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35 閑話 カイザーさんの奮闘

※別キャラ視点です。


※バグではなく仕様です。

 バーンバーン。

 ドシューンドシューン。

 ドカーン。

 シュバー。


 俺の動きは素早かった。


 俺は今三対一で戦ってるんだが、俺は激しく戦った。


 まあ、俺はもうゲームのコツを掴んでいるので、負ける心配はなさそうだ。


 別に謙遜する訳じゃないんだが、俺はもうチュートリアル終わってるし、それでそこの教官から『良くやった! これで君も一人前だ! さあ、人類勝利の日を目指して戦うのだ!』と褒められてる位だから、もう腕前は凄いのだろう。それに、俺の相棒の〈オーディン〉は、こないだ新しく買ったパーツを使って強化しといたから、こんな奴らに負ける訳がなかった。俺はカイザーだ。


 俺は何度も実戦を経験して、それで腕前が上がってる。目の前にいる〈ゴブリ

ン〉とか言う敵は、もう俺の敵じゃない。敵に向かって弾を撃ったら、命中してダメージになった。


 行けるぜ! 俺は思った。


 俺はそのまま、ライフルをまるでマシンガンのように連続して撃った。バキューンバキューン。それで命中した〈ゴブリン〉を一体倒した。


 それで、他の〈ゴブリン〉が弾を色々撃って来たのが見えたから、避けた。何とか避けられたけど、流石は俺の相棒の〈オーディン〉だ。へへっ、俺の腕前だけの成果じゃないぜ。


 それから、俺の反撃が始まった。


 バキューンバキューン。

 ドカーン。


 敵は俺の撃った弾に当たってやられた。俺が撃ったまるで驟雨しゅううのようなライフルの一撃は、敵は抵抗の隙を見せずに倒れる事となった。


「最後はお前だけだな」

 俺は最後に残った敵に向かってそう言った。


 残った〈ゴブリン〉は、こっちに向かって撃って来た。〈オーディン〉はちょっとかすったけど、それ位ではどうって事はなかった。


 ふと、俺は敵がかわいそうになった。俺を相手に、絶対勝てない戦いを仕掛けてくるなんて、敵もかわいそうによ。


 だけど、俺は敵に情けを掛ける事が、イクサに望む戦士にとって侮辱である事を知っていた。だから、情けを掛けずに倒す事にした。


「お前のラグナロクはここだぜ!」

 俺はライフルを撃って、この戦いに終止符を打った。


 そしたら、〈ゴブリン〉は倒れた。これで全滅だった。


「ふー」

 俺はそう言って、溜め息を出した。


 これで、結構金が貯まってるはずだ。MROでは、RPGとか見たいに敵を倒したら金が貰えるシステムになっているからだ。それだけじゃない。MROでは、敵を倒すと素材が貰えたりもする。それを使ったり売ったりする事も出来る。


 ここはアメリカだ。俺は帰る事にした。


 もちろん、アメリカって言っても、本物のアメリカじゃないぜ。ゲームの中のアメリカだ。流石VRゲームだ。まるで本物のアメリカみたいに良く出来ているぜ。


 セレーネに帰るにはトランスポーターを使わなければならないから、俺はそこに行く事にした。


 帰りと言っても楽なもんじゃない。油断していたら、いつどこで敵に襲われる

か、分かったもんじゃないんだぜ。ここは戦場だ。油断とかしてる奴から真っ先にやられるんだ。もちろん俺は油断なんてした事はないから、襲われなかった。


 そしたら、帰っている時に、別のプレイヤーが敵と戦っているのが見えた。どうやら、苦戦しているらしい。一体のMR(このゲームの人型ロボット)が、三対の〈ゴブリン〉に攻撃されている。他にも一体MRがいたけど、何もしてなかった。


 もちろん、ここは弱肉強食な世界だ。弱い奴が生き残れない過酷な世界だ。俺はその辺りの覚悟が出来てる奴だから良いけど、そうじゃない奴はやられる。俺はその辺分かってる奴だ。


 だから放っておいても良かったんだけど、俺はお人好しなところがある奴だか

ら、助ける事にした。


 俺は思うんだ。俺の〈オーディン〉は、こんな時のために与えられた力なんじゃないかって。だったら、俺の力であいつを救ってやるのが俺の義務じゃないのか?


