15 閑話 カイザーさんのMRO
※別キャラ視点です。
※バグではなく仕様です。
「遂にこの日が来たな……」
俺は俺の部屋の中で独り言を言った。
俺の名前は石田将大。今年から高校生になった人だ。
俺は入学祝いとか貯金とかを下ろしたので、遂にCosmosを買ったのだ。
Cosmosとは、VRゲームと呼ばれるもので、リアルなゲームの世界に行って実際に身体を動かしながらゲームをする奴だ。それを買ったので、今からやるところだ。
思えばCosmosが登場したのは、俺がまだ中学生だった時の事だった。あの頃から大人気だったCosmosは、世間で大ブームだったから、俺も欲しかっ
た。
だから俺も、親に買ってくれって何度も頼んだんだが、
『遊んでばっかいないでアンタ、勉強しなさい』
……とか言われた。買う事が出来なかったんだ。
そのCosmosが、遂に俺の目の前にある。こいつは運命だ。
そう。『運命』って奴だ。
『運命』が、俺の前に姿を現し、その扉を開いたんだ。
へへっ。こいつは正に運命だぜ。
逸る気持ちを抑えて、俺はまず色々準備する事にした。
まず、部屋の中の奴を色々と見た。良かった。
それから、俺は、ベットの上に横になって、寝た。それから、Cosmosを頭に付けた。それから、『望郷のムーンラビットオンライン』を始める事にした。
『望郷のムーンラビットオンライン』とは、Cosmosで出来るロボットゲームだ。色んなとこで超人気で、一番売れてるゲームだ。それを俺は買ったんだ。
それを、今から早速するところなんだ。
逸る気持ちを抑えて、俺はスイッチを入れた。
そしたら、ゲームスタートして、俺の意識はまだ見ぬVRの世界へと旅立って行った――
「これがゲームか。流石リアルだな」
俺は言った。
ここはゲームの中だ。俺は色々と見渡した。
辺り一面、真っ黒だった。だけど、ジャンプとかすると、ちゃんと床があった。
『Cosmosへようこそ』と出てた。俺が『Touch 触れて下さい』と出ていた奴に色々と触れたら、ゲームが始まった。
ゲームが始まったので、俺が扉みたいな奴に入ったら、早速キャラクターメイキングが始まった。
キャラクターメイキングとは、自分のキャラクターを作る奴の事で、色々なキャラクターを作る事が出来る。髪とか、色々と調整出来るので、俺は自分の分身を作り上げた。
まずは名前だ。
俺の名前から『Masahero』――マサヒロとしようかとも思ったが、考えた末に『Kaiza』――『カイザー』と名付ける事にした。英語で『皇帝』を意味する名前だ。名前被りとかで駄目だったりする事とかあったりするけど、俺の場合は一発でOKだった。
次に、外見。
さらりと流れるような美しい銀髪と、整った顔立ち。一見柔和で穏やかそうに見えて、その内に力強い信念と、決して悪を許さない正義の志を秘めた瞳。どこまでも冷静沈着であると同時に、静かに燃え上がる熱い闘志、そして何より高潔なる
『義』の心を秘めた、まるで、俺の内面をそっくりそのまま映し出したかのようなキャラクターだった。実際の俺もクールなタイプだが、それは表面的だ。
現実で俺の本質を見抜けず馬鹿にしている奴が見たら、声も出ない事だろう。
「こ……これが石田だって……? 俺らなんかより軽く格上じゃねえか……!」と言う姿が目に浮かぶ。
けどな。これが本当の俺なんだよ。
表には出してない、真の俺なんだよ。
皮肉なもんだぜ。バーチャルの世界で真の俺が出るなんてよ。
服はかっこ良さそうのを選んだ。
次に機体名だ。言ってしまえば、これは俺の相棒の名前を決める、大事なもの
だ。生半可な覚悟で決める事は出来ない。俺の相棒として、相応しい名前でなくてはならない。
幸いにも俺は準備が良かったので、予め名前を用意していた。
その名も――〈オーディン〉だ。これは、北欧神話と呼ばれる神から取った名
だ。
北欧神話について解説しておかなければならないだろう。北欧神話とは、数千年前以上もの大昔、ヨーロッパとかがあったところらへんの北欧と言う国で語り継がれた神話だ。オーディンとは、その神話の最高神だ。他にも、ロキとかトールとか色々出て来る。
まあ、自慢とかする訳じゃないが、本とか読んだ俺は詳しいからな。こう言う名前とかもさらりと出て来るもんさ。
機体の色は黒。リアルの俺の孤高の一匹狼の部分を表している。
全ての設定を終えた俺は、『望郷のムーンラビットオンライン』の世界へと旅立って行った――
「これがゲームか。流石リアルだな」
俺は感動して、早速色々見渡した。高い建物とかが沢山あって、まるで現実みたいにリアルな世界だった。
『新人操縦者さん、セレーネへようこそ』
『ようこそ!』
突然目の前に、一人の美少女と一匹のカエルが出て来た。
『まずは自己紹介を。このセレーネでナビゲーションを務めさせて頂きます、私
『タマ』と――』
『オイラ『ギン』です』
なるほど。いわゆるナビゲーションって訳か。へへっ、親切だぜ。
タマは頭にウサ耳を生やした美少女で、短くて黒い髪とくりくりと可愛い目をしていた。
そして……全宇宙の男子諸君、お待たせしました! 良ーく聞けよ、凄っげえ重要な情報だ!
