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 アンリ・ブルゴーニュの遼献救出が失敗に終わってからはさらに警備は厳重なものとなった。


「このまま朽ちていくのかな……」


 遼献には手紙すら届くことは無かった。


 狭い座敷牢に一人臥する遼献。彼を救うものは誰もいないと思っていた。


 そんなある日。座敷牢の前に一人の女性が立っていることに遼献は気が付いた。


「康子様……」


 遼献はそれが叔母である西園寺康子であることが不思議に思えた。


「どうやって来たかなんて無粋なことは聞かない方が良いわよ」


 康子は手にしていた薙刀で座敷牢の鉄格子を一刀のもとに斬りつけた。


 格子は倒れ、康子は悠然とその様を不審に思っている遼献の前に立った。


「遼献ちゃん……約束通り迎えに来たわよ」


 康子はそう言って遼献に手を差し伸べた。


「良いのですか……外交問題になりますよ」


 康子の冷たい手を握りしめながら遼献は静かに立ち上がる。


「いいのよ、うちの人に任せておけば大丈夫。それより……遼献」


 康子の目が急にまじめなそれに変わった。


「あなたは自由になりたいのかしら、それとも強くなりたいのかしら……どっち?」


 その問いを遼献は待っているところがあった。


 遼献は静かに立ち上がり粗末な服の裾を整えると康子を見つめてこういった。


「強く……強くなりたいです」


 片手で押せば倒れてしまうような貧弱な少年の言葉とは思えない強さをそこに感じた康子はため息をつくとそのまま遼献の手を握りしめた。


「厳しい運命が待ってるわよ」


「余の為に……30万人の人が死にました。ですから、彼等の為にも余は強くならねばならない……」


「あんまり思いつめないでね……まあ、いいわ」


 ようやく康子の侵入に気づいた看守達が騒ぎ始めた。


「じゃあ、甲武にいらっしゃい。強くしてあげる」


 そう言うと康子は薙刀を振るって看守を威嚇した。


 その次の瞬間、二人の姿は央都宮殿内の座敷牢から消えていた。

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