気づかれた。
しかも、接触した衝動で見えてしまった奈央の「見えてはいけないライン」の記憶と、奈央に気づかれたという事実と、接触した肩の感触が、頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合った。
これはもう、どうしようもない。
不可抗力のレベルを超えている。これはもう、パンデミックだ。
「……音無」
奈央の声が、普段より半トーン低かった。
いや、震えていた? いや、それはさすがに気のせいだ。しかし気のせいだと言い切れないところが、今の僕の精神状態を物語っている。
「……なに」(声が上ずり過ぎて、もはや別の生き物の鳴き声のようだった)
「あたし、ちょっと——」
奈央はそこで言葉を止めた。
そして、小さく息を吐いた。それはため息ではなく、何かを決心するときの息だった。
「のん」と奈央が言った。
「え? なに?」のんがこちらを向いた。
「音無と話してて。あたし先に行く」
「えー、奈央どこ行くのー」
「ちょっと先生に顔出してくる。消灯の確認」
「真面目!」
奈央が立ち上がった。その際、僕に一瞬だけ視線を向けた。その目は、普段の冷静な奈央の目ではなかった。少しだけ——ほんの少しだけ——潤んでいるように見えた。いや、それは暗がりのせいだ。絶対に暗がりのせいだ。
奈央は行ってしまった。
のんが布団の隣に来た。
「音無」
「なに」
「奈央に言われた。助けてやれって」
「……助けてとは言ってない」
「でも助けが必要でしょ、今。っていうか、なんかあった? 奈央、顔赤くなかった?」
のんは気づいていた。
いや、気づいていない方がおかしいか。
「……なんでもない」
「なんでもなくて奈央が顔赤くするわけないでしょ。まさかとは思うけど」
「思うな」
「なにかした?」
「してない」
「された?」
「……されてない。っていうか、自分で自分に——もういい、助けて」
のんは一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに笑った。くすくすと。しかしその笑い方は、からかうものではなかった。
「わかった。作戦いくよ」
のんのスマホ画面が、食堂の中でひときわ明るくなった。
「みんなみてー、このアプリやばくない?」とのんが言った。
全員がのんの方を向いた。
その間に、僕は素早く——できる限り自然に、かつ腰を深く曲げて——布団を脱出した。
廊下に出た。
廊下の暗さに感謝した。
廊下で奈央が待っていた。
「……遅かった」
「助かった」
「のんに言って」
「のんにも言う。でも、奈央にも言う」
「何もしてないよ、あたし」
「いてくれた。……それと、さっきの」
言葉に詰まった。
さっきの、何を?
ぶつかったこと? 見えたこと? 気づかれたこと?
奈央が先に言った。
「……気にしないで。忘れて」
「忘れられる?」
「忘れなさい。あたしも忘れるから」
奈央はそう言ったが、目は合わせなかった。
それが、忘れられない証拠だった。
「……さっさと自分の部屋戻って」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
廊下を歩いた。
離れの自分の部屋に向かいながら、今夜のことを整理しようとした。しかし整理できる情報量を超えていた。
女子の会話の断片。
奈央の襟元から見えた「あのライン」。
奈央のふとももの感触。
奈央の赤くなった顔。
奈央の「忘れて」という声。
布団に入った。
林先輩がすでに寝ていた。村田先輩のいびきが聞こえた。
六畳に三人。
しかし今は、この狭さが少しだけ落ち着く場所に感じた。
合宿一日目が終わった。
*
二日目。
朝六時起床。
「きつい」とのんが朝食の席で言った。
「寝たのが遅い」と奈央が言った。
「眠い理由はあたしのせいじゃないし」
「あなたのレク係のせいでしょ」
「でも楽しかったじゃん」
のんは眠い目をこすりながらも、楽しかったという評価だけは撤回しなかった。
九時から合奏が始まった。
合宿の練習は、学校での練習と違う。違いを一言で言えば、逃げ場がない。学校では練習が終われば帰れる。しかし合宿では練習が終われば次の練習が来る。朝の合奏、午前のパート練習、昼食後の合奏、午後のパート練習、夕食後の個人練習。休憩時間は存在するが、「今日は帰る」という選択肢がない。
