第28話 聖女への訪問者
《バレンタイン邸宅》
このバレンタイン一族が所有する土地はテレンシア王都内でも有数の立地を誇る場所だとお爺様は言っていましたね。
「……レイン様のお家も同じ場所にあって……敷地はレイン様のお家の方が大きかったのですね」
流石、元四大貴族に数えられたアッシュクラフト家です。
いかに世界的宗教とされているエリシア教大司教であるお爺様といってもレイン様には叶いません。
「……えっへん! 流石、私のレイン様ですね……レイン様に会いたいです。今頃、何をなさっているのでしょうか?」
私は久しぶりに自室のバルコニーで王都中を見渡しながらレイン様の事を考えていました。
コツンッ!
「……独り寂しくしていないと良いのですが。私心配です」
コツンッ!
(さっさと気付きなさいよぁー! このド天然シエルーッ!)
「……むっ? 何でしょう? 何方かにお馬鹿さん呼ばわりされた様な?」
コツンッ!
「……こんな所に小石が?……いったいどこから?……下から声?」
(こっちよ! こっち!……気付きなさい! 聖女シエル!)
「……リーフ・テレンシア王女殿下?」
◇
《シエルの部屋》
「紐を垂らしてくれて助かったわ。ありがとう。聖女シエル」
「……いえいえです。それよりも何故、リーフ・テレンシア王女殿下がこの様な場所に来られたのですか?」
目立たない様に黒色のフードを被り、ドレスではなく王都の女性達が普段着る様な洋服を来てらっしゃいますね……それと臭います。
「ちょっとッ! 何、私をまじまじと見て鼻を摘まんでいるのかしら?」
「……いえ。リーフ・テレンシア王女殿下がとてもとても臭いのでつい……」
い、いけません! 一国の王女殿下の前で吐いてしまうなど。聖女としてあってはいけない事です! ですが臭いです。王女殿下が臭いのです。
「し、仕方ないじゃない! あんな手紙がいきなり届いたせいで、お城の隠し通路から急いで逃げて……それから3日もお風呂に入って居ないんだから!」
「……み、3日もお風呂にですか? では先ずはお風呂に行きましょう。リーフ・テレンシア王女殿下」
「リーフで良いわよ。聖女シエル……私も貴女の事はシエルと呼ぶから///」
────何故そこで頬を赤らめるのでしょうか? それになんだか私を見つめるリーフ王女の目付きがなんだかイヤらしい様に見えます。
「……はぁ。畏まりました。リーフ王女様」
「リーフって呼び捨てで良いのに……まぁ、良いわ。貴女との距離は徐々に狭めて行けば良いものね。そ、それよりも今はお風呂よ! お風呂……さ、さぁ。一緒に入りましょう! 私のシエル」
私との距離を狭める?……それに何ですか? 最後のリーフ王女様の〖私のシエル〗という台詞は?
◇
《大浴場》
「へー、凄い広いお風呂場じゃない。私が使っている王族の浴場よりも広いってどういう事かしら?」
リーフ王女がきな臭そうな表情で私を見つめて来ました。何かを疑っている様ですね。
「……この家《バレンタイン邸宅》では一時的に戦争でご両親を失った子供達が新たな住まいが見つかるまで保護しているのです。その為、大人数が入れる大浴場をバレンタイン一族の初代当主であるエリシア様がお造りになりました」
「そうなのね………疑って悪かったね。もしかして教会の資金を横領しているんじゃないかと疑ってしまったの。戦争孤児の為の設備だったのね………無知は駄目ね。知らないとただ良い様に操られるだけですもの」
なんだかリーフ王女の性格が闘技場でお会いした時とは雰囲気が全然違います。喜怒哀楽が激しくやかましいですね。
たしかレイン様はこう言っておられましたね。 闘技場のリーフ王女は魔神が憑依していたので人格も歪められていたと……もしや本当のリーフ王女というのはこんなにうるさい方なのでしょうか?
「……リーフ王女様? どうかされましたか?」
「何で私はタオル一枚巻いているだけなのに。シエル! 貴女はメイド服を着ているのかしら?」
「……はい。それはリーフ王女様のお身体をお洗いする為ですがなにか?」
「何で服を脱いで私と一緒にお風呂に入らないのよ?」
いけませんね。どうやらリーフ王女様は闘技場の事件以来、可笑しいお方になってしまった様ですね。
「……言っている意味が良く分かりませんが。私はレイン様以外の方達とは御肌のお付き合いはしないと決めておりますので。よろしくお願いお願い致します」
「はい?……なんでそこでレインの名前が出てくるのよ? 貴女とレインってどんな関係なの?」
「……はい。レイン様は私の旦那様です。将来は結婚をして子供は3人以上産むつもりですわ」
私はリーフ王女様に向かって自信満々にそう告げました。
「レインが私のシエルの旦那様?……嘘? 嘘よね? そんなまさか……(ブツブツ)」
「……良く分かりませんが。お背中失礼します。リーフ王女様……これでも人の背中を洗うという家事には少し自信がありますので、ご安心下さい」
私は良く泡立つセッケンという物を良く泡立て、リーフ王女の身体にその泡を付けていきます。
「そんなそんな(ブツブツ)……あ、ありがとう。シエル…貴女。これっ! 粘液たっぷりのスライムローションじゃないっ!……塗るタイプの媚薬剤よ。これっ!」
「……はい?」
リーフ王女は今、何と仰ったのでしょうか?
「これを塗られた子は全身触られただけで興奮するのよ……その反応からわざとじゃないのは分かるけど……よくもやらかしてくれたわね。ジェルリュウアアア!!」
「……い、いけません! リーフ王女のお身体中から謎の汗が出て来ています。どうにかしなくてはいけません!」
私は動揺しながらもリーフ王女を大浴場から連れ出そうとリーフ王女のお身体に触れました。
「ま、待ちなさい……今、私の身体は敏感で触れられると……気絶するうぅぅ?!」ドサッ!
「…………リーフ王女様? お気をたしかに……大丈夫ですか?」
リーフ王女は意識を失い私の身体へと方へと倒れ来んでしまいました……どうしましょう。レイン様。私とんでもない事を引き起こしてしまったみたいです。




