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車中

「始まったようです」


 戦闘車両の中で女官の一人がそうつぶやくのを遼献は黙って聞いていた。


「家族が……いるのですが」


「先鋒は南都軍閥と聞く。無茶はせんだろうて」


 大人達のささやきあう声が遼献の心を引き裂いた。


「余が……余の首を差し出せば、領民三十万は無事で済んだ……兵士の命も……」


「そんなことを言わないでください!」


 最初につぶやいた若い女官の言葉で遼献は我に返った。


「陛下を国外にお連れする。そのために私達はすべてを投げうつつもりなんです!そのために西園寺卿は命を捨てられた!それなのに陛下は!」


 思わず遼献に殴りかかろうとする女官を兵士が羽交い絞めにした。


「すまぬ……余は生きねばならぬのだな……」


 遼献はうつむいてそう言うと窓の外を見つめた。


 避難民はすべて北兼離宮基地に立てこもっており、閑散とした農村の風景が広がっていく。


「余は……どれほどの命を道連れにすれば……終われるのか……」


 遼献はこの時初めて自分の死と言うものと向き合ったような気がしていた。

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