二日目の午後の合奏で、顧問の先生が止めた。
「全体的に音が重い。緊張している。もっと解放していい」
しかし合宿の二日目で解放しろ、というのは無理な注文だった。疲れている。眠い。そして「解放しろ」と言われると余計に固くなる。
先輩たちが声をかけ合っていた。柚木先輩が「大丈夫、みんなできてるよ」と言っていた。堀先輩が「音が出てれば問題ない、前を向け」と言っていた。水瀬先輩が「あとはもう体に覚えさせるだけだよ」と言っていた。林先輩は、言葉ではなく、自分が音を出すことで引っ張っていた。
二日目の夜は、昨日の反省をふまえてお菓子パーティー。特に事件もなく、平和なお菓子の祭典で早々に幕を閉じた。みんな本格的な練習がはじまり、疲れていたのだ。
三日目の朝。
一年生の一人が、泣いていた。
浴場の近くの廊下で、小さく泣いていた。クラリネットを持ったまま、壁に背を向けて、声を出さずに泣いていた。
誰かが気づいた。あやのだった。
あやのは声をかけなかった。ただ、隣に立った。それだけだった。泣いている同級生のそばに、黙って立っていた。声をかけない励まし方が、あやのらしかった。
僕はそれを廊下の角から見ていた。見て、何もしなかった。できなかった。
しかし——何もしなかったことを、後悔はしなかった。あやのがいた。あやのがいれば、大丈夫だと思った。根拠はなかったが、確信があった。あやのは声のない人間のそばで黙って立てる人間だ。それは才能だった。
夕方の合奏が終わった後、合宿中で最も長い個人練習の時間があった。
音楽室のない施設で、みんなそれぞれの場所で楽器を持って音を出していた。廊下で、ロビーで、外の庭で。
僕は庭で一人でソロをさらっていた。奈良の山の中の夕方は、虫の声が大きかった。しかし虫の声の中でも、音は出す。
林先輩が来た。
「音無」
「はい」
「今日の合奏のソロ、最初よりよくなった」
「そうですか」
「お世辞は言わない」
「……ありがとうございます」
「ただし、まだ怖がってる音がする」
「怖がってる?」
「ホールが怖い。聴衆が怖い。コンクールが怖い。その怖さが音に出てる。怖がってる人間の音は、縮んでる」
「縮まないためには」
「怖くなくなればいい」
「怖くなくなる方法は」
「ない」
林先輩が断言した。
「ない?」
「怖くなくなる方法はない。慣れるだけだ。怖いまま吹き続けて、怖さと並走できるようになる。それが唯一の方法だ」
怖さと並走する。
怖さを消すのではなく、怖さを抱えたまま走り続ける。
「怖くない先輩は、いないんですか」と聞いた。
「怖くない先輩なんてどこにもいない。俺だって怖い。コンクール前は毎年怖い。ただ、怖さの扱い方を知ってる」
林先輩の言葉は、この合宿での最も重要な教えだった。技術ではなく、姿勢。スコアではなく、哲学。
夕日が山の向こうに沈んでいた。
奈良の夕日は、大阪より大きく見えた。盆地の地形が、空を広くするのかもしれない。
「先輩」
「なんだ」
「ありがとうございます。昨日の風呂での話も」
「風呂の話は覚えてない」
「音がいい、って言ってたそうで」
「……村田が余計なことを」
「でも聞いて、よかったです」
林先輩は返事をしなかった。
しかし帰り際に、「来年も、うまくなって来い」と言った。
この時点では、「来年も」の意味がよくわからなかった。来年に同じ合宿に来る、という当然の話だと思っていた。しかし後でわかることは、その言葉は「俺は来年いないから」という意味も含んでいた、ということだ。三年生になった林先輩は、引退後、村田先輩のように有志参加することはなかった。定期演奏会で引退して、それ以降は一度も合宿に来なかった。
来年も、うまくなって来い。
その言葉は、届く前の手紙だった。
*
三日目の夜は、花火大会。それぞれ持ち寄った手持ち花火を楽しむ。
僕は線香花火を選んだ。儚げな優しさがいつも大好きだった。奈央は、勢いの良いジェット花火。似合っているとも思うが、少し意外だった。奈央も、線香花火を好む同類だと勝手に思っていたからだ。
花火の灯りに照らされた奈央の横顔は、素晴らしく綺麗だった。いつもとは違う、なんとも言い難い神聖な雰囲気をまとっている。
