第30話 王女様は美術館に行きたい様です
《シエルの部屋》
現在、大浴場で何故か気絶されてしまった。リーフ王女を私専属メイドのティアラさんと共に私の部屋まで袋に詰めて運び出しました。
「シエルお嬢様。突然のお帰りにもビックリしましたが。なぜ現在、行方不明中のリーフ・テレンシア王女殿下が大浴場で倒れられていたのですか?」
「……何故でしょうか? 私にも分かりませ……」
「ダァーッ! シエルが私に媚薬剤を付けたからでしょ!」
袋の中から元気いっぱいにリーフ王女が飛び出して着ました。気まずいです。
ちなみに服はちゃんと着せてあげています。ティアラさんと共に着せてあげたのです。エッヘン!
「何がエッヘンよっ! 何がぁ! 心の声がだた漏れなのよ。貴女っ!」
「……ま、まさか。そんなわけありませんわ」
「いえ。シエルお嬢様。エッヘンっと仰っておりました。エッヘンとは」
「な、何なのこの人達。バレンタイン家の人達って皆、変な人達しかいないのかしら?」
相変わらず喜怒哀楽が激しい王女様です。この方が居るだけで部屋の中が賑やかになりますね。
「それはリーフ王女様でも聞き捨てなりませんね。バレンタイン家は代々エリシア教の存続と発展に尽力されて来た一族にございます。それにバレンタイン家当主イヴァン様とテレンシア王は親友の間がらです。リーフ王女殿下。もう少し自分の置かれている立場を考慮して発言なさって下さい。リーフ王女様の不適切な発言でイヴァン様とテレンシア王との仲に亀裂が入るかもしれませんので」
………始まりましたね。ティアラさんのお怒りお説教モードです。ティアラさんは長年バレンタイン家で働いてくれています。
それに敬虔なるエリシア教徒。凄い真面目な方なのです。特に言葉遣いやマナーには厳しいお方です。それはこの国の王女様でも例外ではないようですね。
「それは……そうね。お城から逃げ出して少し浮かれていたわ。ごめんなさい」
「はい。私も王女様に対して大変失礼な発言をしてしまい申し訳ございません」
リーフ王女はティアラさんに向かって床に頭をつけて謝りました。ティアラさんもリーフ王女に謝りました。
変な光景ですが……まさか一国の王女様がこんなに簡単に頭を下げるなんてビックリです。
そういえばレイン様が言っていましたね。リーフ王女は昔から土下座というものが得意だとか。
「……土下座するのお好きなんですね。リーフ王女は」
「そんなわけないでしょう。これは私の失言に対してのけじめよ。けじめ! それよりもシエル。今夜、私をテレンシア美術館に連れていきなさい! 美術館の中に侵入するわよ。これは王族してのお願い! 聞き入れなさい」
「……私の聖女権力を使ってテレンシア美術館に潜入したいですか?……却下します」
「なんでよっ!」
「……職権乱用はいけない事です。レイン様も良く仰って下りましたので」
レイン様の教えは絶対なのです。レイン様ファーストです。
「レインレインってどれだけレインが好きなのよ。あんな皮肉屋のどこが良いのよ?」
「……全部ですね。レイン様のお顔も。レイン様のご性格も。全てが大好きです。そして、私はレイン様のモノですわ……それから」
「……シエル様。レイン殿のお話がまた終わりましたら、シエル様のお部屋に戻りますね。失礼致します。ではリーフ王女様。頑張ってシエル様のお話を最後まで聞いてあげて下さい……」
「ちょっと待ちなさい! なんでそんなに哀れむ様な目で私を見ているの?……てっ行ってしまったわね」
ティアラさんは早口でそう言うとそそくさと私の部屋から出ていってしまいました。
そして部屋に残ったリーフ王女に向かって熱烈にレイン様への想いを小一時間ほど語って差し上げました。
「……以上がレイン様と私の馴れ初めですわ」
「…………話長過ぎるわよ。何時間経ってると思ってるの?」
「……小一時間程では?」
「3時間よ。貴女がどれだけレインの事が好きなのか良く分かったわよ」
「……ありがとうございます。ではその続きの第二章のお話を…」
「しなくていいわよ。それよりもそろそろ夕方よ。イヴァン大司教とディナーに行くのでしょう?」
「……おや? 何故、それをリーフ王女が知っているのですか?」
「風の噂で聞いたのよ。それよりも貴女の話をずっと聞いて上げたんだから。私も貴女の従者として連れていきなさい。お願いよ。シエルっ!私、テレンシア美術館に盗まれた物を取り返したいの。初めてお父様から頂いた贈り物を」
リーフ王女はそう告げて私に土下座したのでした。
◇
《テレンシア美術館》
テレンシア美術館の倉庫にて怪しい人影が2つ……
「ほう。ではレイン・アッシュクラフトは王都中を歩き周りながらリーフ王女を探し回っていると?」
「キヒッ! ええ!ええ! その通りでございます。新四大貴族ユリウス・バルトロメオ様」
「そして、聖女も王女も共にここへとやって来ると?」
「全てはユリウス様……いえ。貴方様のお望みのままに」
「フハハハハ! そうかそうか。ならばどちらの女も俺の物にしようか。このバカ貴族の……いや、アザゼルのモノにな。ハハハ!!」
《悪魔・アザゼル》




