再会と森を出る豚。
目の前に広がるのは巨大な岩。
いや、もっと要塞だとか巨大な壁だとか言い方は色々あると思うんだけど
万年日本から出たことがない俺からしてみれば灰色の大きな四角い岩って感想しかでない。
あれからリディアと森を抜けてリディアが所属していた冒険者ギルドがある街へと向かった。
森の中では戦闘らしきものがあるかなとか思ったけど、
俺のビビりレーダーが優秀だったのかヤバそうな所を避けて通った結果危なげなく森を抜けることができた。
リディアも俺の探知系能力に少し驚いたが、
言葉を理解し、文字を書く魔物の段階でもう普通の魔物と思わなくなったのかそこまで態度は変わらなかった。
いや、変わったといえば変わったか。
仲間になってからというもののやたらと距離が近いのだ。
側から見れば主人の足元に擦り寄る豚にしか見えないだろうが、逆である。
少しでも離れようものならまるで見えない糸に繋がれているかのようにくっついてくるのだ。
美人にくっつかれて喜ばない男はいないだろうが、何時間も同じ距離を保ちながら歩き続けられるとどうか。
鬱陶しいを通り越して俺は若干の怖さを感じている。
まぁそれ以外は特に変な事もないので放置を決め込んでいるわけだが。
「さて、ついたわ」
森から抜け、町から街道沿いに延びている人の列を尻目にすたすたと詰所のような壁に隣接する小屋へと向かうリディア。
おいおい、こんだけの人が並んでるのにすっ飛ばして詰所に向かうとか・・・。
もしかしてリディアっていいトコのお嬢様とかなにかか?
これだけ綺麗な女性だ。
異世界物のテンプレ的にはあっってもおかしくはないだろう。
そんな疑問も詰所につき、遠目からは視認できなかったが、列の横にあるもう一つの入り口を見て疑問は氷解する。
あぁなるほど、列の方が一般市民用でこっちの方が冒険者とか傭兵とかのものなのか。
入り口に吊るされた相変わらずのたくったような字が書いてあるのを見て俺は納得した。
まぁそうだろうな。
討伐やら何やら終わった後なのにこの列に並ばなきゃいけないとかやってられんだろうし・・・。
そんな事を考えると不意に身体が浮き上がる。
突然の出来事に動揺したが、リディアに抱き上げられたのを知り落ち着きを取り戻す。
リディアに疑問を投げかけるように小首を傾げる。
「従魔登録してないから衛兵に危険じゃない事を示さないといういけないの、少し大人しくしてもらっていいかしら?」
その質問に短く鳴き答える。
大人しくすることに決めた俺は辺りを見渡す。
やはり、異世界モノの定めなのか黒髪の人間もいない。
黒眼っぽいのはいるが厳密には茶色にはいるだろうし。
そしてリディアの髪の色を見てから薄々感じていたが、やはり髪の色が多種多様だ。
コスプレ会場とかいったらこんな感じなんかなー。
ぼけーっと列に並んだ人々を眺めていると、後ろから声をかけられた。
勿論リディアが、だが。
「リ、リディア・・・?」
驚きと困惑を孕んだ声をあげた先にいたのは大剣を背負った赤髪の大男と、腰から短剣を下げた如何にも斥候職といった金髪の男。
振り返ったリディアは俺を降ろすと弾かれたように飛び出した。
「エルガ!ディー!」
二人の男も先ほどと打って変わり泣きそうな表情を浮かべながらリディアへと駆け寄り抱きしめ合う。
そんな様子の三人にいいねぇ、青春だねぇと、訳のわからない感想を抱きながら置いてきぼりを食らう豚であった。




