進退窮まる
遼献一行は一路東海州山岳地域を東に進んだ。
ゲリラとはすでに西園寺孝基が話をつけていたようで時折、甲武浪人にあたりの状況を知らせるために通信が入る程度の関係性を維持していた。
しかし、それは突然やってきた。
「正体不明の武装勢力?」
甲武浪人を率いている指揮官はゲリラの言葉に驚きを浮かべた。
「突然現れたので全くその意図が分かりかねます。こちらから仕掛けるには重武装をしているようなので無視していますが……おそらくはあの『吉田俊平』の私兵かと」
一同に緊張が走った。
吉田俊平少佐と言えば名の知れた傭兵である。
西園寺孝基が『義』の傭兵ならば吉田俊平は『利』の傭兵だった。
前身義体のサイボーグでその手口は残忍非道。女子供も容赦をしない苛烈な攻撃で知られていた。
「やはり、ゴンザレスはここを本命と見てきたか……」
「どうしますか?」
甲武浪人の隊長に女官が不安げに尋ねた。
「ここは迂回するしかないか……いや、吉田貴下の猛者となれば迂回路はすでに抑えられていると考えるのが自然だ」
遼献は大人達の困ったような顔を見ながら静かに立ち上がった。
「陛下……」
「余を差し出せば、吉田貴下の荒くれもの共も黙るだろう。余は降伏する」
「いけません!そんなことをしたら……」
「そうね、それが一番賢いやり方よ」
遼献を止めようとする甲武浪人達の背後から余裕のある声が響いた。
一同はその誰もいないはずの暗闇に目をやった。




