第31話 レインとアスモール
《5年前(レイン10才) 隣国 カズラン》
「ゴホッ! ゴホッ!……身体が熱い。手足が自分じゃない何かに変わっていく……化物になっちゃう……」
母も父ももういない。『暗闇の教団』に家族揃って捕まって。人工死徒実験ていうので死んじゃった。
魔神族という事を隠して生きてきたのになんでか捕まった。
私も母と父の様に実験に使われて身体がボロボロになったんだ。
そんで使い物にならないからってスラム街に捨てられた……器として役に立たなすぎるとか言われてね。
お前はここで魔堕ちして沢山の人を殺せだって、酷いよね。
酷いよ。酷いね……皆、酷い。だから皆壊して殺そうよ。新しい私になって殺そうよ。
生まれ変わって怨みを晴らそう……この酷くて醜い世界にさぁ。
うん……それが一番良いのかもしれな……
「やっと見つけた。ダリア、リヴァイ。こっちだ」
「はい。ご主人様……これは?」
「………凄い変異化してる? これじゃあ助からない」
誰?……壊れていく私を見ないでよ。
「余裕だな……今、助けてやる。『快復』」
くそっ! もう一歩でこの娘の心を殺せたのに余計な事を。次代の魔王め。よくも……
「……私の身体が……元に戻った。私を治してくれた貴方はいったい?」
「ダリア。保護してやってくれ。僕は他の子達を治してくる……一緒に着いて来てくれ。リヴァイ」
「はい。ご主人様」
「……あ、あの…行っちゃった」
「治って良かったですね。そして、もう大丈夫ですよ。これからは私やレイ様が貴女を守りますからね」
「……レイ様? それが私を治してくれたあの人の名前なの?」
あぁ、私はあの人に救われた。あの日から私はあの人の名前を覚えた。あの人の為に行動しようと誓った。あの聖女よりも深くお慕いしています。レイン様───
▽
《魔道店ミリア》
ゴーン!ゴーン!ゴーン!
夜の訪れを告げる大鐘楼の鐘が王都中に響く。
「アスモール。これが良いか? 欲しい物があれば選んでくれ」
「は、はい。レイン様から頂ける物でしたら何でも嬉しいです」
「いや。それじゃあ君の身を護れないだろう」
セルトマ酒場での食事を終えた後、ユーリとアス達とは別行動でリーフ王女を探す事にした。
なんでかというとアスモールと一緒に居る所を見られたくない為であり。ユーリ達からイヤな雰囲気を感じた為でもある。
あの二人には何か不思議な何かを感じたからだ。あの二人の眼を通してこちら側を監視する様な目線を。
なのであの二人と別れた後はアスモールと共に城下町や冒険者宿場などを見て回ったが、リーフ王女に関する手懸かりは得られなかった。
そして、もう一つ気になる事があった。それはアスモールの態度だ。
セルトマ酒場を後にしてからというものどこか様子が可笑しい。
彼女が俺に七聖覇について説明してくれた所からどこか情緒不安定になっているのだ。
「い、いえ。本来、レイン様を護るのは私達の役目ですので……」
「普段欲深いアスモールが謙虚なんて珍しいな。(やはり何かに操られているのか? いや。ユーリ達の様に眼の色は変化していないか)」
「良いから早く決めちゃいなさいよ。アスモールちゃん……ていうかレイン。シエルはどうしたのよ? 浮気してるわけ?」
元パーティー仲間であり魔道店のオーナー付与師ミリアが俺に質問してきた。
「シエルは今日は実家に帰っているんだ。それに浮気とは何だ? 俺はそもそもシエルと一緒に暮らしているだけで結婚なんてしていないんだぞ」
「いやいや。何言ってるのかしら? 数日前にシエルから結婚招待状の手紙が来たわよ」
ミリアは俺にシエルからの手紙を見せてきた。
「何だと? シエルの奴いったい何をしているんだ? 帰って来たら問いただして……」
「それより早くアスモールちゃんにプレゼントする結界石を選んであげなさいよ。早くお店閉めたいんだから。今夜はテレンシア美術館で『嵐の稲妻』の首領が現れるって言うから見に行きたいのよ」
「……そうか。ダリアはそんな噂を流したのか。成る程」
「ダリア? 誰かしら?」
「いや。何でもない……ミリア。あの棚の物を全てアスモールにプレゼントするから袋に包んでくれ。そして、アスモール。さっきからブツブツと何を独り言を呟いている?」
「ですから。私はレイン様の為ならば……はい?」
「(店を出たらテレンシア美術館に向かうぞ。アスモール……全ての答えはテレンシア美術館にあるみたいだからな。ダリアが『嵐の稲妻』の噂を王都中に流しているからな)」
俺はアスモールへと近付き小声でそう告げた。
「(!……召集ですか。了解しました。レイン様)」
「あぁ、それと《静寂のペンダント》だ。ちゃんと首に下げておいてくれ」
「このペンダントとって……ありがとうございます。レイン様」
「………魔除けの魔道具をプレゼントねえ? (それにしてもあのアスモールちゃんって何者かしらね。あんな女の子の知り合いがレインにいたなんて初めて知ったわね。新たなライバル登場ね。シエル)」




