投降
遼献の脇で彼をかばうようにして震えていた女官が銃弾に斃れた。
口を真一文字に結んだまま、遼献は銃撃の中でじっと事の成り行きを見守っていた。
銃撃が再び止んだ。
「遼献!遼献陛下!いい加減出てきていただけませんかね!」
洞窟の入り口から敵兵のそんな声が響いた。
「余が出ていけば皆が助かるのか!」
遼献の口をついてそんな叫びが飛び出していた。まだ息の合った女官は黙って首を横に振り、遼献の着物の袖を引く。
「用があるのはあんただけだ!他の連中に関心はねえんだ!」
ガラの悪そうな兵士の声を聴くと遼献はおずおずと立ち上がった。
「おやおや、震えていたんですかね……そんなに怖がらなくてもいいですよ……大事な身だからねえ、アンタは」
ゴーグルをつけた軍人はそう言って遼献に歩み寄ってきた。
遼献を守る兵士はすでに死に絶え、女官達もすでに虫の息だった。
「ご立派ですな……家臣の為に身を投げ出すとは……落ちぶれたとはいえ帝室の方は度胸が違う」
そう言って近づいてくる遼献に銃口を向けたままの兵士達はゴーグルの下に笑みを作って遼献を迎えた。
「これでよいのだな」
指揮官らしい男の前で遼献はそう言って男をにらみつけた。
「あとかたずけをしろ」
指揮官はそう言って周りの兵士に指示を出した。
兵士はそのまま洞窟の奥に進み、虫の息の女官達に銃でとどめを刺していった。
「違うぞ!約束が!」
「約束?そんなもん信じるのは馬鹿だけだ……遼献陛下。アンタは馬鹿だ」
指揮官ははっきりとそう言い切った。ゴーグルの下の口元には笑みさえ浮かんでいた。
「さあ、陛下。ご同行願えますかね?」
怒りに震える遼献に指揮官は静かに手を差し伸べた。
遼献にはただ無力感だけが残ることになった。




