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話せる距離

兵と信徒の声が重なる。ラーメルトはその間へ踏み込まず、双方へ顔を向けた。

 フルメアが女性の方を見ていた。ラーメルトもその姿を確かめる。本人を見つけたからといって、四人で近寄れば、向き合っている人々との距離まで狭めてしまう。

 ラーメルトは今いる位置から声をかけた。


「このまま距離を詰める前に、双方から話を聞かせてもらえませんか」


 兵と信徒の双方を見渡し、返事を待つ。フルメア、エノア、レオンハイトも、ラーメルトのそばで足を止めていた。

 一番手前にいた兵が、こちらを見る。


「近い。これ以上、向こうに寄られたくない」


 ラーメルトは兵の顔から、対峙している信徒との間合いへ目を向けた。何があってここまで近づいたのかは、今の言葉にはなかった。

 兵が口を閉じるのを待ち、今度は信徒の側へ向き直る。


「そちらのお話も、聞かせてもらえますか」


 近くにいた信徒の一人が応じた。


「こちらも警戒している。今の距離でも近すぎる。これ以上、相手に近づいてほしくない」


 兵と信徒、双方の口から同じ懸念を聞けた。睨み合う二人の間を見れば、ラーメルトにもその近さが分かった。

 エノアは声を上げた二人を順に確かめ、レオンハイトも双方の動きに目を配っている。フルメアは信徒の言葉を聞き終えると、奥にいる女性の姿へ視線を戻した。

 ラーメルトはさらに話を聞こうとして一歩前へ出かけ、足を止めた。顔を見て話すために、今より近づく必要はなかった。改めて二人のもとへ注意を向ける。

 声をかける前には、自分の言葉を挟む隙間さえ分からなかった。今は一人が話すのを待ち、その後でもう一人から聞ける。二人とも、話している間は相手へ距離を詰めていなかった。

 対立の経緯は聞けていないし、周囲の全員が同じ考えかも分からない。だが、こちらの呼びかけに応じた二人とは、近づかずに言葉を交わせている。

 ラーメルトは息を整えた。ここで結論を告げたいのではなかった。せっかく聞けた一人ずつの声を、次の強い声に埋もれさせずに聞きたかった。

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