問いを同じ場へ
トリスタットで相談相手を前にすると、ラーメルトは手帳を開いた。王国、ハンザール、マギアード、辺境、神殿。それぞれに属する人が同席している。
四人で読み合わせた問いが、今は手元にあった。最初の行へ指を置き、エノアを見る。
「井戸で見たことから、お願いできますか」
彼女は帳面を開き、相談相手へ顔を上げた。
「道中の村で、井戸の水面に氷が見えました」
「その井戸のことですね」
ハンザールに属する相手に尋ねられ、エノアは見た場所を限定して答えた。ほかの場所も同じだったと伝えられるわけではない。
続いてラーメルトが、距離の目印を使ったときのことを話した。持ち場からの距離を確かめて杭を置き、近い側、遠い側と呼ぶ場所を共有したこと。夜に目印の近くへ進む妖魔を見て、声でその場所を知らせたこと。
杭の呼び方を口にすると、あのときのように喉へ力が入った。
「下がるようにという指示があり、それを受けた人が下がる動きを見ました。私の目に入っていた範囲でのことです」
マギアードに属する相手が、手帳からラーメルトへ視線を戻した。
「目印のところを見ていたのは、あなたですか」
「はい。ですが、その先まで見届けたわけではありません」
息を継ぎ、問いを書いた頁へ移る。井戸の話と杭の話を、ほかの場所でも起きたことのように広げずに伝えたい。そのために相談することがあった。
「ほかの場所の観察とも比べたいのです。同じものを見ていると言うために、何を揃えて確かめる必要があるでしょうか」
王国に属する相手が身を寄せた。ラーメルトは手帳を押さえる指を緩める。エノアが横から頁を見た。
「誰が見たのかも、一緒に尋ねたいです」
ラーメルトは問いの脇へ、見た人と、その人に見えていた範囲を書き添えた。フルメアが紙の端を指す。
「場所が変わっても同じように見えるか、そこから確かめたいのね」
彼女の指が離れるのを待って、筆を進めた。
「手伝う方の相談も、あったよねー」
レオンハイトの声に、下の行へ目を移す。観察に気を取られ、読み飛ばしかけていた。
「支援については、誰のどんな困り事を、誰がどこで聞いたのか。何を先に伺う必要があるかを相談したいです」
神殿に属する相手がこちらを見ている。ラーメルトはその視線を受け、言葉を続けた。
「困り事を聞くことと、それに何を約束できるかは、分けて考えたいと思っています」
辺境に属する相手にも顔を向けた。誰かへ引受けを求める言葉は、まだ続かなかった。
四人の手元にあった問いを、違う所属の人々の前で口にできた。ラーメルトは書き足した箇所を見直し、答えを入れる余白を残して筆を収めた。




