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生れた意味

「康子様……」


 二人っきりになると新三郎は話を切り出した。


「康子様ねえ……姉さんって呼んでくれないのね。一応、新ちゃんは西園寺家の三男坊なんだから」


 康子はふざけた調子でそう言うと自分を真正面から見つめてくる新三郎の額を人差し指で軽く小突いた。


「姉さん……俺の使命って……なんなんです?」


 そう言いながらも新三郎の視線は目の前の長屋の群れに向いていた。初めて見る庶民の暮らしは新三郎の心をとらえて離さないものだった。


「それは目の前の人々を救うこと……ある男の野心から」


「ゴンザレスが甲武に?」


 康子の言葉からすぐに想像されるのは新三郎を甲武国に追いやった奸臣のことだった。


「違うわ。あんなゴンザレスは小物よ……せいぜい遼南を支配するのが関の山……だってあの男はいずれ死ぬもの」


「いずれ死ぬって……姉さんは死なないんですか?」


 康子の言葉の矛盾に気づいた新三郎の問いに康子は黙って笑顔を向けるだけだった。


「そのうち新ちゃんにも分かるようになるわ……遼州人には地球人とは違う特性がある」


「違う特性?」


 放たれた康子の言葉に新三郎はさらに混乱した。


「ゴンザレスはそれを知っている……幸運にも知ることができて、さらに強力な手駒を得て野心を抱いた……でも新ちゃんがいずれ対峙する男は違う。本人がすでに力を持っているのよ……その力は私にもあるし……」


 そこまで言うと康子は動揺している新三郎をしっかりと見つめた。


「新ちゃんにもその力はある」


「俺に力が……自分で歩けないほど弱っている僕がそんなに強く……」


「なりなさい、強く。東和共和国に残ったら私が代わりに動くつもりだったけど、本当は新ちゃんのお仕事だもの……その男、『廃帝ハド』を倒すのは」


 康子はそう言って新三郎を見つめた。


 その瞳はやさしくそして厳しい光を放っていた。

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