鬼姫推参
指揮官の後ろを歩いていた遼献は不意に指揮官が足を止めたのに驚いて立ち止まった。
「なにが……」
そう言いかけた指揮官の首がぼとりと地面に転がった。
首を失った胴体から血が噴水のように湧き出す。その血を浴びながら遼献は目の前に立つ薙刀を持った女性に手を差し伸べられた。
「遼献ちゃん……迎えに来たわよ」
その女性、西園寺康子の笑顔を見て遼献はようやく状況を理解した。
彼女によって敵の部隊は全滅していた。
「康子様……」
遼献は崩れるようにその場に倒れこんだ。
血の匂いがあたり一面に立ち込める。康子の手を握る遼献の手は震えていた。
「もう少し早く来るべきでしたわね。でも、遼献ちゃんが無事ならば死んでいった家臣達も浮かばれますわね」
そう言って康子は震える遼献を立たせた。
背後から彼女の手のものと思われる男達が現れてそのまま遼献を四輪駆動車に乗せた。
「余は……どこに向かうのですか?」
毛布でくるまれた遼献はそう言って目の前の座席に座った康子に声をかけた。
「孝基兄さんが決めた東海経由で東和を目指す予定ですわよ。ただ……こちらの動きはおそらくゴンザレス一派には筒抜けだから……最悪『彼女』が動くわね」
「『彼女』?」
遼献は康子の言う言葉の意味が分からず聞き返す。
「ちっちゃいかわいい子……そしてかわいそうな子よ」
そう言って康子は遼献に笑いかけた。
遼献は数少ない自分を知ってくれている肉親に笑顔を向けられてようやく安心したように眠りに落ちて行った。




