傀儡
座敷牢での監禁は続いた。
「このまま尽きていくのか……」
遼献はそう独り言を言って笑った。唯一外とつながる新聞を手に持ち、少年皇帝はただぼんやりと座敷牢の中で笑っていた。
そんなある日、座敷牢の外で騒動の音がした。
「何をいまさら」
そう言って椅子から立ち上がった遼献の前に数名の軍人が姿を現した。
「陛下、救出に参りました」
先頭を歩くヨーロッパ系の顔をした士官の言葉に遼献はけげんそうな瞳を向けた。
「救出?」
遼献はそう言って士官の部下達を見回す。
その袖の部隊章から彼等が南都軍閥の手の物であることが遼献にも分かった。
「アンリ・ブルゴーニュ将軍」
遼献はその士官が彼を追い詰めた男であることを認識した。
「そうです、このまま南都に陛下をお連れします。御同道を」
そう言うアンリを遼献は冷たい視線で見つめた。
「救出か……そんなに御旗が欲しいか?アンリよ」
「陛下……」
アンリはそう言って明らかに自分に敵対心を燃やしている少年に目を向けた。
「余は……僕は……俺は……そんな甘ちゃんに見えるか?見えねえだろ?操り人形になるくらいならこのまま朽ち果てた方が良いんだ……救出?ゴンザレスとことを構える口実が欲しいだけだろ?なあ?」
突然口調の変わった遼献にアンリは唖然として立ち尽くしていた。
「陛下……そんなつもりは……」
「じゃあ、どんなつもりだよ……テメエの了見なんざこっちはお見通しだ。そんなに国を荒らして何が楽しい!人が死んでんだ!分かんねえのか!」
そこには少年ではなく一人の男の姿があった。
「では……陛下は……」
「行かねえよ……俺は俺だ……遼帝国皇帝、遼献は俺一人だ」
そう言ってその場に踏ん張って部下達の手を払いのける遼献を見てアンリは大きくため息をついた。
「この国の為……我々とともに……」
「テメエの野心に付き合う義理はねえよ」
その言葉は全く持って当年13歳の少年の言葉では無かった。




