70/101
落人
「西園寺卿が……戦死されました」
「叔父上が……死んだ……」
遼献は輿に乗りかけた足を止めて女官の言葉にそう言って答えた。
すでに影武者達はそれぞれに先を急いでいた。
静かにそのまま輿から降りようとする遼献を女官は押しとどめた。
「余は……皇帝だ。余の首を差し出せば領民は助かる!余は残る!」
「お静かになさりませ!陛下が下られてももはや状況は何も変わりません!」
女官はそう言って遼献を抑える。共の者達もまた無理やり遼献を輿に乗せた。
「余は卑怯者にはなりとうない!余は!余は!」
先頭をバイクで先導する孝基の腹心はそのまま全員に合図を送る。
「余は……余は……強くなりたい……強く……」
遼献は初めて自分の非力を悟った。
あまりにも彼は非力だった。




