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公家と武家
新三郎がたどり着いたのは板の間の広間だった。
「新ちゃん、そこに座りなさい」
康子に言われて新三郎は康子の下座に正座した。
「新ちゃんは……軍人になるつもりね?」
何気ない康子の問いに新三郎は静かにうなづいた。
「西園寺家の人間が軍に入るのは……あまり歓迎されないわよ」
「どうしてなんですか?孝基様も士官学校を出てすぐに軍を抜けられたと聞きます」
そう言いつつ新三郎は察していた。
甲武国軍は前宰相西園寺重基の下でかなりの無理な軍縮を迫られた。それ以前にも西園寺家の宰相が立つたびに軍と政府は対立することが多かった。
「西園寺家は公家。軍は武家の物と言う空気がこの国にはあるのよ……公家の差配は受けたくないというのが軍の本音でしょうね。実際、西園寺家から軍の高等予科学校に進んだのは孝基様が初めて……しかも孝基様はそのために西園寺家の惣領を捨てることになった」
康子の言葉に新三郎は静かにうなづいた。
甲武は公家と武家の支配する国。政治は公家が行い、軍は武家が仕切る。それがこの四百年の伝統となっていた。
「俺が……高等予科に入れば……」
「孝基様と言う前例があるから入ることは可能だわ。でもあまり歓迎はされないわね」
そう言って康子は笑った。新三郎もまたそれにつられて自然と笑みを浮かべていた。




