近い声
女性が面会の場を離れたという話に続いて、四人はもう一人から目撃の話を聞いた。話し手は先ほどの目撃者とは別の現地の者だった。
「空側遺跡の周辺へ向かう方で、紅い瞳の人を見かけました。フードをかぶっていました」
ラーメルトはフルメアと顔を見合わせた。二人が会った女性と特徴は重なるが、その人だと決めるには、まだ足りない。
エノアが話者と内容を記す。ラーメルトは、遺跡に向かったという言葉へ置き換えずに受け取った。見かけた場所についての話であって、その人の目的地を聞いたわけではない。
フルメアが言った。
「特徴は重なるわ。本人かどうか、確かめたい」
「なら、四人で行こうかー」
レオンハイトが応じた。ラーメルトも頷く。今度の話には、確かめに行ける場所の手掛かりがあった。
四人は空側遺跡の周辺へ向かった。
◇
強い声が耳に届き、ラーメルトは足を止めた。
兵たちと信徒たちが向き合っている。いずれも少人数だったが、相手を見る顔が近い。声が重なり、どちらが何を言っているのか、すぐには聞き取れなかった。
互いに目を離さず、声が強くなる。その間へ不用意に踏み込める近さではない。レオンハイトも止まり、双方の距離を見ていた。
ラーメルトは声の主から周囲へ目を移した。探しに来た人まで、見落としたくなかった。
そこに女性がいた。
聞いた特徴を当てはめるより先に、面会のときの顔が浮かんだ。フルメアと並んで話した相手を、目の前に見ている。
「……あの人です」
「ええ。私も分かるわ」
フルメアも女性へ目を向けた。面会した二人が同じ相手だと確かめた声を聞き、エノアとレオンハイトもその姿を見た。二人から話に聞いていた女性が、今は四人の目の前にいる。
ラーメルトは息をつきかけて、向き合う人々へ注意を戻した。女性を見つけたことと、この場でどう近づくかは別だった。声はなお強く、相手との距離も近い。
なぜ女性がここにいるのか。兵や信徒とどんな関係があるのか。その姿だけでは分からなかった。近くにいるだけで、どちらかの仲間だと決めることはできない。
エノアは話者と内容を記した紙へ、現地で本人を見たことを書き足した。フルメアの視線も、女性から双方へ移る。
「このまま近づいて、話を聞けるでしょうか」
エノアに尋ねられ、ラーメルトは向き合う人々を見た。強い声へこちらの声を重ねれば、近づいてきた者として受け取られるかもしれない。
誰に、どんな言葉から声をかけるか。本人を確認するために来た四人は、今度は目の前の緊張へどう接するかを考えなければならなかった。




