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見た者の言葉

 ラーメルトとフルメアは、エノアとレオンハイトに、女性と会ったときのことを話していた。


「向こうから、私たち二人のところへ来たのよ。好きなものを尋ねたのだけれど、答えは聞けなかったわ」


 フルメアが言葉を切ると、ラーメルトは隣で頷いた。エノアは二人から聞いた面会の話として書き留めている。女性が自分へ問い返すように「好きなもの」と口にしたことも、二人から伝えた。

 そこへ、一人が声をかけてきた。


「私は、その女性があの場を離れるところを見ました」


 ラーメルトは相手へ向き直った。フルメアも話を止め、目を向ける。


 ラーメルトはその人に礼を言った。女性が何を考え、どこへ行こうとしていたのかは、話されていない。

 レオンハイトがラーメルトへ顔を向けた。


「会ったときには、その後どこへ行くか、話していたのー?」


「いいえ。行先は聞いていません」


 フルメアにも、続けられる言葉はなかった。好きなものを尋ねたときの女性の声は覚えている。けれど、答えが出なかったことを、場を離れた理由にすることはできない。

 エノアが目撃の話を、面会の記録とは行を分けて残した。二人から聞いた会話と、今の人が見たという離去。どちらからも現在の居場所は分からなかった。


「また話せるなら、聞いてみたいことはあります。でも、今どこにいるのかは分かりません」


 ラーメルトが言うと、フルメアも顔を上げた。


「別の人が見たという話があっても、まず、誰をどこで見たのかを確かめないといけないわね」


 エノアは今の問いを短く添えた。女性と話した二人の記憶だけでは、その後の行方を確かめられなかった。

 ラーメルトは女性が立っていた姿を思い返した。再び会えたことは確かだった。それでも、その記憶から今の居場所へ線を引くことはできない。

 面会の場を離れたという話は得た。次に確かめるべきことは見えてきたが、行先を挙げられる者はまだいなかった。


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