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窮地の銀狐

前に進むも地獄、後ろに進むも地獄な豚です。

しかも2匹の片方がこっちに向かっているのかどんどん戦う音が近づいてきて具合が悪い。

いっそ一匹のほうに進むか?

いやアレはヤバい。

近付くだけでも死にそうだ。

どう考えても良くない。

しかしここでじっとしてても間違いなく巻き込まれる。


なんでこっちに来るかな・・・泣きそうになってきた。

取り敢えず二匹の方は手前の一匹より奥の奴の方が強いのは確かだ。

逃げてる奴と共闘すればキマイラを食べた今倒すことはできる。


はぁ、ここに安らぎはないのか。

俺は溜息を吐きながら戦闘音が近づく方向へと向かった。


ーーーーーーー


不味い不味い不味い!


9本の銀色の尾を泥だらけにしながら奥へ奥へと逃げる。

裏からは金色の二つの双眸がその大きな口を歪めながら私を追いかける。

まさか看破されるとは思ってもみなかった。


この場所に投げ込まれて2ヶ月。

いかに敵が強いといえども妖狐、しかも最高位である9本の尾を持った私は自慢の狐火と幻術の前に敵はいなかった。


それもそうだろう。森では聖獣と呼ばれ人間たちですら私の敵ではなかったのだ。

ここでもそうだと思った。

それが通用すると驕っていた。


伝説と呼ばれ地竜種の最高位であると言われるバジリスク、それも変異種と呼ばれる特異個体と出会う前までは。


「キュアワンッ」


石化の魔眼が掠めたのか更に右足が重くなる。

逃げなければ殺される。


命の危機を感じ、蒼焔をバジリスクに向けて放つ。

普通の竜種程度であれば身を焼くはずの焔はその鱗の前に一切の効果を見せずに消えていく。


私の攻撃の隙を逃がさないとばかりに再び石化の魔眼が体を襲う。

もう逃げるには体が重すぎる。

私は重くなった体を引き摺り視線からなんとか外す。


あと2回。いや重くなったことを考えると1回で完全に体は動かなくなるだろう。

動かなくなればあとは食べられるだけだ。

私は体が小刻みに震えるのを感じた。


なんで下の階層に降りてしまったのか。

なんでそもそもこんな所に飛ばされてしまったのか。

後悔や理不尽に思わず、情けない鳴き声が溢れる。


「グルルル・・・」


そんな私が面白いのかバジリスクはその目を細め、醜悪な口を更に歪めた。

あぁ、私はここで終わるんだ。

きっと私が狩ってきたやつらもこんな気持ちだったんだろうな。

私の体が重くなるのを感じる。

せめて死ぬのならば痛みや恐怖は少なくしたい。

そう思って瞳を閉じた。


「グルああああああ!」


バジリスクの咆哮が響く。

バジリスクの口が側まできているのか生温い風と臭い息が私を包む。


あぁ死んだ。

私の全身におびただしい生暖かい物がかかる。

匂いからして恐らく血なのだろう。

痛みはない。

おそらく麻痺してしまったのか。


「ギュルォッ・・・」


バジリスクの気持ち悪い何かが詰まったような声とともに重いものが頭に落ちてくる。

あまりの重さに私は思わず足を踏ん張った。


ん・・・?踏ん張った?


石化の魔眼が掛かっているはずの私が足に力が込められる?

何かがおかしいと思った。

ふと温かいものが頬を撫でる。

懐かしい感覚だ。

子狐の頃両親にされたような暖か優しいものが一定の間隔で頬を撫でる。

私は恐る恐る目を開ける。


其処には雄々しい、そして優しい金色の瞳を備えたキマイラのような可愛い豚が私を舐めていた。

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