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追い詰められた天子

「陛下!ご無事で!」


 銃弾の雨は容赦なく降り注ぐ。


 山岳地域特有の岩陰に隠れつつ遼献は味方兵士の斃れる様を眺めていた。


「これが戦争……」


 不思議なことに遼献の心に恐怖は浮かんでこなかった。


 むしろ無力感。どうしようもない自分の非力を恨む心だけがそこにはあった。


「陛下!こちらへ!」


 女官の一人が道端に開いた洞窟の脇で手を振っていた。


 遼献は自分にできる全力でそこへと駆け込んだ。


「きっと助けが来ます!西園寺卿の考えに間違いはありません!」


 まるで自分自身に言い聞かせているような女官の言葉に遼献はあいまいにうなづいた。


 銃声は次第に近いものに変わる。


 甲武浪人達も多勢に無勢とあって次第にこの洞窟へと避難を始めた。


「ガスでも撒かれりゃ終わりだな」


 兵士の一人がつぶやいた。遼献はそんな兵士の言葉に自分の終わりが近づいたことを感じていた。


 銃撃が一時的に止んだ。


 それは一時的なもの。その後にはむしろ絶望的な状況が彼等を襲った。


 銃撃が止んだのはグレネードランチャーの設置をする時間があったからだった。


 次々と発射される榴弾に兵士や女官達は斃れていった。


「ここで……余は終わるのか……」


 洞窟の奥で震える女官に囲まれながら遼献は静かにそう言って洞窟の入り口に目を向けていた。

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