急展開の豚。
先ほどまでと打って変わり重い空気が酒場を包む。
リディアは憔悴してるし、ディーは苦々しい顔をしている。
俺はというと、急展開に着いていけず、「エルドレイノ大火山丼」を黙々と食べている。
いやだってさっきまで弄られてたんだぜ?
いきなりシリアス感出されてもなついてけねーって。
俗に現実逃避とも言う気がしないでもないけど。
「やっと見つけたのよ・・・。ディーも知ってるでしょう?私に従魔士の素質が無くて魔物に好かれないことは」
「・・・あぁ」
何やら重い話が始まった。
シリアスな場面なのに一人は泥酔して鼾をかきもう一人は店の亭主に「流石豚の旦那!無尽蔵の胃袋でさぁ!」とか言われながら特大豚丼を喰ってるってなんかシュールだな。
おっと顔に出てたのか空気嫁的な視線をディーから感じるので大人しくしとこう。
「小さいころから父さんに憧れて色んな魔物に近づいたけど大抵襲われるか、逃げられる。教本に書いてある内容が本当なのか疑ったことすらあるわ・・・」
小さい頃を思い出しているのかリディアは遠い目をしながら語る。
小さい時から魔物に近づいてたとかどんな少女だったんだ・・・。
「それでも、諦めたくなかった。グラドにも言われたしね。だから私はグラドを離さ「ダメだ」・・・え?」
リディアの言葉をディーが遮る。
普段冷静なイメージだったのだが、その表情には焦りと苛立ちのようなものが浮かんでいた。
「ダメだ。何故そこまで従魔士にこだわる。親に憧れて、にしては行き過ぎだ。意地になってるだけじゃないのか?」
強い口調で問いかけるディーにリディアは言い返そうとするが、口籠る。
「それでも、私は・・・」
絞り出すような呟きの後、リディアは泣きそうになりながら酒場を出て行ってしまった。
それを見送ったディーは小さく溜息をつき、俺の傍に近寄ってきた。
んー。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないけど、面白くないわー。
短い間だったけど仲間として上手くやってこうと思ってたんだけどなぁ。
不満げな俺をよそに近づいてきたディーは先ほどまでの真剣な表情とは違う、邪魔な虫を見る目で俺を見据える。
「あいつは、いや・・・あの方は昔から従魔士に憧れていらっしゃった」
・・・あの方?なにその言い回し。
不穏すぎるんですけど。
「しかし、本当にあの方に近寄れる魔物がいるとはな・・・。リディア様には従魔士なんかになってもらっては困るのだ。リディア様の命を救ってくれた恩を仇で返すようで悪いが、消えてくれ」
そういいながらディーが俺の体に振れると、同時に足元に魔法陣が浮かび上がる。
急展開についていけないまま、気付けば俺は洞窟の中へ牛丼と共に飛ばされるのであった。




