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強くなること

「あら、康子様」


 遼献を迎えたのは和服を着こんだ女性だった。


「少しお世話になるわね」


 康子はそう言って隣に立つ遼献に頭を下げさせた。


 遼献は訳も分からず和服の女性に頭を下げた。


「でも……よろしいのですか?この方は皇帝……」


「それを言うなら薫様こそ……」


 悪戯心をくすぐられたのかそう言って康子は和風の建物の軒下に腰かける。半年近く座敷牢に閉じ込められていた遼献はその場に立ちすくみ一人薫の助けを待った。


「ずいぶんとまあ……弱くなられたもので……」


「この人は強くなりたいそうですわよ」


 康子はそう言って天を仰いだ。


 遼献もまた天を仰いだ。


「確かに康子様に鍛えられれば強くはなれるでしょうが……」


 薫はそう言いつつぼんやりと立ち尽くす遼献を見つめた。


「強くなりたいんです……もう周りを見捨てるようなことはしたくない」


 遼献はそう言って強い口調で薫を見つめた。


「強くなっても……守れないことも……でもいいんですね」


 薫の口調はどこか迷いを帯びていた。


「強くなります……僕にはその権利がある」


 そう言った遼献の口調に迷いは無かった。


 ただ薫は黙って遼献を見つめていた。

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