 まあ、あれだ。ノブレス・オブラートって奴だ。へへっ。


 俺は早速〈オーディン〉をブーストダッシュさせた。ブーストダッシュすると、機体は高速移動出来るようになるから、それで急いだ。


 それから、俺はライフルを構え、〈ゴブリン〉を撃った。


 バーンバーン。


 驟雨のような一撃が、〈ゴブリン〉の脆い装甲を貫いた。〈ゴブリン〉はやられた。


「お前のラグナロクはここだったな」


 俺は倒れた〈ゴブリン〉に言った。おっと、うっかりオープン通信チャットって言って、みんなに聞こえる通信チャットをしちまった。独り言のつもりで言ったんだけど、うっかり聞かれちまったかも知れないな。別に格好を付けてるつもりで言ったんじゃないけど、格好良い奴だって思われちまうかもな。


 ラグナロクって言うのは、北欧神話に出て来る神々の最終戦争の事だ。本で見たから俺は色々知ってるんだ。もし聞かれたら、ちゃんと教えてやろう。


『……おい、お前』

 俺が助けた奴が言って来た。


「あ……はい、何だ?」

 まあ、礼を言われる程の事はしてないけど、折角だから、相手をしてやろう。


『……何邪魔してくれてんだよ?』

「……え?」


 ……え? 何か怒ってない?


 ……え!? 何で!?


『いや、俺ら別に助けて欲しいって言ってないよな? 何横殴りしてんだよ』

「……え? ご、ごめんなさい……」


 横殴りって何!? 俺何やっちゃったの!? え? いや俺、ただ助けたんだけど!?


『あー、落ち着けよ。こいつレベル低いし、まだ初心者なんだろ。……あのね君、横殴りって分かる?』

「……あ……いえ。すん、すみません……」


 もう一人の相手から話し掛けられた。


『相手を助ける時は、オープン通信チャットで一回呼び掛けるのがマナーなんだよ。『助けは要りますか?』って。そう言うのナシでやると、横殴りって言ってマナー違反になるの』

「……あ……はい……。すみません、ピンチに見えましたので……」


『セカンド機体の性能、実戦で試してただけだっての。〈ゴブリン〉程度で苦戦するかっつーの』

「あ……はい。…………しゅみません……」


 ……あれ? 何か俺、さっきから何か身体が震えてるんだけど。歯がガチガチして止まらないんだけど。


『ほら、あんま突っ掛かんな。悪気があった訳じゃないし。俺らもオープン通信チャットにしてりゃ防げた訳だし』

『ったく、分かってるよ。……そう言う事だから。次は気を付けろよ』

「…………はい……」


 そう言って、二機は去って行った。


 …………。


 ………………。


 ………………べ、別に全然気にしてないからな。さっさと帰ろう。






 セレーネに帰ってから、俺はクランをどうにかしようと思った。


 クランと言うのは、色々な人達と仲間を組んで色々やる奴の事だ。このMROにはそれがあるから、俺は入ったりしようかと思ってるんだ。


 俺はもう実戦とかで経験積んでいるから、戦力としては申し分ないはずだ。だから、もしクランに入ったら、戦力になるだろう。俺一人でもかなり行けるんだが、このゲームは仲間と一緒に戦ったりするのがあるから、まあ俺の実力を認める奴となら、組んでも良いだろう。


 俺は良く一人で行動とかしてるし、確かに目立つのは好きじゃない。けどそれ

は、能あるタカが爪を隠してるみたいに、俺は力をひけらかすような奴じゃないからだし、別に一匹狼とか気取ってる訳じゃない。


 まあ、俺は普段クールな奴だから、群れたりしないけどな。だから、勘違いとかする奴もいるだろうけど、俺は認められた奴とかには結構フランクなところもあるんだぜ。へへっ。