ばららららららら……ばーん!
何と……。
タマは……。
何と!
巨乳だ!
そりゃあもう、はち切れんばかりにおっぱいが大きい!
うーむ。思わず視線が移っちまうぜ。
あ、いやいや。レディーのおっぱいをあんまりジロジロ見るのも失礼だしな。
ここは、紳士として我慢我慢!
……ちらり。
いいや、いかんいかん! 我慢だ、カイザー!
……ちらり。
うーむ、ついつい視線が引き寄せられてしまう。まるで視線のブラックホール
だ。
これ以上は話進まねーっつーの! 俺はクールだぜ。
……ちらり。
ギンはカエルだった。
『さて、まずあなたを『セントラルタワー』へと案内させて頂きます』
タマにそう言われたら、矢印が出て来たので、行った。
「ようこそいらっしゃいました、オペレーター様」
セントラルタワーの中で、女の人が言った。その後、色々聞かれたから答えた。
「では、こちらをどうぞ」と言われて、俺にオペレーターデバイスを手渡された。この機械は、色々な事が出来る機械で、この『望郷のムーンラビットオンライン』のゲームの中で、とても重要なものだ。メニューを表示させたり出来たり、色々な事が出来るからだ。
「後の事はメニュー画面をご参照下さい」
話は終わった。メニューを開いた。
『登録は済みましたね、カイザー様』
そうしたら、タマちゃん登場。おおう、俺の名前を呼んでくれるなんて、照れちゃうぜ。
タマちゃんの話によると、地球を襲っている奴らはテロリストが起こって機械が暴走して、それで人類が負けて月にやって来たそうだ。つまり、地球にいる機械達を倒して平和を取り戻すのが俺達オペレーターの使命なのだ。
まあ何はともあれ、俺はようやくスタート地点に立てたって事だ。
チュートリアルって奴があるらしいが、俺はやらない。実戦で鍛えれば良いからだ。実際にMRに乗って戦う事で、腕前は磨かれたりするからだ。
俺は色々と見るために、メニュー画面を開いた。これを使ったら、例えば、他のプレイヤーのオペレーターレベルや名前を見る事が出来る。
俺は取り敢えず、そこを歩いていたプレイヤーを見てみる事にした。さてさて、どんな奴ですかね……。
『オーディン LV24』
…………。
あれ……。
何で俺の機体名と同じ……?
…………。
そうか。こいつも北欧神話に詳しい奴って事か。なるほどな。
まあ、俺と同じく北欧神話を知ってる奴も、探せばいるもんだな。多分、ロキとかも知ってるだろう。同じレベルの知識を持ってる奴なら、俺の価値も分かるだろう。このゲームは知らない人達とチームやクランを組んで戦う事が醍醐味なゲームだからな。ここで会ったが百年目、早速話し掛けてみよう。
「あの……すみません……」
「はい、何か?」
「あ……その名前……」
「はい?」
「北欧神話とか、かっこ良いと思います……」
「あ……そうなの」
「……頑張って下さい……」
「あ……あり、がとう?」
「…………」
まあ、相手も忙しそうだし、ここは気を利かせて退散だ。
まあ、最初はゲームに慣れる必要がある。まずはソロで戦って、それからゲームのコツを掴んでおく必要があるだろう。
じゃあ、早速行きますかね。
俺はメニューを呼び出し、説明書で見た通りにワープする事にした。
…………。
……あれ?
……何でワープしないの?
「これがゲームか。流石にリアルだな」
あの後、トランスポーターに行ってからワープ出来た。タマちゃんに色々教えてもらった結果だ。
俺が降り立った地球は、広場みたいだった。
ものすごく広くて、まるで本物のアメリカみたいにリアルだった。
そう言う訳で、俺は早速、俺の相棒である〈オーディン〉を呼び出した。呼び出してから、乗った。
「へっ、中々のもんじゃねえか」
コクピットに乗った俺は、早速動かした。〈オーディン〉は、俺が操作した通りにその巨体を動かした。
「じゃあ、早速行くぜ」
俺は早速、過酷な戦いに身を投じる事にした。地球を取り戻すために。
「ああもうっ!? 何で!?」
戦いは弱肉強食の世界だ。生半可な気持ちで生き抜く事が出来る程、甘いもんじゃない。
たまに実戦の恐ろしさを知らないで調子乗ってる奴とかいるけど、そんな気持ちで生き抜く事が出来る程、実戦は甘くない。
俺は実戦の恐ろしさを知っていたから油断はしてないけど、それでもピンチになる位に実戦は恐ろしいものなのだ。
……て言うか、このゲームおかしくない!?
