第3:ヒューエツ山
アオがアカデミーで試験を受けている間、世界のどこか別の場所で、何かが起きている。
【エンパイアー・オブ・セイント・ドミニカー】
エンパイアー・オブ・セーント・ドミニカー、この世界を支配した3つの国の1つ。
ドミニカのどこかで、2人の高位の人物の間で会合が行われている。
2人はソファに向かい合って座っており、開け放たれたカーテンの窓からは、陽光が差し込んでいる。
右側には、金髪で金色の髭を生やし、青い目をした男性がいた。彼は白い制服を身にまとっていた。その男性は、かなりがっしりとした筋肉質の体格をしている。
彼の背後には、金髪で青い目をした背の高い男が、ボディーガードとして控えていた。腰に剣を帯びている。
左側には、黒髪で黒い髭、男性がいた。洗練されたスーツを身にまとい、そばにはステッキが置かれている。体つきはかなり細身だ。
彼の背後には、2人のボディーガードがいた。
右側には、大柄な体格の男がいた。スーツを身にまとい、肌は浅黒く、両手は背中に回されている。サングラスをかけ、耳にはイヤホンを装着していた。
左側には、長い黒髪の女性がいた。男と比べると非常に小柄で痩せており、そもそもどうして彼女のような人物がボディーガードになったのかと不思議に思えるほどだった。彼女もまたスーツを身にまとい、サングラスをかけ、耳にはイヤホンを装着している。両手は背中に回されている。
右側に座っている金髪の男性が、紅茶を一口すすってテーブルに置くと、話し始めた。
「で?何しに来たんだ?大統領が亡くなって、忙しいはずなんじゃないのか?」
黒髪の男性の前に置かれた紅茶は、手つかずのままだ。湯気が立ち上る中、男は話し始めた。
「お気遣いありがとうございます。ですが……」
「新大統領に関する計画は、すでに進められている。」
「来週には発表されるはずですから、そのことは気にしなくてください。」
金髪の男性は、カップからもう一口、それもかなりの量を飲み込んだ。
「ふーむ」
黒髪の男は話を続けた。
「ヒューエツ山についてお話しするために来ました。」
【ヒューエツ山】
ヒューエツ山、緑が全く見当たらない、荒涼とした山。
ここは、3国の採掘スポットの1つです。
この場所は、スパイが送ってきたファイルから判明した。
昔、その山は緑豊かで、天然資源に恵まれており、地元の人々がそこで日々の暮らしを営んでいた。
これら3国が権力を握って以来、彼らはフーエツ山を採掘場に指定し、地元住民を意に反してそこで働かせてきた。
外から見ると、その山はかろうじて形を保っているように見える。しかし、その内側では、はるかに悪いことが起きている。
【ヒューエツ山 ー 中】
ヒューエツ山の内部は非常に広々としており、大きな開放的なスクエアのような空間になっていた。そこからは、山の奥へと続く小さな穴が、各階層にいくつも開いていた。
広々とした空間には、資源をぎっしりと積み込んだ大型輸送車、その他さまざまな採掘関連の車両が配置されていた。
そこには、資源を警護し、何らかの「事故」が起きるのを防ぐために配置されたカストディアも複数存在していた。
ここがヒューエツ山のメインエリアに過ぎないとはいえ、より奥まった穴の奥では、はるかに恐ろしい事態が進行している。
メインエリアの最下部には、鉱山のさらに奥へと続く坑道がいくつもあった。
一つの坑道。
坑道39。
現在、稼働中です。
坑道の中には、まるで栄養失調に陥っているかのような痩せ細った人々が大勢いて、つるはしを使って採掘作業を行っていた。
彼らは皆、まるで体に何のエネルギーも残っていないかのように、だらしない動き方をしていた。
内部の人々は、崩落を防ぐために木製の支柱を次々と置いてながら、前進して採掘を続けた。
彼らが掘り進める中、内部から小さくかすかな音が聞こえてきた。
「ギシッ」
彼らはそれを気に留めることなく、採掘を続けた。
「ギシッッッ」
ある作業員がそれに気づき、音がどこから聞こえてくるのかを確認してみた。