 クランに入るには、クランマスターに認められなければいけないから、まずはそのクランマスターに会わなければいけないんだ。それには、まずメールか何かを送ったりして、連絡を取ったりしなければいけないんだ。


 それで、俺は早速連絡を取ろうと思った。


 そのためにはまず、オペレーターデバイスからメニューを開いた。画面の隅っこに、タマちゃんがいた。


 おおう、本日も可愛いですねえ。


 ちなみに、このタマちゃんにタッチすると、ゲームのアドバイスとか色々教えてくれたりするぞ。


 ……おおーっと! そこの諸君! 何かエッチな事考えてるな! 一体どこをタッチしようってんだー? 俺の目が黒い内は、そうは問屋が下ろさないぜ!


 ……つんつん。


『敵機に照準を合わせた時のカーソルの色は、黄色はカスリ、橙は命中、赤は直撃判定を表してますよ』


 おおう、指が滑った! スペシャル情報ありがとうタマちゃん!


 まあ、ここに表示されてるタマちゃんはデフォルメだからな。悩殺おっぱいを触ろうったって、そう上手く行かないんだぜ! 残念でしたー!


 ……つんつん。


『フィールド上には時折、行き、あるいは帰り専用の片道ポーターが設置されている事もあります。一度登録すれば、自由に使えますよ!』


 そうだったのかー! サンキュータマちゃん!


 こんな事やってたら、いつまでたっても先進まねーよ! さっさと先進むぞー!


 ……つんつん。


『MRはオプション画面から登録すれば、音声でも呼び出せるよー。不意に反応しないよう、脳波設定を忘れずにねー』


 ギン、おめーじゃねーよ!


 俺はクラン検索を掛けてみた。色々出て来た。


 なになに……。


咆龍ほうりゅう騎士団』。中々格好良い名前だな。


『エスペランザ』。おお、英語だから意味は分からんが、中々センスある名前じゃねーか。 


『ネオ平家』。平家って、確か昔義経とかに負けた奴らだよな。どうせなら、勝った方にすりゃ良いのに。


『超最強絶対無敵団』。……何だよ、この妙ちくりんな名前は。


『モーツァルト&リスト』。モーツァルトって、確か結構有名な音楽家だったよ

な。良く分からんけど、音楽が好きな奴の集まりらしいな。


 色々あった奴を、俺は見渡した。うーむ、悩むぜ。


 悩んだ結果、俺のセンスに合う名前の奴を選んだ。『ブラッディ・バレット』ってところだ。


 早速、メールを送らなければならない。さてさて、早速メールを書きますか

ね……。


 ……。


 …………。


 …………ええっと、こう言う時って、『よろしくお願いします』で良いのか

な……? じ、じゃあ早速入力を……。


 ……。


 …………。


 …………やばい。さっきから心臓バクバクいってる。手の震えが止まらない。すげー息が乱れる。


 ……え? いやだって、初めて会う人にメールとか送って良いの? 相手迷惑じゃない? 馬鹿だとか思われない? もし凄い怖い人だったら?


 どうしよう。キーにタッチするだけなのに、何かすげー緊張する。


 ……で、でも、何とか入力出来た……。


 ……あ……後は、送信押すだけ……。


 ……。


 …………。


 …………やべえ。手ぇ動かない。胸が苦しい。……え? 何で他の人達は普通にメールとか送れるの? 何で?


 ……怖い。マジで怖い。いや、ヤバいってこれ絶対。


 ……うわあ!?


 何か警告タグ出て来たし!? え!? 脈拍上がり過ぎてんの俺!?


 ヤバいってこれ!?


 無理無理無理無理無理無理無理無理!! 無理!! メールとか絶対、無理!!


 俺は慌ててメニューを閉じた。閉じたら、一気に気が楽になった。


 ……。


 …………。


 …………クランとか、無理。


 …………もう今日は落ちよう。


私の書は水だ 偉大なる天才の書は酒だ

誰もが飲むもの それは水だ


――マーク・トウェイン

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