物差しを共有する条件
「測ったものを、北の支援に使える形で渡したいのです」
ラーメルトは、先ほど話した目印の用途から説明を続けた。トリスタットで向き合っているのは、王国、ハンザール、マギアード、辺境、神殿に属する相談相手たちだ。ここで伝えたかったのは、測定の細かな手順よりも、救援の仕事に何を使ってもらえるかだった。
「足りない物資を分けるなら、まず、同じ量と言ったときの基準を揃えたいのです。送り出す場所と受け取る場所で数え方が違えば、均等に分けたつもりでも、届いた量がずれてしまいます」
「何がどれだけ必要かは、困っているところから聞かないとね」
フルメアが添えた。数量を揃えることと、どこへ何を届けるかを決めることは、同じ仕事ではない。ラーメルトも、今ここで物資の割り当てまで決められるとは思っていなかった。
「距離も、その場で動く人の判断に使ってほしいのです。ある地点から前線まで、どれくらい離れているのか。まだそこで対応できるか、人を下げる必要があるかを考える材料になります」
バルドロフの持ち場で置いた杭を思い出した。夜、照らされた目印へ妖魔が近づいていた。そこで必要だったのは、測った数字を読み上げることより、同じ場所を指して知らせることだった。
北の救援に同行した四人は、目印と明かりを使って位置の連絡を手伝った。ラーメルトが知らせ、バルドロフが人を下げる指示を出す。さきほど話したそのやり取りが、距離を何に使うかの答えになっていた。
妖魔が迫っている間は、連絡と退避が先だった。筆記は直接の危険を避けてから行い、落ち着いて読み合わせたのも、四人の対応に一区切りついた後だ。現場の支援をいったん区切った四人は、その経験を相談するためにトリスタットへ来た。北の救援全体が終わったという話ではない。
エノアは、北で使った目印の記録を相談相手の方へ向けた。数字を増やした記録として見せるのではなく、どう使ったかを説明するためだった。
「国や場所が変わっても比べられる基準を作りたい。ただ、それができるまで、北で試した連絡のやり方を手元にしまっておく必要はないと思います」
ラーメルトは辺境の相談相手を見た。
「まず、私たちの経験を、北の救援に関わる人へ伝えたいのです。そこで使えるかを考えてもらえる形にして」
話したいことの順番が定まった。広く使うための基準には、まだ相談すべきことがある。その一方で、あの持ち場で何をしたかなら、四人がここで説明できる。
ラーメルトは目印の記録へ視線を戻した。今度は、他の人へ渡す言葉として話すつもりだった。




