記録と問いのあいだ
フルメアは、自分の家名が公的な記録に残っていたことを思い返していた。紙の上に文字を見つけたときには、そこから昔の判断の理由へ届く気がした。けれど、一部を読み終えても、根拠を知りたいという問いは残った。
四人が読んだ範囲は、エノアのメモにある。フルメアはそこへ目を落とし、口を開いた。
「その判断をする前に、何を確かめたのか。そこを、やっぱり知りたいわ」
ラーメルトはこちらを見ていた。記載の続きを見たい。出所も確かめたい。紙だけでは答えが得られなければ、誰から何を聞く必要があるのかも考えたい。そのどれも、まだ具体的な史料や相手が決まったわけではない。
フルメアは自分の手を見た。照明用の魔結晶なら、使って明るさを確かめてもらえる。北では、その光を目印へ当てた。自分が何を作り、どう使ったかは、自分の言葉で話せる。
それが祖先の誰かの行いを証明することにはならない。そのことは分かっていた。だが、分からない過去があるたびに、現在の自分の仕事まで口にできなくなる必要があるのだろうか。
「昔のことを全部知るまでは、今この名で働きたいと言うことも、待たなければならないのかしら」
ラーメルトが顔を上げた。
「今のあなたについて尋ねたいことを、過去の問いに埋めてしまわなくてもいいと思います」
名を戻せるという答えをもらったのではない。けれど、自分が混ぜていた二つの願いに気づいた。家の過去を知りたい。今の自分も、家の名を脇へ置かずに働きたい。一方が全部分かるまでは、もう一方を口にしてはいけないと、自分で結び付けていた。
エノアがメモの余白へ、フルメアの今の問いを添えた。記録の記載や出所を確かめる問いは、そのまま残っている。そこへ現在の扱いについて尋ねたいことが加わった。
「知らないことを、知っているとは言わないわ。でも、自分の仕事と名前のことは、私から話したい」
言うと、レオンハイトが紙から顔を上げた。誰も祖先の無罪を代わりに答えなかった。フルメアも、その答えを仲間へ求めてはいなかった。
過去を調べることと、現在の自分がどんな扱いを受けるのかを尋ねることを、別の問いとして話したい。フルメアは、どちらかを消さずに、二つを自分の言葉で伝えるつもりだった。




