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それぞれの思惑

「逃げられたが……その方がこちらとしては都合がいい」


 朝議の席を終えたガルシア・ゴンザレスはそう言って吉田に笑いかけた。


「そうでしょうね、ブルゴーニュ親子に遼献の身柄が渡るところだったのですから。それよりこちらは一つ義体を潰してるんですから……報酬は弾んでもらいますよ」


「分かっとる」


 上機嫌のゴンザレスのそばで吉田がにやりと笑った。


 その様子を遠巻きで見ているアンリ・ブルゴーニュの姿があった。


「ゴンザレスばかりが強くなるのは気に食わんな」


「全く」


 そう話しかけたのは東海軍閥を仕切る花山院康永侯爵だった。しかし、裏では遼弁と言う皇位継承権者を庇護している康永とアンリの間にはかなりの地位の隔たりがあった。


「そちらは甲武との関係をしっかり維持してもらわなければな」


 ゴンザレスにも聞こえるだろう大声でアンリはそう叫んだ。


「そちらこそ地球圏との橋渡しを……せめて常駐事務所の設置ぐらいの手柄は欲しいものだ」


 康永の皮肉にアンリは苦笑いを浮かべた。


 そこで康永はアンリの耳元に口を寄せた。


「遼献陛下は東和経由で甲武に向かった模様だ……西園寺家が庇護しているらしい」


「西園寺……西園寺重基は政界を引退した……当主は西園寺義基……あの『紅藤太』の弟か……」


 二人は武帝と緊密な関係にあった甲武国前宰相西園寺重基とその次男で切れ者の外交官として知られる義基のことを思い出していた。


「厄介なところに逃げられたものだ」


 ゴンザレスの晴れがましい顔に比べてアンリと康永は明らかに不愉快そうに議場を後にした。

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