待ち構えるもの
「逃げるカモは四羽……どれが本命か……」
戦闘車両の中で首筋にプラグを刺した状態で吉田はそう独り言を言った。
「東海に逃げられると厄介ですよ。あそこの花山院兄弟は……今はだんまりを決め込んでいますが遼弁殿下より遼献陛下の方が出来が良いのは分かってますから」
副官はそう言いながらもその顔は笑っていた。
「いや、そう考えて裏をかくというのもある……とりあえず全部潰す気で行くぞ」
そう言うと吉田は首のプラグを引き抜く。
「しかし、護衛の甲武浪人は西園寺孝基の直下の連中ですよ。万が一にでも仕損じるとなれば……給料に差し障ります」
笑顔の副官に吉田は軽く首を振った。
「いや、仕損じた方が確実なんだよ。どうせ逃げる先は東和経由で甲武の西園寺御所と言う所まであたりはついてるんだ……その途中で身柄を抑えれば終わり……いや、あのゴンザレスの旦那のことだ、保険はかけてるだろうな」
吉田の笑みはどこか下品でいかにも傭兵のそれと言った感じだった。
「保険?」
副官は吉田の余裕がどこから来るのか分かりかねるように首をひねった。
「そうだ、保険だ……確実な手って奴をゴンザレスの旦那は持ってる」
「『汗血馬の乗り手』ですかね」
そう言って笑う副官に吉田は笑みを返す。
「俺達に手柄をやるほど甘いご仁じゃないね、ゴンザレスの旦那は。まあ、適当にあしらってどこが本命が分かるようにすれば俺達の仕事は終わりだ……そんなに命の安売りはするもんじゃないだろ?傭兵稼業の鉄則だぜ」
吉田はそう言うと静かに立ち上がり戦闘車両の通信室を後にした。