何か撃っても当たらないし、当たってもアニメみたいに一発で倒せないし、防御とかのやり方良く分からないし、武器とかの選び方分からないし、弾切れになったらどうすれば良いのか分かんないし!
そう言う訳で、今俺は敵から逃れている最中だ。必死になって機体を動かして逃げている。これは俺のせいじゃない。イージーモードとかが付いていない、このゲームがおかしいんだ。
敵は三体。何か〈リーゼ〉とか言う名前の敵で、そこら辺にいたところを、俺は攻撃したのに、倒せなかった。しかも、敵なのに攻撃して来て、俺の〈オーディ
ン〉のHPみたいな奴であるAPがやられて、ピンチになった。
普通、俺が撃ったら敵倒れるもんだろ!?
ええい、このクソゲーめ!
俺は必死になって逃げた。
ブーストダッシュって奴を使って、逃げた。
あれっ!? 急に走れなくなったんだけど!?
ブーストゲージもうないじゃん! 何で勝手に減ってんだよ!? おかしいだろこのゲーム!
俺が死にそうになって、パニクってたところだ。
『あのー、そこのカイザーって人。助けに入った方が良いですかー?』
誰かから話が聞こえて来た。
「助けて下さい! 早く!」
俺が叫んだら、四機の巨大ロボット『ムーンラビット』――MRが姿を現した。多分、俺よりも進んでいる人だった。
バンバンバンバン。
バシューンバシューン。
ドカーンドカーン。
熟練者の、鮮やかな動きだった。
あっと言う間に、敵は倒された。
『大丈夫でしたかー?』
男の人の声だった。
「あ、ありがとうございます」
『この辺は、始めたばかりの人じゃ、ちょっとキツいと思いますよ?』
「あ……すみません……」
『あーいやいや、別に責めてる訳じゃなくって』
俺は彼らのレベルを見てみた。みんな、10とか20とか越えてる人達だった。
『何でまた、こんなとこに居たの?』
今度は女の人の声だった。
「あ……あ、いや、その……」
『ん? どしたの?』
「は、あのはい、あ、じゅつは……」
『じゅつ?』
『緊張し過ぎだって、君』
『さてはボーイ、リアルで女と話す機会がないと見た』
また別の二人の男の人の声がした。そう言って笑ってた。
『こら、初対面の人をからかうんじゃない。まあ大方、ミッションとか受けずにいきなり地上に降りて、ここに迷い込んだ、とかじゃないかな?』
「あ……はい、そうです」
『最初は簡単なミッションを受けて、それから徐々に遠出した方が良いですよ』
「あ……はい」
俺は相手からの質問にテキパキと答えた。
まあ俺なら十分通用するだろうけど、謙虚な一面もある俺は、アドバイスを受けた。
『君、名前はカイザーなんだ。強そうじゃん』
「あ……はい、どうも……」
お、女の人が食い付いて来た!? 何!? 何が起こってるの!?
え!? マジで!? 本当に!?
や、やばい! 落ち着け!
こ、これはチャンスじゃねえの!?
ここから話が膨らんで、それで、それが切っ掛けで仲良くなって、それからリアルで会うようになって……!
…………!
……ふっ。お、俺の名前は、まあ別に大した事ないからな。まあこれくらい普通だから、驚く事はないんだよなあ。
特に機体名、俺とかまあ別に格好付けてる訳じゃないから、まあ別に驚かれるような名前じゃないからな。別に自慢とかする訳じゃないし、うん、別に北欧神話とか詳しくても普通だし、全然凄くないし。
まあ、別に期待とかしてないけどな。『機体の名前は何?』って聞かれたりとか別に何でもないからな。
『機体の名前は何かな?』
来たああああああああっ!!
…………。
いや別に普通だって! 普通だって!
「〈オーディン〉って言います」
ほら北欧神話ですよ! オーディンって最高神の名前なんですよ! いやー凄いじゃん君そんな事知ってるの詳しいねー私ビックリしちゃった天才じゃないのセンス良いわねーカッコイイわー謙遜してるところもステキ好きです付き合って下さい
『あ、君のも〈オーディン〉なんだ? ウチらのマスターもだよ』
………………え?
『まあ、定番だよなー。こないだもオレ、別の奴が名付けてるの見た事あるし』
『このゲーム、名前被りNGなのはプレイヤーネームとクラン名だけだからな。プレイヤーネームにしても、読み仮名設定は被ってもOKだし』
………………え? いや、北欧神話……。
『まあとにかく、あまり無理せずに進めて行くのが良いと思うよ。それじゃ、俺達はミッションに行くところだから、これで。帰り道分かる?』
………………。
「あ、はい……」
男の乗る〈オーディン〉は、俺の前から去って行った。
………………。
…………。
……。
……帰ってチュートリアルしよう。
身は不繋の舟の如く、一に流行坎止に任す
(この身はあたかも繋げられていない小舟のように、流れるも止まるも任せきりにする)
――洪 自誠 『菜根譚』より抜粋




