↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/124

問いを同じ場へ

 トリスタットで相談相手を前にすると、ラーメルトは手帳を開いた。王国、ハンザール、マギアード、辺境、神殿。それぞれに属する人が同席している。

 四人で読み合わせた問いが、今は手元にあった。最初の行へ指を置き、エノアを見る。


「井戸で見たことから、お願いできますか」


 彼女は帳面を開き、相談相手へ顔を上げた。


「道中の村で、井戸の水面に氷が見えました」


「その井戸のことですね」


 ハンザールに属する相手に尋ねられ、エノアは見た場所を限定して答えた。ほかの場所も同じだったと伝えられるわけではない。

 続いてラーメルトが、距離の目印を使ったときのことを話した。持ち場からの距離を確かめて杭を置き、近い側、遠い側と呼ぶ場所を共有したこと。夜に目印の近くへ進む妖魔を見て、声でその場所を知らせたこと。

 杭の呼び方を口にすると、あのときのように喉へ力が入った。


「下がるようにという指示があり、それを受けた人が下がる動きを見ました。私の目に入っていた範囲でのことです」


 マギアードに属する相手が、手帳からラーメルトへ視線を戻した。


「目印のところを見ていたのは、あなたですか」


「はい。ですが、その先まで見届けたわけではありません」


 息を継ぎ、問いを書いた頁へ移る。井戸の話と杭の話を、ほかの場所でも起きたことのように広げずに伝えたい。そのために相談することがあった。


「ほかの場所の観察とも比べたいのです。同じものを見ていると言うために、何を揃えて確かめる必要があるでしょうか」


 王国に属する相手が身を寄せた。ラーメルトは手帳を押さえる指を緩める。エノアが横から頁を見た。


「誰が見たのかも、一緒に尋ねたいです」


 ラーメルトは問いの脇へ、見た人と、その人に見えていた範囲を書き添えた。フルメアが紙の端を指す。


「場所が変わっても同じように見えるか、そこから確かめたいのね」


 彼女の指が離れるのを待って、筆を進めた。


「手伝う方の相談も、あったよねー」


 レオンハイトの声に、下の行へ目を移す。観察に気を取られ、読み飛ばしかけていた。


「支援については、誰のどんな困り事を、誰がどこで聞いたのか。何を先に伺う必要があるかを相談したいです」


 神殿に属する相手がこちらを見ている。ラーメルトはその視線を受け、言葉を続けた。


「困り事を聞くことと、それに何を約束できるかは、分けて考えたいと思っています」


 辺境に属する相手にも顔を向けた。誰かへ引受けを求める言葉は、まだ続かなかった。

 四人の手元にあった問いを、違う所属の人々の前で口にできた。ラーメルトは書き足した箇所を見直し、答えを入れる余白を残して筆を収めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。