札に残る手掛かり
エノアが筆を収めた帳面を、ラーメルトが見ていると、兵がバルドロフの前へ札を示した。
「あなたの持ち場で拾いました」
四人もその手元へ顔を寄せた。焼けた部分のそばに、線が残っている。
何かが書かれている、と思いかけて、ラーメルトは目を凝らした。線は見える。だが、何を表しているのかは分からない。フルメアも覗き込んでいたが、説明する声は出なかった。
「見えるところを、書いておいてもよいですか」
兵が頷いた。ラーメルトは手帳を開き、焼けた部分と線について記した。レオンハイトが札を見る間、手帳を少し引いて場所を空ける。
札と文字を見比べる。書けたのは短い二行だった。何のための札かという説明がないだけで、記録まで足りないように感じてしまう。
フルメアが手帳へ目を落とした。ラーメルトは彼女にも見えるように傾け、次の行を空けた。
「拾った場所については、この方から聞いた話として残します」
エノアが兵へそう言い、帳面に筆を走らせた。ラーメルトも、バルドロフの持ち場で拾ったと兵が述べたことを書き添えた。
自分が見た外見と、聞いた拾得の話。その間に空いた行へは、まだ何も書かない。落ちていたときの札の姿まで、今見たつもりになりそうだった。
「何か、書けたか」
バルドロフに手帳を向ける。
「外見と、拾ったというお話を。札が何なのかは、まだ分かりません」
バルドロフが読む間、ラーメルトは指を紙の端へ移した。兵は札を示したままでいる。説明を求められているような気がしても、線に呼び名をつけることはできなかった。
フルメアが顔を上げる。
「グレインには、何を聞くの?」
父の名を聞くと、見せれば教えてもらえるかもしれない、という期待が浮かんだ。ラーメルトはそれをいったん脇へ置き、手元へ目を戻した。
「この線を考えるには、ほかに何を確かめる必要があるのか。それを聞きたいです。外見と拾った場所の話だけで、どこまで言えるのかも」
手帳の下に、グレインへ尋ねたいこと、と書いた。線の意味を考えるために必要な確認。拾得についての話を、どこまで確かめられるか。
エノアに読み直してもらうと、問いが二つの記録の後に続いた。答えを書く場所には、まだ進めない。それでも、何を見て、何を知りたいのかは、これで父へ示せる形になった。
ラーメルトは札へもう一度目を向けた。焼けたところと、そこに残る線。手帳に残した問いの末尾へ筆先を添え、そこで止めた。