彼は音が聞こえてくる方へ近づき、柱の一本にひびが入っていることに気づいた。
彼はすぐに叫んだ。
「逃げろおお!!!」
彼が叫ぶと、柱が折れ、坑道が崩れ始めた。
【ヒューエツ山 ー 外】
ヒューエツ山から遠く離れた、その近くの海上で。
赤いフレームが猛スピードで接近していた。
この赤いフレームは三角形の頭部を持ち、背負った2振りの大剣を振るう。
赤いフレームの中には、荒っぽい風貌の男がいた。彼は茶色の髪とオリーブグリーンの目をしている。
見た目とは裏腹に、彼からは柔らかな声が出た。
「本当にここはあの場所? 特に問題があるようには見えない。」
彼の目の前に、ヴィクトリアさんのホログラムが現れた。
「はい、スパイからの報告によれば、ここは『3国』の採掘場の一つです。」
その後、フレーム内には、赤い点が記された世界地図が表示される。
ヴィクトリア、「これはスパイから提供されたデータに含まれるすべての場所です。」
フレームの中にいる人物は、頭を痛めたかのように振る舞った。
彼は痛みで一瞬目を閉じたが、再び目を開けたとき、その眼差しはより鋭さを増しており、口からはより荒々しい声が発せられた。
「つまり、それらすべてを破壊してほしいということか?」
ヴィクトリアは答えた。
「破壊するのではなく、中断させる。そこに配置されているフレームをすべて排除し、人々が自力で戦えるようにせよ。」
その言葉を聞いて、男は邪悪な笑みを浮かべた。
「了解。」
その男は、フレーム内部にあるレバーの1つを、最大出力の位置まで押し込んだ。
するとフレームの外側で、フレーム背後のスラスターが最大出力で起動した。
フレームは、背負っていた2本の剣を手に取り、全速力で山に向かって突進した。
【ヒューエツ山 ー 中】
坑道が崩落している。
坑道を支えていた柱が、1本また1本と崩れ落ちていった。
作業員たちは採掘用具を投げ捨て、坑道の出口に向かって走った。
ゆっくりと、1人が外へ出た。続いて2人、3人、4人と出ていった。
だが、坑道にはまだ取り残された人々がいた。
残りの者たちは出口に向かって走っていたが、崩落する坑道から逃げ切れるほどの速さはなかった。
坑道内にいた残りの人々は、崩落する鉱山に巻き込まれた。
残っていたのは、坑道の出口付近にいた2人だけだった。
彼らは走り続ける。そのすぐ背後では、坑道が崩落していく。
後ろにいた人物が、2人とも助からないと悟るまでは。
出口のすぐそばで、彼は先頭にいた人物を押して、こう言った。
「生きる」
先頭にいた人は出口から押し出され、地面に倒れた。
彼がそうしたのと同様に、坑道全体が崩落し、入り口は瓦礫で完全に埋まってしまった。
だが、その瓦礫の下、端の方に、手がのぞいているのが見える。
手は半分しか見えておらず、体の残りの部分は瓦礫の下に埋もれていた。
助けられた人物はあまりのショックに、その人の手の方へと這っていった。
彼はその手をしっかりと握り、自分の額に当てて、激しく泣いた。
警備員たちは、坑道が崩落したことに苛立っていた。
彼らは、坑道の前で泣いている男に近づくと、その襟首をつかみ、連れ去ろうとした。
「下がれ!」
だがその人物は抵抗し、死体のかたわらでじっとしていようと懸命に努めた。
「ううん!ううん!」
警備員は掴んでいた手を離した。
「今はそんな気分じゃない!」
その男は倒れ込み、死体の方へと這い戻ると、その手を握った。
警備員は彼の方へ歩み寄り、彼の腰にあった拳銃を掴んだ。彼は大型トラックの方へ顔を向け、それから大声で叫んだ。
「おい! 死体でも引き取ってくれるって言ってたよな?」
遠くから、とりわけ資材を積み込んだ大型トラックの1台から、声が聞こえてきた。
「はい!何でもいいですよ!」
警備員は、地面に這いつくばっている男の方へと顔を向けた。
「彼の言った通りだ。」
彼は拳銃を掴むと、這っている人物の後頭部に突きつけた。
彼は指をトリガーにかける。
「ちゃんと採掘しなかったのは、君のせいだ。」