花火も早々に奈央が、離れたベンチを指さしながら、
「音無。ちょっとあそこで休憩しよう。」
と言った。
この独特な高揚感の中で、奈央もテンションが上がっているのだろう。表情や頬の色ですぐに感じ取れた。
二人でペットボトル飲料を持ちながら、ベンチに腰をかけた。花火をして遊んでいるみんなの声が遠くに聞こえる。この位置からでは、みんなは見えない。
「最初の夜、ごめんね。私動揺しちゃった。」
「そんな、謝ることないよ。僕が全面的に悪いんだ。」
「でもさ、先輩たちも少し意地悪だよね。」
「まあ、先輩たちが話し始めたもんね。」
「いや、それもそうなんだけど・・・。水瀬先輩なんて、自分の一人エッチの話をしているとき、音無のことちらちら見てたんだよ。」
「そうなのか。いや、ほんとに恥ずかしい。」
「でもさ、音無もそういうの、ちゃんと興奮するんだね。なんか安心した。」
「なんで安心するんだよ。」
「いや・・・、まあ、ちゃんと男の子なんだなー、と思って。」
「そりゃそうだ。陰キャをバカにしすぎじゃあ、ないか」
「私はね、あんまりあうゆう話題苦手なんだけど、でも、恋バナと同じで自分の秘密を明かして、相手の秘密を受け入れるのは、特別な感じで気分はいいよね、きっと。」
「そういう考えもできるね。」
「今はとっても恥ずかしいから言えないけど、私の秘密、いっぱい教えてあげる。だから、その時は音無の秘密も同じくらい、いっぱい教えてほしい。」
「・・・わかった。」
*
最終日。四日目。
朝の合奏が最後の全体合奏だった。
顧問の先生が言った。「じゃあ、最後に一回通して終わりにしよう」
一回通す。コンクールで演奏する全ての曲を、頭から最後まで。
スタートした。
三日間の蓄積が音に出ていた。最初に来た時より、全体の音がまとまっていた。一人一人が、何かを磨いてきた。磨いたものが、重なって、全体の音になっている。
ソロの場面が来た。
息を吸った。
吹いた。
林先輩が「怖さと並走しろ」と言っていた。怖かった。しかし吹いた。怖いまま吹いた。
音が出た。
縮んでいない音が出た気がした。完全ではないが、前より広がっていた。
全体合奏が終わった。
拍手があった。
誰かが泣いていた。二年生の中の一人が、目を赤くしていた。
「なんで泣いてるの」とのんが聞いた。
「なんかわからないけど、泣けてきた」と泣いている二年生が言った。
「わかる」とのんが言った。「あたしも泣きそう」
のんが泣きそうと言った時、奈央が「今泣いてどうするの」と言った。
「泣きたい時に泣くの」
「荷物まとめてからにして。バス来るよ」
奈央は実際的だった。感情よりも段取りを優先する。しかしその段取りを片付けた後、奈央は廊下で一人で立っていた。
谷瀬荘の建物を最後に振り返っていた。
「名残惜しいの?」と聞いた。
「……そういうわけじゃないけど」と奈央が言った。
「じゃあ何?」
「こういう場所から帰ると、戻れないから」
「戻れない?」
「今ここで感じてることは、ここでしか感じられないから。帰ったら、同じ気持ちに戻れない」
奈央の言葉は、時々、哲学書の一節みたいになる。
バスに乗った。
山を下りた。
奈良の平野部に出た。
高速道路に入った。
大阪が近づいてきた。
コンクリートが増えてきた。山が遠くなった。空気の質感が、シャンプーの香りから排気ガスの香りに変わった。
僕たちは大阪に帰ってきた。
合宿は、終わった。
しかし合宿で起きたことは、終わらなかった。
林先輩の言葉。村田先輩のいびき。六畳三人の密度。女子の部屋のシャンプーの香り。泣いていた一年生とあやのの沈黙。布団から出られなかった夜とのんの救出作戦。奈央の「秘密、いっぱい教えてあげる。」「今ここで感じてることは、ここでしか感じられない」という一言。
全部が、体に残った。
音楽のように、残った。
名前のつかない感情の残高が、三泊四日で倍増した。
しかしそれは、損失ではなかった。
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(第三十話へ続く)
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